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決勝: 仙波 恒太郎(東京) vs. 後藤 祐征(愛知)

決勝: 仙波 恒太郎(東京) vs. 後藤 祐征(愛知)

By Daisuke Kawasaki

 世界選手権はふたりのGuillaumeによる青黒ミラーマッチで行われ、劇的なPlayer of the Yearの大外からの同着終了という劇的な形で幕を閉じた。

 準決勝のMatignonとPVによるトップデック合戦をはじめ、観客は熱狂し、遠く離れたアリーナまで聞こえるほどの大歓声が何度も、何度もあがった。

 そんな完成の中、会場の反対サイドで、黙々と自分たちの勝負を続けるプレイヤーたちがいた。The Finals参加者だ。

 朝の9時に集合してから21時をすぎてはじまるまでの12時間以上。一日6回戦の世界選手権とはわけがちがう、世界のトッププロ達にも負けない集中力を発揮して、ここまで勝ち抜いてきたのはふたりのプレイヤー。

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 冬と言えば愛知。2008年のThe Finals・The Limits同時受賞をはじめ、近年、愛知のプレイヤー達は冬のイベントに強い。その中、象徴とも言えるのが、2008年The Limitsトップ8であり、2009年The Finalsトップ8の後藤 祐征(愛知)だろうと、筆者は思う。

 これまでの2回、準々決勝での敗北、いわゆる一没を繰り返してきた後藤は、それを自分のジンクスだと感じていたが、今回準々決勝を突破すると、その勢いで準決勝の愛知対決を制し、決勝まで駒を進めてきた。ここまで来たら優勝しかないだろう。

後藤 「世間の人的には、もっと有名な仙波さんが勝った方がいいんじゃないですか」

 そう語った後藤だが、筆者はそれは違うと思う。2年間、冬のトップ8で合ってきた後藤が勝つ姿を見たいと思う人も、他にいるだろう。

Game 1
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 後手の仙波はマリガンし、6枚の手札を見て小考の末に、「やります」と一言。

 仙波の1ターン目のアクションは《闘争の学び手/Student of Warfare》。これを見て後藤は《稲妻/Lightning Bolt》で除去、自身のターンには《カルニの心臓の探検/Khalni Heart Expedition》をプレイする。対する仙波は《石鍛冶の神秘家/Stoneforge Mystic》をプレイして《アージェンタムの鎧/Argentum Armor》をサーチする。

後藤 「今、初めて仙波さんのデッキを知りましたよ」

 《砕土/Harrow》でマナを加速しつつ、《カルニの心臓の探検/Khalni Heart Expedition》のクエストを達成する後藤。仙波は2マナ残しつつ、《羽ばたき飛行機械/Ornithopter》をプレイしてターンを返す。

 ここでゲームを動かさなければ厳しい後藤。だが、もちろんというか、後藤は《カルニの心臓の探検/Khalni Heart Expedition》経由で4ターン目の《原始のタイタン/Primeval Titan》を達成する。

 4ターン目《原始のタイタン/Primeval Titan》は早くて強くてかっこいいが、もともとならなんでいる土地が少ないため、持ってくる土地が難しい。考えた末に後藤は《溶鉄の尖峰、ヴァラクート/Valakut, the Molten Pinnacle》を2枚セットする。

 そして、後藤のターンのエンドに《石鍛冶の神秘家/Stoneforge Mystic》の能力で《アージェンタムの鎧/Argentum Armor》が戦場に出され、その《アージェンタムの鎧/Argentum Armor》は《コーの装具役/Kor Outfitter》の能力で装備され《名誉回復/Vindicate》能力付きのアタックを繰り広げる。かっこいい。

 仙波がさらにかっこいい絵の《メムナイト/Memnite》をプレイするのだが、後藤はここで《召喚の罠/Summoning Trap》をプレイする。ここで《召喚の罠/Summoning Trap》からクリーチャーがめくれたらかなりかっこいい展開なのだが、残念ながらそんなドラマはまだ序盤のこのGame 1には待っていないのだった。

仙波 1-0 後藤

 ただ、それで言えば、仙波の勝利を否定しているわけではない。

 今日の午前中に行われていたThe Limits準決勝で井上に負けた戸塚に対して、観戦していた仙波がこう語った。

仙波 「いいなぁ、戸塚さん、カバレージデビューだ」

戸塚 「いや、こっちはほとんど見てなかったから最後の方だけだと思うよ」

仙波 「でも、それでもうらやましい」

 そして、仙波は準決勝のカバレージを書いていた筆者にこう言った。

仙波 「僕もフィーチャーによんで、カバレージ書いてくださいよ」

 日頃の仙波を見ていても、仙波の『カバレージに書かれたい欲』は並外れていて、仙波ぐらいにこの欲を持っているのは中村 肇か清水 直樹くらいしか思い当たらない。

 一ライターでしか無い筆者にどのカバレージを書くのかという裁量などほとんどないようなものなので、2008年の日本選手権で仙波がトップ8に残っていたことを引き合いに、「また、日本選手権でトップ8にはいって決勝まで行けば、いやでも書きますよ」と答えた。

 日本選手権ではなかったがそれがこんなに早く実現するとは失礼ながら思っていなかった。そして、こうなると仙波にも勝って欲しくなってしまうのが人情ではある。

 人が負けるところを見たい人などいないだろう。

 この4日間で、多くのプレイヤーが勝つところも負けるところも見てきたけれども、やはり勝つところを見るのが一番いい。だけど、ふたりで行われる勝負であり、決勝戦である以上は、必ずどちらかが勝ち、必ずどちらかが負けなければならない。

 両方が勝つような勝負を見ても、勝った人間をみて喜べない。

Game 2
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 今後は先手の後藤がマリガンするが、仙波もあわせてマリガンする。

 仲良くマリガンした後に、ちょっとため息をついてキープした後藤、1ターン目に《ラノワールのエルフ/Llanowar Elves》をプレイする。対する仙波は、《メムナイト/Memnite》《闘争の学び手/Student of Warfare》と展開し、そしてレベルアップしてアタック。追加の《メムナイト/Memnite》をプレイする。

後藤 「ラノエルスタートでも《耕作/Cultivate》打てないと意味ないっす」

 2ターン目に《溶鉄の尖峰、ヴァラクート/Valakut, the Molten Pinnacle》をタップインでセットしていた後藤は、愚痴をこぼす。そして、続くターンには4マナでもアクションできない。

 仙波は2体の《メムナイト/Memnite》と《闘争の学び手/Student of Warfare》でアタックする。そして、《コーの空漁師/Kor Skyfisher》をプレイすると、《メムナイト/Memnite》を戻して、プレイし直し。クエストの無い割には、手札を行ったりきたりするメムナイトだ。

 ターンの終わりに《砕土/Harrow》を打った後藤は、仙波のコントロールするクリーチャーのもつパワーを慎重に数えると、《自然の要求/Nature's Claim》を《メムナイト/Memnite》にプレイ。

 そして、《原始のタイタン/Primeval Titan》。

 今度もってきたのは、《溶鉄の尖峰、ヴァラクート/Valakut, the Molten Pinnacle》1枚と《山/Mountain》。これで《山/Mountain》は5枚ちょうど。一方の仙波は《メムナイト/Memnite》《闘争の学び手/Student of Warfare》《コーの空漁師/Kor Skyfisher》の3体でアタックする。

後藤 「展開がわかっているのにその展開にのらざるをえない......」

 後藤の《原始のタイタン/Primeval Titan》には《未達への旅/Journey to Nowhere》。そして、仙波は《石鍛冶の神秘家/Stoneforge Mystic》をプレイして、《肉体と精神の剣/Sword of Body and Mind》をサーチ。後藤は、ドローをすると、一言。

後藤 「ありません......」

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仙波 2-0 後藤

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 仙波の勝利の瞬間、この時間まで決勝の行方を見守っていた仙波の友人達は仙波にかけより、喜んだ。

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 人が勝った瞬間、ともに喜びを分かち合う瞬間をみるのは楽しい。世界選手権で決勝を戦ったふたりのGuillaumeが喜び分かち合うのをみるのも、仙波が友人達に囲まれてもみくちゃにされているのをみるのも、等しく楽しい。

 同じように、負けた後藤の元に、愛知の仲間達がかけより、「何故、《メムナイト/Memnite》に《自然の要求/Nature's Claim》を撃ったのか?」とか、「相手の手札に除去があるのがわかったから......」などと、後藤の戦いについて検討し、悔しがる。

 そして、後藤の口からこんな言葉がこぼれた。

後藤 「来年もがんばろう」

 勝ちたい人が、負けて、もっと勝ちたいと思うから、勝ったときの喜ぶ姿に価値がある。そのための負ける姿なら、みたくないなんて思わない。

 そして、そう思えるような勝負を、来年もまた見て、届けていきたい。

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