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決勝戦:大礒 正嗣(広島) vs. 石井 泰介(神奈川)

決勝戦:大礒 正嗣(広島) vs. 石井 泰介(神奈川)

By Daisuke Kawasaki

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 9年ほど前の、2000年頃の自分に、もし、伝えることが出来るのならば、こう伝えたい。

 お前が最近知り合った「SUKE」さんって人がグランプリの決勝戦を戦って、それをお前が公式のライターとして記事を書くことになるんだぞ、と。

 そしてそれを9年前の僕は信じないだろう。

 自分がこうして記事を書くようになることも、そして、その「SUKE」さんがグランプリの決勝で、「世界のISO」とまで呼ばれる男、大礒 正嗣(広島)とグランプリの決勝を戦うことも。

 9年前の僕にとっても、石井 泰介(神奈川)にとっても、グランプリなんて、雲の上の存在で、それが僕らの目の前の現実になることなんて考えることもできなかった。

 神奈川県の、橋本駅から歩いて1分の公民館で、「車輪杯」だかなんだか開催して、そこで公式のまねごとをする。それが毎日で、それが当時のマジックだったのだから。

Game 1

 先手の石井が《ステップのオオヤマネコ/Steppe Lynx》というロケットスタートだが、大礒は《カザンドゥの隠れ家/Kazandu Refuge》でライフを獲得。さらに石井の2ターン目のアクションが無かった事で、かなり序盤に楽ができる形となった大礒。

 大礒は《ニッサに選ばれし者/Nissa's Chosen》をキャストし、上陸した《ステップのオオヤマネコ/Steppe Lynx》をブロック。石井は《板金鎧の土百足/Plated Geopede》を引き、これをキャストするのが、大礒の場には《変わり樹のバジリスク/Turntimber Basilisk》が登場する。

 しかし、ここで石井はビッグアクション。土地をセットし、2体の上陸を達成すると、《コーの鉤の達人/Kor Hookmaster》で《ニッサに選ばれし者/Nissa's Chosen》をタップ、さらに、《噴出の稲妻/Burst Lightning》で《変わり樹のバジリスク/Turntimber Basilisk》を退けて、5点のダメージを与える。

 大礒は、4マナを残してターンエンド。そして、攻撃してきた《板金鎧の土百足/Plated Geopede》に《業火の罠/Inferno Trap》を打ち込む。残り2体のダメージは通って大礒のライフは10。大礒は、返しに《大木口の幼生/Timbermaw Larva》をキャストする。

 アンタップした《ニッサに選ばれし者/Nissa's Chosen》は《未達への旅/Journey to Nowhere》で除去し、上陸を達成して2体でアタック。大礒はいったんは両方スルーしようとするのだが、考え直して、《コーの鉤の達人/Kor Hookmaster》と《大木口の幼生/Timbermaw Larva》を相打ちにする。

 ここで土地を引けず、《ステップのオオヤマネコ/Steppe Lynx》がかわいいだけの置物に。大礒は、ここで稼いだ1ターンを生かすべく、キッカーで《カビのシャンブラー/Mold Shambler》をキャストし、《未達への旅/Journey to Nowhere》を破壊。《ニッサに選ばれし者/Nissa's Chosen》を取り戻す。

 盤面を逆転されてしまった石井。《柱平原の雄牛/Pillarfield Ox》をキャストするのが、《松明投げ/Torch Slinger》によって《ステップのオオヤマネコ/Steppe Lynx》を失い、その上で、大礒の場には、《リバー・ボア/River Boa》まで追加されてしまう。

 《柱平原の雄牛/Pillarfield Ox》のパワーで対処できないアタッカーが増え続けることで、石井は完全に守勢にまわる。そして、赤白速攻ほど、守勢にまわると心細いデックは無い。大礒は、丁寧に、逆転の可能性をつぶしつつ、クロックを刻む。

 お互いに大量の土地が並ぶ。この土地を活かせた方が勝利を手に入れることが出来るといっても過言では無いのだが、すでに石井の場には、土地を活かせる上陸クリーチャーの姿は無い。

 一方の大礒は、伸びきったマナを活かして、キッカーの《巨身化/Gigantiform》。

 そして、ライブラリーからあらわれる、2枚目の《巨身化/Gigantiform》。

 石井のライフは9。

大礒 1-0 石井

 冒頭で話題にだした「車輪杯」は、「ミシュラの工房」というサイトを中心とした当時のネットコミュニティで主催持ち回り式で大会を開催していた時に、石井が開催した大会の、大会名だ。

 「SUKE」のハンドルネームで知られていた石井は、今では、マジックプレイヤーにちょっと、はさすがに言い過ぎで、かなり詳しいプレイヤーの間では「マンモスさん」の愛称で知られるプレイヤーである。

 石井が「マンモスさん」と呼ばれるようになったきっかけは、3人チーム戦で本波・中村のふたりのプレイヤーと「マンモス帝国」というチーム名で参加したことにさかのぼる。

 石井のハンドルネームが「SUKE」であったように、本波のハンドルネームは「帝国」であり、少なくともチーム名の「帝国」の部分が本波のハンドルネームから来ていると言うことは、なぜだか知らないが伝わっていたようで、会場の一部のプレイヤーの中で、じゃあ「マンモス」って誰だ、という話になった。

 種を明かせば、中村が熱狂的な《ウォー・マンモス/War Mammoth》のコレクターで、いわば中村が「マンモスさん」だったわけなのだが、どういうわけだか、本当になぜだか筆者にはわからないのだが、どうやら石井が「マンモスさん」なんだろう、という話になったのだった。

 当然、石井のコミュニティのプレイヤーたちは、誰が帝国で、なんでマンモスか、なんて事は百も承知だったわけなのだが、中島 主税(神奈川)によって逆輸入されたその勘違いは、瞬く間にその狭いコミュニティの中で、定番の「ネタ」となるのだった。

Game 2
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 先手の石井がマリガン。

 2ターン目に石井が《板金鎧の土百足/Plated Geopede》、そして大礒が《オラン=リーフの生き残り/Oran-Rief Survivalist》という立ち上がり。

 ここで、石井は、上陸するものの、後続は無く、一方の大礒は、《リバー・ボア/River Boa》を追加するものの、土地が止まってしまう。

 4ターン目に石井は、4枚目の土地を置き、そして《崖を縫う者/Cliff Threader》をキャスト。一方の大礒も3枚目の土地を引くのだが、これがちょっと悩ましい《山/Mountain》。これをセットして《緑織りのドルイド/Greenweaver Druid》をキャストする。

 この《緑織りのドルイド/Greenweaver Druid》が《松明投げ/Torch Slinger》で除去されてしまうと、天秤は大きく石井に傾く。

 期待していた追加のマナが得られなかった上に、土地を引くことも出来なかった大礒。とりあえず、《冒険者の装具/Adventuring Gear》をキャストすると、赤マナと緑マナを残してターンを終える。

 だが、石井は、《リバー・ボア/River Boa》によって守りを固めようという大礒の戦略を根底から覆す《コーの鉤の達人/Kor Hookmaster》のキャストで、《リバー・ボア/River Boa》をタップ。

 続くターンに土地を引けば大礒のライフを削りきれる、というところで、きっちり土地をトップし、石井が星を取り返す。

大礒 1-1 石井

 石井の事を「マンモスさん」と呼べば、「いや、マンモスは俺じゃないし」と石井が言い返す。

 ここまでがテンプレートとして、定番の挨拶となった。

 本当になぜだかわからないが、その様子を見た多くの人々は、そのやりとりが誠にしっくりいったようで、語源がなにか、マンモスとは誰か、といった事は関係なく、石井を「マンモスさん」と呼ぶことが完全に定着した。

 そして、石井は9年の間トーナメントマジックに参加し続けてきたプレイヤーだったわけで、なおかつレベルジャッジの資格もとって、裏方としても積極的にマジックに関わっていたため、交友範囲も大きく広がり、知り合いも増えた。

 そうなっては、もはや、意味は形骸化し逆転する。なんせ、もともとの「マンモスさん」を知っている人よりも、「マンモスさんと呼ばれる石井」を知っている人の方が多くなってしまったのだから。「マンモスさんと呼ばれていない石井」を知っている人数は「サンダースさんと呼ばれている浅原 晃(神奈川)」を知っている人数程度といえばそれがどれくらい少ないのかわかるだろう。

 それでも、石井は「俺、マンモスじゃねーし」と言い続けた。でも、もう、ほとんどの人にとって石井は「マンモスさん」であって、それを石井が否定しているかどうかなんてことは本当に些末な問題でしかなかった。

Game 3
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 双方ともにマリガンをした上で、先手の大礒は、1ターン目《冒険者の装具/Adventuring Gear》から、2ターン目《リバー・ボア/River Boa》。

 対して、石井も2ターン目に《板金鎧の土百足/Plated Geopede》。

 ここで、《冒険者の装具/Adventuring Gear》を《リバー・ボア/River Boa》に装備させてアタックするつもりだった大礒だが、トップから《緑織りのドルイド/Greenweaver Druid》を引いてしまい、予定が狂う。

 ちょっとなやんだ末に、《緑織りのドルイド/Greenweaver Druid》をキャストする。対して、石井は、マナがない隙にと《噴出の稲妻/Burst Lightning》で《リバー・ボア/River Boa》を除去し、《カザンドゥの刃の達人/Kazandu Blademaster》をキャストする。

 大礒は、《ジョラーガの吟遊詩人/Joraga Bard》をキャストして、ターン終了。

 石井は、土地を引かない。《カザンドゥの刃の達人/Kazandu Blademaster》でアタックしてみるものの、大礒は躊躇なく《ジョラーガの吟遊詩人/Joraga Bard》でブロック。《崖を縫う者/Cliff Threader》を追加する。

 だが、大礒も厳しい。《オラン=リーフの出家蜘蛛/Oran-Rief Recluse》をキッカー無しでキャストし、2マナを残してのターンエンド。この時点でマナが緑マナしかでないにもかかわらず、呪文をキャストし続けられたのは幸運といえば幸運か。

 石井、《ぐらつく峰/Teetering Peaks》をドロー。長考を挟んで、これをセットし、《崖を縫う者/Cliff Threader》を+2/+0してアタック。大礒は迷わず《オラン=リーフの出家蜘蛛/Oran-Rief Recluse》でブロックする。

石井 「あ、《山/Mountain》ないんだ!勘違いしていた!」

 《崖を縫う者/Cliff Threader》と《オラン=リーフの出家蜘蛛/Oran-Rief Recluse》という得か損かわからない相打ちが行われ、石井は《コーの装具役/Kor Outfitter》をキャストする。

 そして、タイミングよく、ここで《山/Mountain》を引いた大礒は、《マグマの裂け目/Magma Rift》をキャストし、《カザンドゥの刃の達人/Kazandu Blademaster》を除去する。

 返しで石井は、《雨雲の翼/Nimbus Wings》を《コーの装具役/Kor Outfitter》にエンチャントし、さらに《ジョラーガの吟遊詩人/Joraga Bard》を《未達への旅/Journey to Nowhere》でどかすことで、一気に攻撃のための導線を作りあげる。3/4の《コーの装具役/Kor Outfitter》と《板金鎧の土百足/Plated Geopede》のアタックで、大礒のライフは13。

 ここで《松明投げ/Torch Slinger》をドローした大礒だが、赤マナが足りない。《緑織りのドルイド/Greenweaver Druid》でアタックし、1点でも石井のライフを削った後に、キッカー無しで《松明投げ/Torch Slinger》をキャストする。

 返しで、石井が上陸。これによって、《板金鎧の土百足/Plated Geopede》は3/3になり、《松明投げ/Torch Slinger》を一方的に倒せるように。そして、5マナと手札1枚を抱える石井相手に、大礒は、いったんは、ダメージを通すことを躊躇するが、決意を決めて、ダメージを受ける。大礒のライフは7。

 大礒は、《松明投げ/Torch Slinger》に《冒険者の装具/Adventuring Gear》を装備させ、4マナを残してターン終了。

 石井は、《反逆の印/Mark of Mutiny》を《松明投げ/Torch Slinger》を対象にキャスト。そして、土地をセットして、《板金鎧の土百足/Plated Geopede》の上陸を達成して3体でのアタック。

 ここで、大礒は、《松明投げ/Torch Slinger》が装備している《冒険者の装具/Adventuring Gear》の上陸は、装備品の能力なので、トリガーしないことを確認した後に、+1/+1カウンターののっかった《松明投げ/Torch Slinger》と《板金鎧の土百足/Plated Geopede》の6点を通し、自身のライフを1にしつつ、《コーの装具役/Kor Outfitter》へと《業火の罠/Inferno Trap》をキャストする。

 大礒は、《松明投げ/Torch Slinger》でアタック。

石井 「なんか、ひっけ!」

 石井は、ドローしたカードをちらりとみて、そして、叩きつける。

 そのカードは《反逆の印/Mark of Mutiny》。

大礒 1-2 石井

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 「マンモスじゃねーし」と言い続けてきた石井だったが、今大会で、石井がきていたTシャツに書かれているプリントは、紛れもなくマンモスで、控えめに見ても象だった。

 わざわざそんなTシャツを石井が着てきたということは、もう、石井も事実として自分が「マンモスさん」だと言うことを認めてしまったということなのだろう。

 さすがに筆者が「今度《ウォー・マンモス/War Mammoth》持ってきましょうか?」と言った時は「それはさすがに本物のマンモスさんに悪いし」と否定したが、「マンモスさん」という名前が自分のものであることはもはや否定のしようがない。

 石井が「マンモスさん」と呼ばれはじめたきっかけは、本当に些細な事だった。

 でも、それが多くの人に受け入れられ、そして長い期間にわたって呼ばれ続けることで、結果としてそれは事実となり、石井自身が受け入れざるを得ないほどのものとなった。

 石井と彌永の準決勝で、筆者は「運」という言葉を使用した。もちろん、石井の躍進やこの優勝を「運」という言葉だけで済ませるつもりはないのだが、「運」の関与がまったくなかったと言ってしまえば、石井は《ウォー・マンモス/War Mammoth》を持ってくることを拒否したように、そのことを否定するだろう。

 だが「運」も、やはり些細なきっかけでしかない。

 ここで、本当に大事な事は、石井がグランプリをはじめとして、トーナメントに参加し続けて来たということだ。

 学生だった石井が社会人となり、時間の自由がきかなくなっても、出来る範囲でマジックと関わり、そしてトーナメントに参加し続けてきた。

 だからこそ、今回の初日全勝をはじめとした「運」というきっかけに出会うことができたし、それをつかみ取り「グランプリ優勝」という現実を手に入れた。

 それが現実になるなんて、9年前は思いもしなかった。

 でも、トーナメントに参加していれば「きっかけ」にどこかで出会うことはできるかもしれない。そして、なにかのきっかけで、その「きっかけ」を手に入れるのはあなたかもしれない。

 トーナメントに参加し続けたいほどマジックを愛している人にならば、チャンスは誰にでも訪れる。

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