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準々決勝:渡辺 雄也(神奈川) vs. 伊藤 大明(神奈川)

準々決勝:渡辺 雄也(神奈川) vs. 伊藤 大明(神奈川)

By Daisuke Kawasaki

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 日本最強のプレイヤーは誰か?という質問には、ひとそれぞれの回答があるだろうと思う。だが、今ならば、齋藤 友晴(東京)か、渡辺 雄也(神奈川)の名前を挙げる人が多いのではないだろうか?いや、中村 修平(大阪)か。そして、マニアは三田村 和弥(千葉)の名前を挙げるのか。

 何はともあれ、世界規模での認識として、この4人が日本のトップであることは間違いないだろう。レベル8プレイヤーなのだから当たり前といえば当たり前だ。

 そんな渡辺が世界中に名前を知られるようになったきっかけは、2007年のRookie of the Yearを獲得した時であり、渡辺がそのRookieを獲得したきっかけは、その年のグランプリ・京都で、ウルザトロンから《悪魔火/Demonfire》を打ち込んだ時だろう。吉川 祐輔の予言通り、渡辺は《悪魔火/Demonfire》から、歴史に名を刻んだのだ。

 その前の渡辺は、関東のローカルヒーローだった。神奈川の、それも東神奈川のローカルヒーローだった。

 すでに、渡辺と、PWCの関係については過去に語り尽くされるほどに語り尽くされている。渡辺は「ミスターPWC」だったのだから。

 そんな渡辺が、伊藤 大明(神奈川)と準々決勝を戦う、というニュースを聞いて、今大会に出場できなかった井川 良彦(東京)がtwitterでつぶやいた。

井川 「ベスト8はナベvsブラマス。PWCin仙台。」

Game 1

 先手の伊藤は、1ターン目に《極楽鳥/Birds of Paradise》、対して渡辺も1ターン目に《貴族の教主/Noble Hierarch》をプレイする。

 伊藤は2ターン目に《天界の列柱/Celestial Colonnade》をセット、これに渡辺も鏡打のように《天界の列柱/Celestial Colonnade》をセットする。

 静かな立ち上がりからのゲームとなったが、ここから一気にゲームが動き出す。

 伊藤は《遍歴の騎士、エルズペス/Elspeth, Knight-Errant》をプレイ。トークンを生み出してターンを終了すると、このトークンが、渡辺のキャストした《復讐蔦/Vengevine》をチャンプブロックすることとなる。

 戦場に登場した2体目のプレインズウォーカーも、伊藤に忠誠を誓う。ここでキャストされた《精神を刻む者、ジェイス/Jace, the Mind Sculptor》が渡辺の手札に《復讐蔦/Vengevine》を返す。そして《遍歴の騎士、エルズペス/Elspeth, Knight-Errant》はトークンを生み出した。

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 伊藤はさらに2体目の《極楽鳥/Birds of Paradise》をキャストしたため、これでマナ差も広がりはじめる。渡辺は、この状態で、2体のプレインズウォーカーに対処しなければならない。

 土地が3枚に《海門の神官/Sea Gate Oracle》《遍歴の騎士、エルズペス/Elspeth, Knight-Errant》《ギデオン・ジュラ/Gideon Jura》《復讐蔦/Vengevine》という手札から渡辺は《復讐蔦/Vengevine》をキャスト。この《復讐蔦/Vengevine》による再びのアタックは、やはりトークンにチャンプブロックされる。

 この時点での伊藤の手札は2枚。渡辺が勝っているのは手札の枚数だけ、といった状態なのだが、伊藤が《精神を刻む者、ジェイス/Jace, the Mind Sculptor》の《渦まく知識/Brainstorm》能力を使い始めたことで、この優位をじわじわと詰められはじめる。

 伊藤は、《貴族の教主/Noble Hierarch》をキャストし、《極楽鳥/Birds of Paradise》でアタック。1点渡辺のライフを削った上で、《不屈の随員/Dauntless Escort》を戦場に追加する。

 ここで、渡辺は長考をする。

 プランが固まった渡辺は、《ギデオン・ジュラ/Gideon Jura》をキャスト。+2能力によって、次の伊藤のターンに全てのクリーチャーがアタックしてくることを強要する。そして、《復讐蔦/Vengevine》をブロッカーとして残し、ターンエンド。

 伊藤は《精神を刻む者、ジェイス/Jace, the Mind Sculptor》の能力で《復讐蔦/Vengevine》を手札に戻すと、《天界の列柱/Celestial Colonnade》をクリーチャー化し、《ギデオン・ジュラ/Gideon Jura》へと全軍攻撃。これによって、《ギデオン・ジュラ/Gideon Jura》は破壊されてしまう。

 返すターンで、渡辺も《天界の列柱/Celestial Colonnade》をクリーチャー化し、《精神を刻む者、ジェイス/Jace, the Mind Sculptor》にむかってアタック。これを破壊する。

 だが、この時点ですでに《遍歴の騎士、エルズペス/Elspeth, Knight-Errant》の最終奥義を使える8まで忠誠カウンターを溜めていた伊藤。この最終奥義を使用すると、手札から《遍歴の騎士、エルズペス/Elspeth, Knight-Errant》のおかわりをキャストする。
 2体のトークンに《不屈の随員/Dauntless Escort》が加わってアタックし、渡辺のライフを13にする。

 そして伊藤が《精神を刻む者、ジェイス/Jace, the Mind Sculptor》までもおかわりすると、渡辺はカードを片付けた。

伊藤 1-0 渡辺

 2007年のグランプリ・京都では、赤青のイゼットロンを使っていた渡辺だったが、その後、赤青のデックを使っていた記憶はずいぶん無い。

 さて、冒頭の井川の発言にあるように、渡辺の対戦相手である伊藤 大明(神奈川)のあだ名は、「ブラマス」である。渡辺がルーキーを獲得した年の年末に行われたThe Limitsにおいて、トップ8に入賞していたプレイヤーである。

 その、「ブラマス」というあだ名。それが「ブラックマスター」の略である事はあらかたわかるのだが、なぜ「ブラックマスター」なのかは不勉強な筆者にはわからなかった。なので本人に聞いてみると、そこで渡辺がこういった。

渡辺 「でも、今、黒単組みにくいからねぇ。オレも、組めるなら赤青組みたいよ」

 「ブラマス」の名前が、黒単が好きだからなのかは本人から証言を取れなかったのでわからないし、なんとなく違うような空気があった。

 ただ、渡辺が、自身が京都で優勝していた時に使っていた赤青というカラーコンビネーションに特別な思い入れがあるということはよくわかった。

 そして、津村 健志がChannel Fireballに対抗して、Tron Demonfireを作ろうよ、と言い出したりするくらいには、多くの人にとっても印象に残っている。

 その後の渡辺の活躍を知れば知るほど、渡辺にとって、京都という地が転機だったと思えるからだ。

Game 2
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渡辺 「本当に、これ、先手ゲーなんだけど」

 互いにマリガンの末に、渡辺の《貴族の教主/Noble Hierarch》からゲームがスタートする。伊藤が1ターン目に《活発な野生林/Stirring Wildwood》をセットしたのに対して渡辺も2ターン目は《活発な野生林/Stirring Wildwood》をセットする。

 伊藤は、2ターン目に《極楽鳥/Birds of Paradise》をキャストすると、《セジーリのステップ/Sejiri Steppe》をタップイン。対する渡辺は《陽花弁の木立ち/Sunpetal Grove》をセットすると、《イーオスのレインジャー/Ranger of Eos》をキャストした。

 サーチしてきたのは《硬鎧の群れ/Scute Mob》と《貴族の教主/Noble Hierarch》。

 伊藤は《水蓮のコブラ/Lotus Cobra》をキャストし、セットランド。この上陸で生み出されたマナを使い、《聖遺の騎士/Knight of the Reliquary》をキャストする。

 とはいえ、この段階では《聖遺の騎士/Knight of the Reliquary》はまだ2/2。渡辺は《森/Forest》を置き、2体目の《貴族の教主/Noble Hierarch》をキャストすると、賛美で5/4となった《イーオスのレインジャー/Ranger of Eos》でアタックする。

 さらに《硬鎧の群れ/Scute Mob》を追加した渡辺。ここで、長考し、その末に、手札の《未達への旅/Journey to Nowhere》で《聖遺の騎士/Knight of the Reliquary》を追放する。

 伊藤は《静寂の守り手、リンヴァーラ/Linvala, Keeper of Silence》をキャスト。対して渡辺は5枚目の土地をセットし、再び5/4となった《イーオスのレインジャー/Ranger of Eos》でアタックする。さらに《精神を刻む者、ジェイス/Jace, the Mind Sculptor》をキャスト。この《渦まく知識/Brainstorm》能力を使うと、小考の末、一度攻撃しようと《水蓮のコブラ/Lotus Cobra》に伸ばした手を引っ込めてターンを終える。

 すでに渡辺も土地は5枚。アップキープに《硬鎧の群れ/Scute Mob》にカウンターを載せると、その勢いのまま賛美され7/7になった《硬鎧の群れ/Scute Mob》でアタックする。

 この攻撃を《水蓮のコブラ/Lotus Cobra》のチャンプブロックでしのぐ伊藤。渡辺は追加の《イーオスのレインジャー/Ranger of Eos》をキャストし、今度は《貴族の教主/Noble Hierarch》と《極楽鳥/Birds of Paradise》を持ってくる。伊藤は《活発な野生林/Stirring Wildwood》をセットしてターン秀終了。

 渡辺は全軍突撃して伊藤へとアタック。1体は《エスパーの魔除け/Esper Charm》で除去されるものの、伊藤のライフは5。だが、この5点が遠い。

 《精神を刻む者、ジェイス/Jace, the Mind Sculptor》が渡辺の攻め手を鈍らせる一方で、《静寂の守り手、リンヴァーラ/Linvala, Keeper of Silence》が渡辺の《貴族の教主/Noble Hierarch》がマナを生み出すのを徹底的に阻害する。

 そして、伊藤が《失われたアラーラの君主/Sovereigns of Lost Alara》をキャストすると、容易に15/15クラスのクリーチャーが降臨する。

 《貴族の教主/Noble Hierarch》以外から青マナを確保できない渡辺は、《剥奪/Deprive》も《精神を刻む者、ジェイス/Jace, the Mind Sculptor》も握り占めたまま、手を差し出した。

伊藤 2-0 渡辺

 同型対決ならば、一撃必殺のあるデックの方が有利。同じくトップ8に入賞している八十岡 翔太(東京)の持論である。

 今回、八十岡が11回目のグランプリトップ8入賞で、今度こそ、とタイトルを求めているように、渡辺も切に望んでいるタイトルがある。

 それは日本王者である。

 2008年の日本選手権では、大礒 正嗣(広島)に敗れ3位。昨年の日本選手権では決勝で中村 修平に敗れ、2位。2年連続で国別代表選手に選ばれているものの、あと一歩でとどかなかったこのタイトルに対する渡辺の思いは強い。

 今期、不調気味だった渡辺だったが、今大会ではついにエンジンが掛かりはじめ、来月開催される日本選手権での成績も期待のできるものとなった。

 そして、なにより、今年の日本選手権は、京都で開催される。

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