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決勝戦:Brian Kibler(アメリカ) vs. 三原 槙仁(千葉)

決勝戦:Brian Kibler(アメリカ) vs. 三原 槙仁(千葉)

By Daisuke Kawasaki

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 日本が世界の最先端だった時代があった。

 悲しいことに過去形になってしまうが、しかし、その時代はたしかにあった。

 2005年に横浜で開催された世界選手権。

 その年に、「帝王」森 勝洋(東京・当時)が日本人として初めて世界王者となり、諸藤・大礒・志村による代表チームが、初めて国別対抗戦を制し、そして、津村 健志(広島・当時)が日本人として初めてPlayer of The Yearとなった。

 この時、森の使用していたデック、「白緑ガジーの輝き」デックは、もともと日本の草の根から登場してきたデックだった。そのデックのアイデアを元に調整を重ねたデックが世界を制したのだ。

 間違いなく、この時が日本の草の根の持つデックテックが最高潮だった時だと思う。少なくとも、今、この時ほどのデック開発力を日本は持っていない。

 初日全勝した渡辺 雄也(神奈川)がこう語っていた。

渡辺 「やっぱ、日本のデッキテックは遅れてますよ。今は海外製のデッキを使った方が勝てますよ」

 初日全勝者4人のうち、3人が同じアーキタイプのデックを使っていた。

 そのデックとは、グランプリ・ワシントンでBrian Kibler(アメリカ)が使用していた、Next Level Bant、日本ではキブラーバントの名前で知られるデックだ。

 キブラーは、今、キブラーバントを使って、決勝の席に座っている。

Game 1
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 後手のKiblerがマリガンながら、1ターン目から《極楽鳥/Birds of Paradise》をキャストという立ち上がりを見せる。

 一方の三原も《天界の列柱/Celestial Colonnade》を1ターン目にセットし、2ターン目には《前兆の壁/Wall of Omens》をキャストし、相手の攻撃に対する備えは万全だ。

 Kiblerも《前兆の壁/Wall of Omens》をキャスト。そして《海辺の城塞/Seaside Citadel》をセット。続くターンには《イーオスのレインジャー/Ranger of Eos》をキャストし、2枚の《貴族の教主/Noble Hierarch》を手札に加える。

 少なくとも次のターンには《前兆の壁/Wall of Omens》を乗り越えるサイズで《イーオスのレインジャー/Ranger of Eos》がアタックしてくる事は間違いないだけに、三原は長考をする。《乾燥台地/Arid Mesa》から《山/Mountain》をサーチし、色マナの憂いを無くした上で、ターンを返す。

 案の定、Kiblerは《貴族の教主/Noble Hierarch》をキャストしてから《イーオスのレインジャー/Ranger of Eos》でアタック。三原は壁を大事にし、4点のダメージを受ける。Kiblerは、2枚目の《前兆の壁/Wall of Omens》をだしてターン終了。

 返して、三原はX=3で《思考の泉/Mind Spring》。十分にリソースを稼いだ三原。後は、このリソースを盤面に転化するまでライフがもつか否かだ。

 ここでKiblerは《遍歴の騎士、エルズペス/Elspeth, Knight-Errant》をキャストする。これにより、壁を乗り越えられるようになった《イーオスのレインジャー/Ranger of Eos》は、三原に7点のダメージを与える。三原の残りライフは7。

 Kiblerの《海辺の城塞/Seaside Citadel》に《広がりゆく海/Spreading Seas》を付け、ターンを返した三原。Kiblerが《イーオスのレインジャー/Ranger of Eos》へと《遍歴の騎士、エルズペス/Elspeth, Knight-Errant》の能力を使用し、攻撃クリーチャーに指定した所で《流刑への道/Path to Exile》をキャストする。これで、1ターン確保。

 ある程度見えていたとはいえ、これで攻め手が厳しくなったKibler。しかし、ここで伝家の宝刀《失われた真実のスフィンクス/Sphinx of Lost Truths》を抜く。そして、《復讐蔦/Vengevine》がディスカードされる。

 これで、多少時間に余裕ができた一方で、フルタップでの《軍部政変/Martial Coup》が苦しくなってしまった三原は、すべてのマナを残してターンを返す。そして、《遍歴の騎士、エルズペス/Elspeth, Knight-Errant》によって強化されて来た《失われた真実のスフィンクス/Sphinx of Lost Truths》を《天界の列柱/Celestial Colonnade》でチャンプブロックする。

 Kiblerは、2枚目の《失われた真実のスフィンクス/Sphinx of Lost Truths》を、今度はキッカーを支払って戦場に追加する。

 回答策の必要な三原。《予言のプリズム/Prophetic Prism》で山札を掘り進めつつ、《復讐のアジャニ/Ajani Vengeant》をキャスト。《貴族の教主/Noble Hierarch》へと《稲妻のらせん/Lightning Helix》能力を使用し、ライフを回復させる。

 だが、Kiblerは返すターンでクリーチャーを2匹展開。これによって《復讐蔦/Vengevine》の能力がトリガーしてしまい、三原は対処のしようもない数のクリーチャーに一気に蹂躙されることとなった。

Kibler 1-0 三原

 2005年に日本が世界を制してから、1年間。完全に日本が世界のマジックシーンを牽引していた。

 2006年には、さらにプロツアー・プラハで大澤 拓哉(神奈川)が、そして、プロツアー・サンディエゴでは齋藤 友晴(東京)・鍛冶 友浩(埼玉・当時)・八十岡 翔太(神奈川・当時)で結成された「kajiharu80」がチャンピオンとなった。

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 その年の世界選手権、今、Kiblerと対戦している「魔王」三原 槙仁(千葉)が世界王者となった。そして、その年のPlayer of The Yearを八十岡が獲得した。惜しくも森 勝洋率いる日本代表チームは、決勝戦で敗れ、準優勝だったものの、日本の栄華がまだ続いていることを世界に示すには十分すぎる成績だった。

 それから3年間、齋藤・中村・渡辺と、日本人が連続してPoYを獲得し続けてきている。

 だが、プロツアーチャンピオンは、三原以来、昨年のプロツアー・ホノルルで三田村 和弥(千葉)が優勝するまで、登場することは無かった。

 その頃から、日本の栄華に陰りが見えていたのは間違いがない。

Game 2

 後手のKiblerはマリガン後に《貴族の教主/Noble Hierarch》からのスタート。対して三原は2ターン目に《前兆の壁/Wall of Omens》をキャストする。

 しかし、ここで土地が止まってしまった三原。

 2ターン目にも《極楽鳥/Birds of Paradise》をキャストし、3ターン目にKiblerの《復讐蔦/Vengevine》が襲いかかる。

 三原は、この《復讐蔦/Vengevine》のアタックを、《前兆の壁/Wall of Omens》でブロックし、ダメージを解決する前に自ら《流刑への道/Path to Exile》を打ち込み、マナを確保する。

 なおも土地を引かない三原。

 無理矢理捻出した3マナで《ジェイス・ベレレン/Jace Beleren》をキャスト、自分だけドローをする-1能力で山札を掘り進めるも、やはりそこには土地がない。Kiblerは《海門の神官/Sea Gate Oracle》と《貴族の教主/Noble Hierarch》をキャストする。

 戦場ではKiblerのコントロールするクリーチャーが増えている。だけども、問題は、次のドロー、土地が無い。引かなくちゃ、《ジェイス・ベレレン/Jace Beleren》を使って、というわけで、《ジェイス・ベレレン/Jace Beleren》の能力を2回目起動した所でやっと4枚目の土地にアクセスする。

 三原はこの土地をセットする前に、《忘却の輪/Oblivion Ring》をキャスト。この《忘却の輪/Oblivion Ring》は《剥奪/Deprive》されてしまう。三原は、土地をセットしてターンを返す。

 この時点で《ジェイス・ベレレン/Jace Beleren》の忠誠カウンターはひとつ。Kiblerは《海門の神官/Sea Gate Oracle》を《ジェイス・ベレレン/Jace Beleren》にアタックさせ破壊しつつ、《復讐蔦/Vengevine》は三原へとアタック。

 こうして《ジェイス・ベレレン/Jace Beleren》を破壊した上で、《精神を刻む者、ジェイス/Jace, the Mind Sculptor》をキャストし、手札を充実させる。

 《地盤の際/Tectonic Edge》をドローした、三原。コントロールする土地は4枚。手札には《審判の日/Day of Judgment》があるものの、Kiblerは《天界の列柱/Celestial Colonnade》をコントロールしているので、根本的な解決にならない。三原は《精神を刻む者、ジェイス/Jace, the Mind Sculptor》をキャストし、対消滅させ、次のターンに土地を引くことにかける。

 Kiblerは《天界の列柱/Celestial Colonnade》ごと攻撃し、三原のライフを削る。

 ここで、三原は《沸騰する小湖/Scalding Tarn》をトップデックする。しかし、Kiblerは2枚の《天界の列柱/Celestial Colonnade》をコントロールしている。幸い、土地の枚数は6枚ぴったりだったので、《天界の列柱/Celestial Colonnade》のうち1枚を破壊し、《審判の日/Day of Judgment》をキャスト。Kiblerがもう1マナを引かないことにかけた。

 だが、Kiblerは、手札にしっかりと《陽花弁の木立ち/Sunpetal Grove》を握っていた。

Kibler 2-0 三原

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 2006年のPoY八十岡を準決勝で倒し、そして、決勝で2006年世界王者三原をたおしたKiblerが、日本のグランプリでチャンピオンとなった。

 日本のグランプリで日本人以外のチャンピオンがうまれたのは、2002年のグランプリ・福岡でAlex Shvartsmanが獲得して以来だ。そう考えると、日本人は日本のタイトルを守ってきたように感じられる。

 だが、しかし、黒田 正城(大阪)・小室 修(東京)、そして前述の森 勝洋と守り続けていた国内プロツアーのタイトルは、とっくの昔、そう、奇しくも2007年に開催されたプロツアー・神戸で海外に流出していた。今年のPoYレースを見る限り、今年のPoYを日本人が獲得するのは難しそうだ。

 この状況をどう捉えればいいのだろうか?諸行無常、同じ事が続くわけがない、というとらえ方はできる。その一方で、歴史は繰り返される、同じ事は繰り返されるというとらえ方をすることもできる。

 まったく逆の事を言っているようで、指している内容はまったく同じだ。物事は、主体のとらえ方でどのようにでも、ポジティブにでもネガティブにでもとらえることができるのだ。つまりは、考え方が大事であり、そして、そう考えるひとりひとりの主体や行動にこそ意味があると言えるだろう。

 今年の年末に、あの2005年以来、日本に世界選手権が戻ってくる。

 今の日本衰退の流れは変わらない、世界選手権のタイトルも、きっと海外のスタープレイヤーが獲得するのでは無いだろうか、という悲観的な見方はできる。

 でも、その一方で、日本で行われる世界選手権という事に、意味を見いだして、そして新しい歴史の循環を呼び起こせるのかもしれない。少なくとも、そうとらえて、そう行動することが、新しい流れを生み出すことは間違いない。

 長々と、日本の衰退と、日本再興への思いを綴ったが、これは決して、この記事を読んでいる皆さんにとっても他人事ではない。

 今、まさに日本選手権予選シーズンまっただ中だ。

 そして、来月頭に京都で開催される日本選手権は、そのまま、年末の世界選手権への道につながっている。

 もしかしたら、世界選手権で、日本の再興の姿を見せるのはこれを読んでいるあなたかもしれない。

 だから、信じて、走りだそう。

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