マジック:ザ・ギャザリング 日本公式ウェブサイト

イベントカバレージ

決勝戦:渡辺 雄也(神奈川) vs. 中村 修平(大阪)

決勝戦:渡辺 雄也(神奈川) vs. 中村 修平(大阪)

By Daisuke Kawasaki

 物語を紡ぐ事とデュエルをする事は同じだ。

 人と人との意志のぶつかり合いが物語を紡ぐとすれば、デュエルをする事も物語を紡ぐ事と同意といっても大げさではないだろう。

中村 「まぁ、負けてもまだ持ってないシルバーカップが増えるだけですから」

 試合開始前に、中村 修平(大阪)はこう語った。

 準々決勝の開始前に「相性は3:97くらい」といっていた中村の話だから、そうそう鵜呑みにはしていられない。

 来年もレベル8は確保したいと語る中村にとって、この日本選手権で決勝卓にまで進んだことは、プロポイント的には十分な成績だろう。プロである以上は、優勝をしゃにむに狙うのではなく、安定した成績を、アベレージを優先するべきだと中村は考えている。

 「昨年は、PoYをとるって為だけに無理しすぎましたからね」と今年の中村はことあるたびにこう語る。だから、優勝を無理に目指す必要もない、ということなのだろう。

 準々決勝の開始前に「このマッチアップで勝てたら、もうシャミ確定でいいっすわ、もう」といっていた中村の話だから、そうそう鵜呑みにはしてられないが。

Game 1

 後手渡辺の2ターン目《苦花/Bitterblossom》を先手の中村が《砕けた野望/Broken Ambitions》でカウンターする展開。逆に、渡辺も自身3ターン目のターンエンドに中村がキャストした《エスパーの魔除け/Esper Charm》を《砕けた野望/Broken Ambitions》でカウンター仕返す。

 ここで渡辺のマナがタップアウトしたのをみて、中村は想起で《熟考漂い/Mulldrifter》をキャストし、手札を増やす。

 渡辺は、とりあえず何かしらのクロックが必要と、次の中村のターンのエンドに《呪文づまりのスプライト/Spellstutter Sprite》をキャストし、ダメージを与え始める。中村は今度は想起無しで《熟考漂い/Mulldrifter》。これで渡辺のクロックは止まったかに見えたが、渡辺はこの中村のタップアウトの機に《霧縛りの徒党/Mistbind Clique》をキャストし、むしろクロックを増強する。

 さらに渡辺は《誘惑蒔き/Sower of Temptation》で《熟考漂い/Mulldrifter》を奪い、ダメージを刻み始める。すでに5マナと中村の大量除去タイムはスタートしており、ここは《神聖なる埋葬/Hallowed Burial》で盤面を一掃。覇権で戻ってきた《呪文づまりのスプライト/Spellstutter Sprite》だけになる。

 しかし、これでまたもタップアウトした中村は《苦花/Bitterblossom》の着地を許してしまう。さらにバツの悪いことに、この《苦花/Bitterblossom》に対して打ち込まれた《謎めいた命令/Cryptic Command》が《ウーナの末裔/Scion of Oona》で立ち消えさせられてしまう。

 勢いに乗ったかに見えた渡辺だったが、しかし、《火山の流弾/Volcanic Fallout》ですべてのクリーチャーが除去されてしまう。

 そして、ここでキャストされる中村の《残酷な根本原理/Cruel Ultimatum》。これで渡辺は手札をすべて失う。《ガーゴイルの城/Gargoyle Castle》をセットできていたので、《若き群れのドラゴン/Broodmate Dragon》をなんとか対処できたが、2枚目の《残酷な根本原理/Cruel Ultimatum》を前に手札の1枚の《呪文づまりのスプライト/Spellstutter Sprite》はなんのたすけにもならなかった。

中村 1-0 渡辺

 決勝戦が行われる前に、3位決定戦が行われていたため、決勝戦を戦うふたりは1時間以上の待ち時間ができることとなった。

 通常であれば、この時間を利用し、最終調整をおこなっていたりする風景をみるものだが、中村の姿をさがしてみると、八十岡 翔太(東京)や田中 久也(東京)とともにボードゲームに興じていた。

中村 「だって、対戦相手のデッキとは...本人と散々スパーやってますからね」

ks

 その対戦相手とは渡辺 雄也(神奈川)。2007年度Rookie of the Yearであり、ある意味関東草の根最強の称号に等しいPWC四強(中村 肇・清水 直樹・高梨 功司・内藤 圭佑)からは殿堂入りしたグランプリ京都チャンピオンである。

 ここ数年の関東若手によるムーブメント、その中心人物としての活躍は記憶にある方も多いだろうと思う。

 実際に、渡辺の戦績は枚挙にいとまがない。

 つい先日行われたグランプリ神戸でも準優勝をしているし、昨年末の世界選手権でも、日本3位の成績の元に、日本代表として「スタンダード全勝」として活躍を見せてくれた。

 なにより、グランプリ京都での優勝は、東西を問わず若手で最強であることを印象づけるには十分すぎる成績だった。

 そう、若手の中では。

Game 2

nac 1ターン目《思考囲い/Thoughtseize》から2ターン目《苦花/Bitterblossom》という初手を力強くキープする渡辺。1ターン目の《思考囲い/Thoughtseize》で《大貂皮鹿/Great Sable Stag》《砕けた野望/Broken Ambitions》×2《熟考漂い/Mulldrifter》《羽毛覆い/Plumeveil》という手札から《大貂皮鹿/Great Sable Stag》を落とさせる。

 ここから《苦花/Bitterblossom》をキャストするのがが、まずは《羽毛覆い/Plumeveil》が渡辺の行く先を阻み、そして、今度は《大貂皮鹿/Great Sable Stag》が登場する。

 しかし、《大貂皮鹿/Great Sable Stag》がでてきたら仕方ない、というのはタダの駄洒落でしかない。

 渡辺は、根気よくトークンを揃えると《ウーナの末裔/Scion of Oona》とあわせてきっちりとダメージレースを制して見せた。

 そう《大貂皮鹿/Great Sable Stag》も軸をずらしたダメージレースの中ではただの3/3でしかないのだ。

中村 1-1 渡辺

 グランプリ京都では圧倒的な強さを見せつけた渡辺であったし、その他の戦績も胸をはって誇れるだけのものだ。

 プロツアーサンデー経験者であり、国内グランプリ2連覇である高橋 優太(東京)に肩を並べるものであるし、肩書きだけでいえば、グランプリ北九州チャンピオンの彌永 淳也(東京)よりもきっと上だろう。

 そう、すべての肩書きは誇るに値するものなのだ。それが渡辺のものでなければ。

 渡辺が同世代で抜きんでているプレイヤーであることなど、もはや誰でも知っている事実である。むしろ、渡辺にとって問題なのは、決勝ラウンドでタイトルを取れなかった時に負けた相手なのだ。神戸と同じ話をするなといわれても同じ話をせずにいられない。

 準優勝や3位という成績がいけないのではない。負けた相手が問題なのだ。

 先日のグランプリ神戸では、齋藤 友晴(東京)に負け、昨年の日本選手権では大礒 正嗣(広島)に負けた。渡辺のブレイクのきっかけとなったThe Finals'06の決勝で敗北した相手は森 勝洋(大阪)であった。

 明らかに渡辺は壁にぶつかっているように見える。新世代の旗手である渡辺だからこそぶつかる、世代の壁に。

 そして、ここにきて渡辺の前に、またも壁が立ちはだかる。

 盟友であり、渡辺がルーキーを獲得した時に「もっとも感謝している相手」と名指した中村という壁が。

Game 3

 渡辺にしては珍しく《苦花/Bitterblossom》の無い初手。

 先手の中村は3ターン目に《大貂皮鹿/Great Sable Stag》をキャストする。これに対して渡辺-はターンエンドに《呪文づまりのスプライト/Spellstutter Sprite》をキャストし、自身のターンに《ジェイス・ベレレン/Jace Beleren》をキャストする。そして+2能力でお互いにドロー。

 中村は《大貂皮鹿/Great Sable Stag》を《ジェイス・ベレレン/Jace Beleren》にアタックさせ、そして2枚目の《大貂皮鹿/Great Sable Stag》をキャストする。

中村 「ありがとう、渡辺くん。《ジェイス・ベレレン/Jace Beleren》のおかげでひいたよ」

 と三田村 和弥(千葉)の物まねで上機嫌をアピールする。

 渡辺は苦悶の表情だが《呪文づまりのスプライト/Spellstutter Sprite》でアタックし、そして自身のターンのうちに《霧縛りの徒党/Mistbind Clique》を覇権する。

 この《霧縛りの徒党/Mistbind Clique》に中村は《謎めいた命令/Cryptic Command》をうち、渡辺の手札に戻すと《大貂皮鹿/Great Sable Stag》を1体は《ジェイス・ベレレン/Jace Beleren》へ、そして、1渡辺本体へとアタックする。渡辺は《変わり谷/Mutavault》2枚を含む5マナを前に長考する。

 渡辺は相当に長考した上で《思考囲い/Thoughtseize》をキャスト。

 この中村の手札が《残酷な根本原理/Cruel Ultimatum》×2と《火山の流弾/Volcanic Fallout》にカウンター呪文というもの。すでに相当仕方ない感じになってしまった渡辺だったが、《火山の流弾/Volcanic Fallout》をディスカードさせる。

 そして、《ジェイス・ベレレン/Jace Beleren》の2枚目をキャスト。今度は自分だけがドローする。

 当然中村は《ジェイス・ベレレン/Jace Beleren》へと1体、本体へ1体という同じ割り振りで攻撃をし、またも《ジェイス・ベレレン/Jace Beleren》は墓地へ。その間も渡辺の《呪文づまりのスプライト/Spellstutter Sprite》がコツコツとダメージを重ねている。

 続くターン、中村の《大貂皮鹿/Great Sable Stag》2体アタックを《変わり谷/Mutavault》だに2体ブロックでしのいだ渡辺だが、そんな渡辺のためにコツコツをダメージを重ねる《呪文づまりのスプライト/Spellstutter Sprite》の前に《羽毛覆い/Plumeveil》が。これを無理矢理《謎めいた命令/Cryptic Command》でカウンターした渡辺だが、コレでドローを進めたことで光明が見える。


 そう、絶対的対面メタカード《巣穴の運命支配/Warren Weirding》だ。

 これで、2体目の《大貂皮鹿/Great Sable Stag》を対処しにかかる渡辺。これを《謎めいた命令/Cryptic Command》で打ち消したい中村だが、《砕けた野望/Broken Ambitions》で返り討ちに。

 攻め手を失った中村は《エスパーの魔除け/Esper Charm》で手札を充実させようと画策する。なにより、ここまで止まっている土地を引きたい。しかし、念願の土地によって6枚目のセットランドをした中村に、渡辺は容赦なくクロックをかけ、そしてアップキープには《霧縛りの徒党/Mistbind Clique》。

 この《霧縛りの徒党/Mistbind Clique》には《本質の散乱/Essence Scatter》をキャストする中村だが、しかし《呪文づまりのスプライト/Spellstutter Sprite》をおびき寄せることとなってしまう。この《呪文づまりのスプライト/Spellstutter Sprite》は《砕けた野望/Broken Ambitions》でカウンタした中村だが、せっかく7マナ揃ったターンに結局行動するマナが無い。

 続くターンの渡辺の《くぐつ師の徒党/Puppeteer Clique》は《本質の散乱/Essence Scatter》され、渡辺の最後の手札である《霧縛りの徒党/Mistbind Clique》も《エスパーの魔除け/Esper Charm》からの《火山の流弾/Volcanic Fallout》で覇権先を失ってしまう。

 これで渡辺の手札はゼロ。

 次のターンからは2ターン連続で《残酷な根本原理/Cruel Ultimatum》が飛んでくるのがみえている。

 渡辺のトップは...《謎めいた命令/Cryptic Command》!

 これで中村の《残酷な根本原理/Cruel Ultimatum》をカウンター&ドロー。そして、そのドローが《思考囲い/Thoughtseize》。

 中村は叩きつけるように手札を見せ、2枚目の《残酷な根本原理/Cruel Ultimatum》をディスカードする。その時《大貂皮鹿/Great Sable Stag》が見えはしたが、しかし、渡辺の土地の中には《変わり谷/Mutavault》と《ガーゴイルの城/Gargoyle Castle》がいる。

 中村のライフは《変わり谷/Mutavault》のアタックで2。《大貂皮鹿/Great Sable Stag》がキャストされても、渡辺は《ガーゴイルの城/Gargoyle Castle》のトークンで勝利できる。

 だが、そのトークンへは《謎めいた命令/Cryptic Command》で時間を稼がれてしまう。。

 渡辺には時間で押す、意外の《大貂皮鹿/Great Sable Stag》への回答は無いのに、だ。

中村 2-1 渡辺

 渡辺のブレイクしたイベントがThe Finalsであったとすれば、中村のブレイクしたイベントもThe Finalsであった。それまでにも中村の名は知られてはいたが、The Finals'02で優勝したことで本格的にブレイクした。

 だがそんな中村も、不遇の時期は長かった。

 世界最高回数のPPCトップレベル回数を誇り、昨年はPlayer of The Yearを獲得、さらに昨年までほぼ毎年プロツアートップ8入賞をしていた、グランプリ2連覇の記録まで持っている中村ですら、不遇の時期はあったのだ。

Game 4

nab 先手渡辺は、2ターン目から《変わり谷/Mutavault》で積極的なアタック。そして、3ターン目には1マナ余らせての《苦花/Bitterblossom》をキャストする。

 続くターン、渡辺は《思考囲い/Thoughtseize》。コレに対応して使われた《エスパーの魔除け/Esper Charm》を《砕けた野望/Broken Ambitions》でカウンターし、中村の手札を丸裸にする。

 中村の手札は《火山の流弾/Volcanic Fallout》《謎めいた命令/Cryptic Command》《本質の散乱/Essence Scatter》《破滅の刃/Doom Blade》。

 長考の末の渡辺の選択は《謎めいた命令/Cryptic Command》。返しのターンになんとか《熟考漂い/Mulldrifter》の想起で土地をのばした中村。続くターンの渡辺の《霧縛りの徒党/Mistbind Clique》も《破滅の刃/Doom Blade》でいなす。

 そして、今度は渡辺の土地が止まってしまったのだ。

 さらに悪いことに、ちょうどダメージレースの収束点ともいえる渡辺のトークンが3枚並ぶターンで《大貂皮鹿/Great Sable Stag》が登場する。渡辺は、十分なマナを残せないのも顧みず、《ウーナの末裔/Scion of Oona》を気合いたっぷりにキャスト。コレが通り、続くターンにトークン3体+《ウーナの末裔/Scion of Oona》+《変わり谷/Mutavault》で攻撃する。これで中村のライフは5。だが、慌てずに、《火山の流弾/Volcanic Fallout》を打ち込む。

 これでライフは渡辺:8の中村:3だが、中村の戦場には《大貂皮鹿/Great Sable Stag》がいるという状態ができあがる。

 中村がアタックして渡辺のライフは5。中村のターンエンドに渡辺は《呪文づまりのスプライト/Spellstutter Sprite》をキャスト。これは《本質の散乱/Essence Scatter》の対象となってしまうが、渡辺は《謎めいた命令/Cryptic Command》をキャストする。

 これが通れば、渡辺は、手札の《くぐつ師の徒党/Puppeteer Clique》で中村の墓地の《熟考漂い/Mulldrifter》をつりあげ、そして中村のライフを削ることが可能だし、何かしらで中村がタップアウトしてくれれば、《変わり谷/Mutavault》と《呪文づまりのスプライト/Spellstutter Sprite》でも3点のライフはけずれるのだ。

 だが、中村の手札にあったのは《謎めいた命令/Cryptic Command》。渡辺の《謎めいた命令/Cryptic Command》はカウンターされ、さらに《変わり谷/Mutavault》がバウンスされてしまう。

 これによって、今度は《大貂皮鹿/Great Sable Stag》の作り出す「不可侵」クロックに間に合わなくなってしまった渡辺。召喚酔いによってアタッカーとしての役割を果たさなくなってしまった《変わり谷/Mutavault》をブロッカーとしてつかい、時間を稼ぐ、いや稼がなければ自身の《苦花/Bitterblossom》でゲームに敗北してしまうのだ。

 渡辺のライフは自身の《苦花/Bitterblossom》で3。渡辺は自分の手札をみて、そして《大貂皮鹿/Great Sable Stag》を見て、気がすむまで長考するのだった。

中村 3-1 渡辺

niyaniya

中村 「実感ないすね」

 そう語る中村がニヤニヤしているのを見逃さない。中村はシャミシューなのだ。偶数の年にPoYになったプレイヤーは本音を語るのをよしとしない。

中村 「はじめての正式な代表ですからね」

 きっと、2004年の日本代表は補欠繰り上げであったことを、2007年のインヴィテーショナルは齋藤の補欠繰り上げであったことを思い返しているのだろう。

 そして、2008年についにPoYになり、正式にインヴィテーショナルに招待されるかと思いきや、インヴィテーショナル事態が無くなってしまったことを思い返しているのだろう。

 中村は不遇なプレイヤーであった。

 その中村が、今年の日本選手権を制した。報われた、という言葉は適当では無いだろうが、中村の軌跡は奇跡のように右肩あがりの曲線を描き続けている。

 渡辺に、その背中を追いかけさせるように。

前の記事: 3位決定戦:塩田 有真(岡山) vs. 津村 健志(広島)
イベントカバレージ/日本選手権09 一覧に戻る

イベントカバレージ