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Round 14: 八十岡 翔太(東京) vs. 大塚 高太郎(神奈川)

Round 14: 八十岡 翔太(東京) vs. 大塚 高太郎(神奈川)

By Daisuke Kawasaki

 全てのテーブルには物語がある。

 ひととひとが、自分の生き方を背景に本気でぶつかり合っているのだから、そこに物語がうまれないわけはない。だが、そこに、その対戦が、どのイベントの何ラウンド目で、そこになにがかかっているか、を加味することでさらに物語の意味が増す。

 端的なのは決勝戦だ。日本選手権の決勝戦ならば、そこに日本王者というタイトルがかかっていて、その勝ちも負けも、大きな意味を持つ。準決勝なら、日本代表が確定するかしないかがかかっているし、準々決勝ならそれへの挑戦権を持てるか否かがかかってくる。

 そうやって、ずーっと日本王者への道を、日本代表への道をたどっていくと、最終的には日本選手権予選のひとつひとつのマッチにも意味が出てくる。少なくとも、日本選手権予選で戦う全てのラウンドは、日本王者を、日本代表を決める正念場へと続くのだ。その連続性が物語だ。プレイヤー個人の人生という連続性に物語があるのならば、イベント自体の連続性に物語があるのは当然だろう。

 しかし、日本選手権に参加しているプレイヤーがすべて予選を突破してきているわけではない。

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 今、日曜日への切符をかけて第14回戦を戦うふたりのプレイヤー、大塚 高太郎(神奈川)と八十岡 翔太(東京)のふたりは、プロプレイヤークラブにレベルによって招待されて、日本選手権の参加権を獲得している。

 では、彼らの日本選手権は、予選を突破してきたプレイヤーのように、物語の連続性の中に存在しているわけではないのだろうか。そんなわけがない。

 プロレベルを持って、プレミアイベントに参加しているプレイヤーたちは、言葉の定義を問わなければ、皆一様に「プロ」だ。そして、このふたりは、その中でも一流のプロなのだ。

 彼らの場合は、シーズン全体がで物語の連続性があるのだ。

Game 1

 ダイスロールでめずらしく勝利した八十岡だったが、土地の枚数は十分なものの、赤マナのない初手をマリガン。結果、赤マナ(《怒り狂う山峡/Raging Ravine》)含む土地3枚に、《稲妻/Lightning Bolt》《血編み髪のエルフ/Bloodbraid Elf》《大渦の脈動/Maelstrom Pulse》という6枚をキープする。

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 八十岡が《怒り狂う山峡/Raging Ravine》をタップインしてゲームスタート。大塚は2ターン目に《不屈の自然/Rampant Growth》をキャストし、マナ加速する。

 続くターンに4マナに到達した大塚。ここで《精神を刻む者、ジェイス/Jace, the Mind Sculptor》をキャストし、《渦まく知識/Brainstorm》能力を使用する。この時点で必要十分量の5枚目の土地にアクセスしている八十岡。ターンエンドに《新緑の地下墓地/Verdant Catacombs》で《森/Forest》をサーチし、八十岡の言うところの「相手がライフを払う《ネクロポーテンス/Necropotence》」こと《血編み髪のエルフ/Bloodbraid Elf》をキャストする。

 この続唱がこの状況でベストの《朽ちゆくヒル/Putrid Leech》。《精神を刻む者、ジェイス/Jace, the Mind Sculptor》にアタックし、忠誠カウンターをゼロにする。

 だが、大塚も《水蓮のコブラ/Lotus Cobra》のキャストから、《ムル・ダヤの巫女/Oracle of Mul Daya》につなげる。さらに山札のトップでめくれたのが《時間のねじれ/Time Warp》。ゲーム開始からここまで全ターン土地を引いている八十岡は、手札のスペルを温存しつつタップアウトでターンを渡すのを嫌い、ターンエンド。

 大塚は、ドローして、山札のトップを入れ替えるが、今度は《ムル・ダヤの巫女/Oracle of Mul Daya》。《沸騰する小湖/Scalding Tarn》のセットからの使用で山札をシャッフルする。

 ここでめくれたのが《ゼンディカーの報復者/Avenger of Zendikar》。そして、大塚は《沸騰する小湖/Scalding Tarn》セット+フェッチで稼いであったマナを使い《探検/Explore》をキャストする。

 長考の末、これに対応して《水蓮のコブラ/Lotus Cobra》へと《稲妻/Lightning Bolt》を撃つ八十岡。大塚は《ゼンディカーの報復者/Avenger of Zendikar》を使用し、《ハリマーの深み/Halimar Depths》を含む2枚の土地をセットする。今度のトップは《時間のねじれ/Time Warp》。

 これで大塚の手札に《時間のねじれ/Time Warp》の2枚目がいくことは確定した。八十岡はカードをドローしたものの、またも土地。手札に残る最後の呪文である《大渦の脈動/Maelstrom Pulse》を苗木トークンに打ち込むと、ターンを終える。

 大塚は、4点の《地震/Earthquake》を撃ち、そして《ゼンディカーの報復者/Avenger of Zendikar》でアタック。残り2枚の《時間のねじれ/Time Warp》があることをふまえて八十岡はカードをたたんだ。

大塚 1-0 八十岡

 今シーズン、ふたりは非常に好調だ。

 大塚はすでに先日のプロツアー・サンファンでトップ8入賞を果たしているし、八十岡もグランプリトップ8入賞回数を重ねに重ねて、この日本選手権で入賞すればすでにレベル6を確定させられるほどのプロポイントを稼いでいる。

 Game 1では、八十岡の初手からのドローは筆者から見えた限り、全て土地だった。「土地岡」と揶揄されることが多いほどに、八十岡は、正念場で土地を多く引いてしまうことが多いように見える。この京都で行われたプロツアー・京都09で、トップ8がかかった最終戦でも、八十岡は、非常に多くの土地を引いていた。

Game 2
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 先手の八十岡は、2ターン目に《朽ちゆくヒル/Putrid Leech》をキャストするが、これは《炎の斬りつけ/Flame Slash》で除去。対して、八十岡も《強迫/Duress》で《精神を刻む者、ジェイス/Jace, the Mind Sculptor》をディスカードさせる。

 大塚は《探検/Explore》を使用すると、まず、《ハリマーの深み/Halimar Depths》をセットし、続けて、2枚目の《カルニの庭/Khalni Garden》をセットする。

 これで手札が4枚になった大塚に《荒廃稲妻/Blightning》を打ち込む八十岡。大塚は土地を追加して《時間のねじれ/Time Warp》。そして《ムル・ダヤの巫女/Oracle of Mul Daya》をキャストすると、山札のトップは、またも《時間のねじれ/Time Warp》。

 八十岡はフルタップで《包囲攻撃の司令官/Siege-Gang Commander》をキャストしてターンを返す。対して大塚は順調に2枚連続で山札からセットランドすると、長考の末に《ジュワー島のスフィンクス/Sphinx of Jwar Isle》を召喚する。山札のトップは《炎の斬りつけ/Flame Slash》。

 ここで八十岡は2枚目の《荒廃稲妻/Blightning》。これで手札から落される《時間のねじれ/Time Warp》。さらに、大塚が《炎の斬りつけ/Flame Slash》をドローした所で、八十岡は《ムル・ダヤの巫女/Oracle of Mul Daya》を除去してしまう。

 事実上のトップデックに持ち込む八十岡。

 これにより、大塚の《ジュワー島のスフィンクス/Sphinx of Jwar Isle》はますます殴れなくなってしまい、最終的には《怒り狂う山峡/Raging Ravine》に一方的に打ち崩される。

 結局、最後には、《怒り狂う山峡/Raging Ravine》がミシュラランドを攻撃を始め。八十岡は「勝って」土地を片付けた。

大塚 1-1 八十岡

 一方で大塚は、こういうトップ8のかかったマッチアップに強い、いわゆる勝負強さを持っているように思う。いわゆる勝負師タイプなのだろう。

 だから、ドラフト終了時に1敗をキープしていた大塚のトップ8入賞はほぼ決まっていたように思っていたし、実際にそういう会話を大塚自身とした記憶がある。

 だが、そこからの連敗。結果的に、大塚はこの日本選手権第14回戦で、トップ8入賞をかけたマッチを戦うことになった。

Game 3

 「ターボランド」で、まさか4ターン目に土地が止まる大塚。

 そして、そこに突き刺さる八十岡の《ゴブリンの廃墟飛ばし/Goblin Ruinblaster》。

 何とか《不屈の自然/Rampant Growth》を引いた大塚に対して八十岡は《荒廃稲妻/Blightning》。これで大塚のライフは12。

 続いて《島/Island》をひき、《精神を刻む者、ジェイス/Jace, the Mind Sculptor》をキャスト。《渦まく知識/Brainstorm》能力で安定を確保した大塚だったが、八十岡はターンエンドにキャストした《稲妻/Lightning Bolt》は「本体へ」。

大塚 「死んだ?」

 八十岡は、まず、《強迫/Duress》をキャスト。大塚の手札は《思考の泉/Mind Spring》《炎の斬りつけ/Flame Slash》に《ゼンディカーの報復者/Avenger of Zendikar》《沸騰する小湖/Scalding Tarn》《カルニの庭/Khalni Garden》。

 ここから《炎の斬りつけ/Flame Slash》をディスカードさせると、《ゴブリンの廃墟飛ばし/Goblin Ruinblaster》でアタックし、《荒廃稲妻/Blightning》をキャストし、ダメージを《精神を刻む者、ジェイス/Jace, the Mind Sculptor》に割り振る。

 大塚は、《時間のねじれ/Time Warp》をキャスト。そして、続くターンに《思考の泉/Mind Spring》で手札を3枚補充すると、《カルニの庭/Khalni Garden》でトークンを生み出す。

 だが、そのトークンが《破滅の刃/Doom Blade》で除去される。そして八十岡のコントロールする土地の中には《溶岩爪の辺境/Lavaclaw Reaches》。

 盤面にあるカードだけで勝負は決し、大塚は手を差し出した。

大塚 1-2 八十岡

 大塚は、長い友人である八十岡のトップ8入賞を祝いつつも、くやしそうに、やりきれなそうにフィーチャリングエリアを出て行った。今年のシーズンで言えば、この日本選手権はまだ折り返し地点であるし、まだまだ大塚には活躍の機会は残されている。大きな連続の中で見れば、ひとつの通過地点でしかないのにかかわらず、だ。

 だから、やっぱり、マッチごとにかかっているものは非常に大きい。目の前のマッチの勝敗ひとつひとつが大きな意味を持つし、だから、やっと、連続性も意味を持つ。

 日本選手権の第14ラウンドにかかっているものは格別だ。そこで日本選手権という物語が終わるか続くかが決まってしまうのだから。

 今、ここで、大塚の日本選手権の物語は終わり、大塚は9月におこなわれるプロツアー・アムステルダムにむけての準備に気持ちを切り替える。

 そして、八十岡と、7人の物語は、明日へ続く。

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