マジック:ザ・ギャザリング 日本公式ウェブサイト

イベントカバレージ

芸術に関するあれやこれ

芸術に関するあれやこれ

 プレミア・レベルのマジックのイベントでは、他のイベントでは得られない特別な経験が存在する。その中でももっとも大きなものの一つが、マジックのカードに命を吹き込む人たち、そう、ゲスト・アーティストだ。2010年日本選手権のゲスト・アーティストは大物中の大物が来てくれていた。ドイツはヴァルツブルクから登場の、フォルカン・バガだ。彼の代表的な作品は《遍歴の騎士、エルズペス》や《不屈の随員》で、他にも数多くのカードに命を吹き込んできた。
 アーティストになろうと思ったときのことを聞いたところ「私は何かクリエイティブなことをしたいと思っていました。描くことはずっと好きでしたが、建築の道か何かそういう類のクリエイティブなことをしようと思っていました。2002年に学校を出て、それからずっとフリーランスでやっています。」これが初来日、初アジアだという彼に、このイベントに来ている日本のプレイヤーについての印象を聞いてみた。「素晴らしいですね。日本の皆さんはカード・イラストを芸術として敬意を払ってくれていますが、世界にはそうでない人たちもいるんです。芸術とあがめられるようなものは賞賛しても、カード・イラストはただの商業製品だと言うのです。ここでは皆さん、カード・イラストも賞賛してくれています」


ファンのためにカードにサインするアーティスト フォルカン・バガ

 バガに会えたことを大変に喜んでいるファンの一人が、伊藤裕道氏である。広島から来たビジネスマンである氏は純粋なヴィンテージ・プレイヤーとして知られており、このゲーム最古のフォーマットだけを戦場としていて、ジェンコンでヴィンテージ・チャンピオンに輝いた実績を持つ。ヴィンテージ選手権の賞品は、何と、世界に一枚しかない特製の、新イラスト《Mox Emerald》だったのだ。そして、その《Mox Emerald》を描いたアーティストこそが誰あろうこのフォルカン・バガなのである。伊藤氏はその原画を描いた本人にサインして貰えると思うと、気も狂わんばかりだった。

「これは宝物ですよ。モックスにサインして貰うためだけにここに来たんです!」と、伊藤氏はその絵についての思いを語った。

 新しく作られたモックス各種は、ヴィンテージ形式のファンを賞賛するために作られ、毎年のジェンコンで賞品になっている。フォルカンはそれらを描き、原画スケッチを4枚は今でも所持しており、そしてこの週末、彼のコーナーで展示販売を行なっている。


フォルカン・バガが販売している、モックスの原画スケッチ

 この週末に来場しているアーティストは他にも2人いる。大久保成志郎氏と山本祐輔氏だ。大久保氏は、鋭い刃を揮って7枚以上のマジックのカードを複雑な形に切り抜き、カードに描かれた情景を立体的に描き出す3Dカードの制作で世界的に有名である。私は彼にお時間をいただき、この週末について話を聞いた。

 大久保氏は山本氏とは以前から知り合いだったという。どこで出会ったのかと尋ねると、「アーティストのサイン会に並んでいるときにですよ」と笑いながら答えてくれた。彼が何度も素材にしているフォルカンの絵についてどう思うか聞いてみたところ、「細かすぎますよ! それに、人気もあるから手に入れにくい!」と、さらに笑いながら言う。フォルカンの絵はマジックの中でも需要の多いものであり、たとえば《遍歴の騎士、エルズペス》7枚を手に入れるのに苦労したのは大久保氏だけではないだろう!

 マジック歴は5~6年だという山本佑輔氏が日本選手権のゲストとして招待されたのは今回が初めてである。彼の今までの仕事の中で気に入っているのは《機械仕掛けの鳥》と《神性変異》だというが、新しいものを作るたび、毎週毎週変わっていくという。彼のカードはどれも印象的だが、私が一番印象を受けたのはこの次元カードだった。

 文字通り息を呑まされた。写真ではこの臨場感を伝えることはできないだろう。この2人の匠はこの週末、大量の作品とともに緻密な工作を見せてくれるだろう。


大久保氏(左)と山本氏(右)

 フォルカンに再び、今度はこのイベントでの印象的な出来事について話を聞いた。彼はまず興奮した伊藤氏に出会ったことについて、「私のイラストがカードに仕上げられてプレゼントされた物を見て満足しました。そして、それを受け取った優勝者が本当に嬉しそうで、モックスを手に入れたことを喜んでいてくれたこともいいことでした」と語り、そして「私のカードをスケッチしたり改変したりする人に会ったことはありますが、これはすごいですよ。イラストの一面とかそういう話じゃなく、イラストの別の形です。これはもう完全に別の芸術ですよ!」 フォルカンはそれまでのルールを覆し、2人のアーティストに、フォルカンのために作ったものにサインを入れてくれるように頼んでいた。

 素晴らしい芸術作品と、イラストに命を吹き込む人たちに出会うこと。それもまた、プレミア・イベントに足を運ぶ理由の一つになるだろう。

前の記事: Round 9: 池田 剛(福岡) vs. 中村 修平(大阪) | 次の記事: Round 10: 森 勝洋(大阪) vs. 三原 槙仁(千葉)
イベントカバレージ/日本選手権2010 一覧に戻る

イベントカバレージ