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決勝: 池田 剛(福岡) vs. 森 勝洋(大阪)

決勝: 池田 剛(福岡) vs. 森 勝洋(大阪)

by Yusuke Yoshikawa

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 日本選手権、とは何だろうか。

 例えば日本プロ野球シーズンの掉尾を飾るのは「日本選手権シリーズ」であるし、陸上競技、水泳、その他のスポーツ、競技でも、多くの日本選手権が行われている。
 当然、マジック:ザ・ギャザリングもそのひとつであり、それらにすべて共通しているのは、「日本一を決めるため」の大会、ということである。

 「日本一」の称号ほど、他に通ずるものもないだろう。
 もちろんマジックの世界には、プロツアー、グランプリなど、ほかに数えるべきタイトルはいくつもある。
 ここで向かい合っている二人にしても、数え上げればキリがないほどの輝かしい戦績が並び、森に至っては日本選手権は2006年に一度獲得したタイトルでもある。

 マッチ前の光景に目を移す。
 先にシャッフルを終えた森が、祈るように目を閉じて待つ。
 対する池田はいつものようにリラックス、淡々としている。
 二人とも、どこか力が入っているようにも見える。
 それは、これが日本一を決める戦い、「日本選手権」だから、なのか。

 歴戦の勇者も胸を高鳴らせる戦い。日本一を、決めよう。


Game 1

 ダイスロールを制した森がキープを即答するのに対し、しばし熟考に沈む池田。
 痺れを切らしたように、森が
「もういい?」
 と聞くと、池田は
「いや、ダメ」
 と苦笑して、その直後にライブラリに手をかけた。

 シャッフルと6枚の確認を経て、池田が右手を差し出してキープの意を示す。
 それを見るや否や、森は電光石火の速さで《山/Mountain》と《ゴブリンの先達/Goblin Guide》を横向きに置き、攻撃を宣言した。能力によって《精神を刻む者、ジェイス/Jace, the Mind Sculptor》が公開され、戦いの幕が開く。

 第2ターン、森は《カルガの竜王/Kargan Dragonlord》と2枚目の《ゴブリンの先達/Goblin Guide》とで悩むが、後者を選択。明かされた《審判の日/Day of Judgment》が森の脳裏に刻まれる。
 池田は《乾燥台地/Arid Mesa》から《平地/Plains》を経て《前兆の壁/Wall of Omens》。忘れそうになるが、まだ第2ターンである。

 森は《ゴブリンの先達/Goblin Guide》2体で攻撃、公開は《流刑への道/Path to Exile》。強いカードが続々とめくれるが、池田にとってうれしい展開にはなかなかならない。楽ではないのは森も同じで、3枚目の土地を引き込めずに、《カルガの竜王/Kargan Dragonlord》をキャストするのみ。

 池田は森の《山/Mountain》の一方を《広がりゆく海/Spreading Seas》するが、こちらも3枚目の土地を引けない。が、次の《ゴブリンの先達/Goblin Guide》の攻撃で《天界の列柱/Celestial Colonnade》《氷河の城砦/Glacial Fortress》が次々にめくれ、一気に手札に入っていく。

 森も土地事故に陥っているところに《広がりゆく海/Spreading Seas》が効いてしまい、2枚目の《カルガの竜王/Kargan Dragonlord》も《焼尽の猛火/Searing Blaze》も唱えられないままターンを終了。
 池田は少考ののち、《氷河の城砦/Glacial Fortress》を置き《忘却の輪/Oblivion Ring》で《カルガの竜王/Kargan Dragonlord》を除去する。
 攻撃するしかない森は、2体の《ゴブリンの先達/Goblin Guide》を押し出すのみ。この公開は《悪斬の天使/Baneslayer Angel》。悪くはない、悪くは。

 ようやくマナを供給できつつある池田は、《遍歴の騎士、エルズペス/Elspeth, Knight-Errant》を呼び出し、「トークンで終わり」と告げる。
 そろそろ苦しくなってくる森だが、こちらもようやく《山/Mountain》を引き当てて、吐く息とともに、わずかな「よし」という声。勇躍《地獄の雷/Hell's Thunder》を送り込んで突撃。《精神を刻む者、ジェイス/Jace, the Mind Sculptor》が公開される。
 「2?」と池田のライフを確認。池田がうなずく。

 池田は《永遠溢れの杯/Everflowing Chalice》X=1を2枚並べて次への備えとするが、森は土地を置くと《焼尽の猛火/Searing Blaze》を提示して、ゲームを終わらせた。

池田 0-1 森

 両者、事前に配られた相手のデッキリストに目を落として、サイドボードプランを確認し、カードを入れ替えていく。

池田のサイドボーディング
OUT
4《広がりゆく海/Spreading Seas》
1《軍部政変/Martial Coup》
1《審判の日/Day of Judgment》
3《精神を刻む者、ジェイス/Jace, the Mind Sculptor》
1《忘却の輪/Oblivion Ring》

IN
4《否認/Negate》
3《瞬間凍結/Flashfreeze》
2《天界の粛清/Celestial Purge》
1《失われた真実のスフィンクス/Sphinx of Lost Truths》

森のサイドボーディング
OUT
2《消しえる火/Quenchable Fire》
3《地震/Earthquake》
3《ボール・ライトニング/Ball Lightning》

IN
3《包囲攻撃の司令官/Siege-Gang Commander》
2《バジリスクの首輪/Basilisk Collar》
3《狡猾な火花魔道士/Cunning Sparkmage》


 森が不意に、
「どうやって勝てばいいんだろうね」
 と珍しく弱気にも取れるコメントを落とす。

 入れ替えを終え、一度はシャッフルを始めるが、また思い直し、カードを入れ替え、また考え直す、という行動をとる森。それを見て、池田も思い返してカードを差し替える。
 サイドボーディングは騙し合いか、迷いか、果たして。

Game 2
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 ゲームは再び森の《ゴブリンの先達/Goblin Guide》から。公開は《前兆の壁/Wall of Omens》でこれを展開する池田だが、森は戦闘ダメージと《稲妻/Lightning Bolt》の合わせ技で除去。
 呪文を構えてターンを返す池田に、森は考え抜いて《ボール・ライトニング/Ball Lightning》、これは《天界の粛清/Celestial Purge》を合わせてライフを守る。

 再びの《前兆の壁/Wall of Omens》に対し、4枚目の土地を引き当てた森は軽くガッツポーズ、そのまま《炎の斬りつけ/Flame Slash》《ボール・ライトニング/Ball Lightning》に流れる。《ゴブリンの先達/Goblin Guide》も相まって池田のライフはすでに8、しかも自分のターンで4枚目の土地を置くことができない。

 森が唱えた《地獄の雷/Hell's Thunder》こそ《瞬間凍結/Flashfreeze》されるが、《ゴブリンの先達/Goblin Guide》での公開されるのが《忘却の輪/Oblivion Ring》。相変わらず土地がめくれない。
 森は小さくだが、確かに「よし」と言った。
 池田は仕方なく、働き者の《ゴブリンの先達/Goblin Guide》を《流刑への道/Path to Exile》で《山/Mountain》に変える。《永遠溢れの杯/Everflowing Chalice》こそ置くが、マナ源の確保に苦しみ、ため息とともに返すターンが多くなっている。
 森は《地獄の雷/Hell's Thunder》の蘇生でライフ4まで追い詰めると、5マナが出せる状況、手札には《包囲攻撃の司令官/Siege-Gang Commander》《稲妻/Lightning Bolt》《焼尽の猛火/Searing Blaze》で、何もせず隙をうかがう。
 ドローして軽く手を顔にやる池田、やはり何もなし。森は引いてきた《カルガの竜王/Kargan Dragonlord》でカウンターをあぶるが、池田は通す。Lv2にして「終わり」。
 これは《未達への旅/Journey to Nowhere》で対処した池田が、深く息をついて考えると、フルタップを覚悟で《前兆の壁/Wall of Omens》を出し、引いてきた《氷河の城砦/Glacial Fortress》を置く。

 これを見て、森は《稲妻/Lightning Bolt》。ドロー後、提示された《焼尽の猛火/Searing Blaze》に、池田は小さくうなずいた。

池田 0-2 森

 池田も、森も、いつものように平静でいるようで、ひとつひとつのプレイングへの反応が大きくなっている。
 森の手を見ると、わずかに震えていることもある。

 経験だけで言うなら、この二人が通過したゲームは、数えきれないほどあるはず。
 しかし、その二人をも震わせる何かが、ここに。

池田のサイドボーディング
OUT
2《審判の日/Day of Judgment》
IN
2《精神を刻む者、ジェイス/Jace, the Mind Sculptor》

森のサイドボーディング
OUT
1《狡猾な火花魔道士/Cunning Sparkmage》
IN
1《ボール・ライトニング/Ball Lightning》


Game 3

 「先攻で」と池田。今度は7枚に親指を立てて見せる。
 森は《沸騰する小湖/Scalding Tarn》から《山/Mountain》、そして3連続となる《ゴブリンの先達/Goblin Guide》。叩きつける手つきも、もはや見慣れて。
 池田は《永遠溢れの杯/Everflowing Chalice》X=1でマナソースの確保につとめるが、森は《ぐらつく峰/Teetering Peaks》で《ゴブリンの先達/Goblin Guide》に+2/+0して2枚目の《ゴブリンの先達/Goblin Guide》。
 池田のライフは早くも12となったうえ、公開されたのは《流刑への道/Path to Exile》。相変わらず土地がめくれない。

 にわかに窮地の池田は、わずかにかぶりを振って考える。森はその思考をトレースするように、池田の様子を見据える。

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 《氷河の城砦/Glacial Fortress》《島/Island》《永遠溢れの杯/Everflowing Chalice》の戦場に《島/Island》が追加されて、森は軽くうなずいた。{W}{W}はない、と。
 池田は長考に入るが、X=1の《思考の泉/Mind Spring》をプレイしてわずかでもライブラリを掘り下げることを選ぶ。残した《氷河の城砦/Glacial Fortress》は《流刑への道/Path to Exile》はもちろんのため。

 《ゴブリンの先達/Goblin Guide》2体による攻撃、《未達への旅/Journey to Nowhere》がめくれる。池田は片方を《山/Mountain》に変え、ライフは10に。森は3マナ(相当)を残したまま終了。
 池田は考えて、《地盤の際/Tectonic Edge》をプレイして起動、森の《ぐらつく峰/Teetering Peaks》を破壊。森は赤マナを出しておき、戦闘フェイズに入ってそれを消滅させる、というよくあるやり取り。
 それを経て、池田は残る3マナで《忘却の輪/Oblivion Ring》を唱え、《ゴブリンの先達/Goblin Guide》も取り除く。

 しかしフルタップとなったここで、森は《地獄の雷/Hell's Thunder》、《ぐらつく峰/Teetering Peaks》と流れるように戦場に並べる。
 6点のダメージが宣告され、池田の残るライフは4。

 池田はそのままターンを返す。
 森は5枚目の土地を、押さえつけるように置く。

 蘇生された《地獄の雷/Hell's Thunder》が、まさしく稲妻のごとき男の、2度目の戴冠を告げた。

池田 0-3 森


 優勝が決まった瞬間、森は喜びを爆発させるでもなく、当然だとばかりに無表情を貫くでもなく、ただゆっくりと、天を仰いだ。

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 鳴り響く拍手が止んで、カードを片付けて、一息。
 そしてようやく、笑顔がこぼれた。

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 日本王者となった森、池田、3位決定戦を制した田籠の3人は、12月に千葉・幕張で開催される世界選手権にて、日本代表として戦うことになる。

 日本代表、とは何だろうか。 という問いは自明なので置いておこう。

 直近の例をとるまでもなく、ひとつの競技で国を背負う存在の、いかに大きなことか。ましてや、この実力者にあふれたメンバーなのだから、期待は図り知れない。
 世界の中で凋落が叫ばれる日本の中にあって、世界を知り、かつ日本王者という言葉の重さを知る彼らの活躍を、今は楽しみに待とう。

 物語は続いていく。
 そのゆくえは、年末の幕張にて、あなたの目で確かめてほしい。

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