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2nd Draft:3番ポッド

2nd Draft:3番ポッド

By Koichiro Maki

 ドラフトは空気を読むゲームである。

 勿論、それには様々な前提がある。別記事で解説されている各種アーキタイプを熟知するってのは当然のことだし、渡辺が毎週お届けしているコンボをアドリブで混ぜ込むセンスだって必要だ。その根底を支えるのがプレイングテクニックだってのも周知の事実。

 けれど、今日この会場にいる選手の殆どはそれら全てを併せ持っている。多少の差はあれ、みなドラフトのエキスパートのはずである。ならば、何が彼らの勝敗を分ける天秤となるのか。それこそが空気を読むセンスである。

 ご存知のように、ドラフトは非公開情報という海の中を泳ぐゲームだ。認知できるのは自分の手の中にあるカードの束、そして既にピック済みのデッキ予備軍のみ。まわりのメンバーが何を取り何を目指しているかは解らない。

 だが、実は解らないこともない。自分の手元に流れてくるカードには、確実にまわりのメンバーの意志が込められている。彼らの食い残した痕が残されている。何をすべきか、何をすべきでないか、微妙なガイドラインがあぶり出しのように隠されている。

 8人中6人で分け合う黒。
 8人中2人しか欲しない白。

 色の強さは均一ではないが、期待値で言えば後者の方が絶対に強い。そして、マジックとは大抵の場合、期待値の高さを選択し続けるゲームであるはず。

 ドラフトとは空気を読むゲームである。自分に与えられた役目、自分が取るべき色は何なのか。それを探すゲームだ。では、ちょっくら次の面々が読んだ空気を眺めてみるとしよう。

セカンドドラフト 第3ポッド

 中村  ... 2008 Player of the Year
 池田  ... 2009 PT Autsin 準優勝
 八十岡 ... 2006 Player of the Year
 北山  ... 2007日本王者
 藤田  ... 2004 PT Amsterdum 準優勝
 斉藤  ... 2007 Player of the Year

 濃い。そして重い。ラーメン次郎ですら腰抜かすぐらいのボリュームがこのポッドにはある。せめてもうちょいスープを薄め具を減らす努力はできなかったのか、小一時間問い詰めたいところではあるが、面白すぎるので見逃す手はない。

 彼らの配置はこうだ。

 中村 池田 八十 永井
 斉藤 深田 藤田 北山

 斉藤のピックは大澤が、そして中村のピックはBillがとっているので、筆者は残されたPoY、八十岡を追いかけることにしよう。

1-1

《記憶の壁/Mnemonic Wall》

 他の候補。《引き裂かれし永劫、エムラクール/Emrakul, the Aeons Torn》《空見張りの達人/Skywatcher Adept》

 ヤソっぽい。非常にヤソっぽい。ヤソと言えば《対抗呪文/Counterspell》の化身であり、超のつくコントロールフリーク。納得のピックである。

1-2

《血の復讐/Vendetta》

 他の候補。《記憶の壁/Mnemonic Wall》

 これまた普通。記憶の壁を取った以上、インスタントとソーサリーを見逃す手はない。

1-3

《コジレックの捕食者/Kozilek's Predator》

1-4

《成長の発作/Growth Spasm》

1-5

《草茂る胸壁/Overgrown Battlement》

 八十岡の空気の読み方はさすがである。渡されたカード群の中から的確に受けが広く重要なパーツを選び続ける。上の池田、上々の中村。彼ら二人によって濾過されたカードの中には緑の遺伝子が濃く残されている。必然として、八十岡のピックは緑に染まる。逆に、初手で選んだ青は徐々にトーンダウン。それもそのはず。池田・中村の両名は共に青を選択しているのである。

 中村 白青
 池田 赤(青)(緑)
 八十岡 緑(青)(黒)

 ()内はまだ枚数が足りず確定していない色。青い三連星はかなり危険な並びであり、近い将来、空気を読んだ誰かが撤退する予感がある。

1-6

《海門の神官/Sea Gate Oracle》

1-7

《死者のインプ/Cadaver Imp》
他の候補《記憶の壁/Mnemonic Wall》

 ここで八十岡が動いた。そのまま《記憶の壁/Mnemonic Wall》でインスタント・ソーサリー属性を高めてもいいが、まだ両種をあまり確保できていないこともあるし、インプを取ることで黒の要素を濃くすることを選択。もしかしたら、青の流れが悪いことを察知しつつあるのかもしれない。

 カードが弱くなる後半ではあまり動きがなく、そのままの流れで1パック目が終了する。では、ちょっとここでポッド全体の状況を確認しておこう。

中村池田八十岡永井
白青(黒)オーラ赤(青緑)緑黒(青)トークン黒緑
齋藤深田藤田北山
赤黒黒(白)白赤青赤

白 2+(1)
青 2+(2)
黒 4+(1)
赤 4
緑 2+(1)

 赤、黒はほぼ定数で緑に若干隙がある。まだ色が確定しきっていないメンバーはそろそろ決断の時期を迎えることになる。

2-1

《バーラ・ゲドの獣壊し/Beastbreaker of Bala Ged》
他の候補《血の復讐/Vendetta》《熱光線/Heat Ray》

2-2

《バーラ・ゲドの蠍/Bala Ged Scorpion》

2-3

《予言のプリズム/Prophetic Prism》

2-4

《記憶の壁/Mnemonic Wall》
他の候補 緑壁

2-5

《分かち合う発見/Shared Discovery》

 ポイントは2-1と2-4の二カ所。記憶の壁を取っているのでヤソく血の復讐を選んでもよいとこだとは思ったが、攻撃力不足を感じたか、《バーラ・ゲドの獣壊し/Beastbreaker of Bala Ged》を選択。だが、その後なかなか除去に出会えず、不安な旅を続けることになる。そして、それを踏まえた2-4だ。復讐を選択しなかった以上、記憶の壁に固執する理由は少ない。緑が濃くなっているのでマナ壁を2枚とし重量級の受け入れ体制を整えても良さそうなところだが、青壁。大丈夫だろうか。回収できるのは未だ血の復讐1枚だけである。

 そして、この八十岡の選択が横で別のドラマの発端となった。

 二色目の確定を急いでいた池田が流された緑壁と遭遇。渡りに船と、青をすぱっと諦め赤緑へと路線を変更したのである。

 そういえば、2-5で八十岡は《分かち合う発見/Shared Discovery》をピックしているが、現状そこまでトークンが並ぶ構成ではない。若干早い気もするがどうなのだろうか。

 2パック目終了により、色の分布はこう変動した。

中村池田八十岡永井
白青オーラ赤緑緑黒(青)トークン黒緑
齋藤深田藤田北山
赤黒黒緑白赤青赤

白 2+(1)→2
青 2+(2)→2+(1)
黒 4+(1)→4
赤 4
緑 2+(1)→4

 白・青・黒の負担が減る裏で、緑の需要が急増。ここまで《敬慕される教師/Venerated Teacher》が出ていないため、レベルアップ路線を選んだものはいない。ポジションと色的には、ライバルの少ない中村に有利な風が吹いている。

3-1

《死骸孵化/Corpsehatch》

他の候補 黒2、《記憶の壁/Mnemonic Wall》

3-2

《踏みつけの仔/Stomper Cub》

3-3

《死骸孵化/Corpsehatch》

他の候補《血の復讐/Vendetta》

3-4

《地獄彫りの悪魔/Hellcarver Demon》

 嵐の2パックを過ぎると、そこには神風が。不足しまくっていた記憶の壁のパートナーとなる除去が訪れ、そのついでにフィニッシャーまでがやってきたのだ。もっとも、この悪魔の受け入れを可能としたのは《予言のプリズム/Prophetic Prism》2枚にランパン1枚という八十岡が築き上げてきた土台であるのもまた間違いない。

 空気を読む。筆者はまずこう切り出した。だが、その言葉は更に幾つかのレイヤーに分けられる。過去の風を読む、現在の風を読む、そして未来の風を読む、と。卓上の色配置は常に変動する可能性を秘めている。これまでの風が薙いでいるからといって、未来も平穏無事だとは限らない。抜群の快晴が突如として豪雨になることもあれば、その逆もある。

 そして、おそらく八十岡は筆者には感じられなかった流れを読んでいたのだろう。改めて読み返してみれば、八十岡の右側二人に黒を選択したプレイヤーはいなかった。1パック目でそれを感じてとっていれば、3パック目に黒除去が流れてくるのは必然となる。その風を、その空気を読み取れるかどうか。それもまたプレイヤーのセンスであり腕である。

 そして、筆者は2-5に対してこうコメントした。

  そういえば、2-5で八十岡は《分かち合う発見/Shared Discovery》をピックしているが、現状そこまでトークンが並ぶ構成ではない。若干早い気もするがどうなのだろうか。

 だが、実はこのピックこそが、この後の八十岡のゲームを決定づける大きな一打となったのだ。発見→記憶の壁→発見。この展開により八十岡は数々のゲームをものにし、気がつけば三戦すべてに勝利していた。

 ちなみに、その最後の相手を務めたのは、2パック目で緑の風を感じ取った池田だった。

 過去、現在、未来。ドラフトには様々な風が吹き抜けているのだ。

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