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Round 2:佐々木 優太(神奈川) vs. 石村 信太郎(埼玉)

Round 2:佐々木 優太(神奈川) vs. 石村 信太郎(埼玉)

By Jun'ya Takahashi

 時折、MTGのトーナメントシーンには『天才』と呼ばれる人種が現れる。もちろん、彼らが本当に『天才』であるかどうかは余り関係がない。周りの人間の常識や一般的なゲームのバランス感覚の範疇に収まらない人間を、畏敬と尊敬、そして僅かな嫉妬と異端視を混じえながら『天才』と呼ぶのだ。

 優秀な成績を収める事や的確なプレイングを繰り返すのみでは得る事が出来ないその称号を、多くのプレイヤーの賛同と共に得たプレイヤーとして挙げられる最も有名な一人は、森勝洋だろう。3年連続で世界選手権のトップ8に入賞し、世界チャンピオンとナショナルチャンピオンを経験している彼は、そのプレイスタイルやキャラクター、発言とアイディア等といったあらゆる要素が常人の感覚から大きくかけ離れている事が多い。その個性は多くの人を惹き付け、地域を問わずに多くのコミュニティーとの交流がある。

 そんな個性的な人格を持つ森 勝洋の生態に詳しい「モリカツ研究家」の中島 主税によると、最近モリカツにとても良く似た雰囲気の高校生がマジックを始めたらしい。国産カードゲームのトッププレイヤーの一人で、8か月前にマジックを始めてからは2回のグランプリで共に64位以内の好成績を収めている。そんな彼の名前は佐々木 優太。

 マジックを始めてからは、浅原 晃や渡辺 雄也といった強豪に揉まれて研鑚の日々を送っている。別のカードゲームでのバランス感覚が生きているのか、呑み込みが早くグングン成長するため、多くのトッププレイヤーから次の世代の優良株と期待されているようだ。

 今回の対戦相手である「ライザ」こと石村は、筆者と同じ世代の中でも異彩を放つ『天才』系のプレイヤーの一人だ。独自のマジック論を展開しながらも、縦シナジーや独特の構築技術を武器に勝ちを積み重ねていく華のあるプレイヤーである。彼を知るプレイヤーは、かの「八十岡 翔太」を連想する事が多く、不思議なゲームへと引きずり込んでダメージレースを展開していく様は確かに彼その者だ。しかし個人的な意見では、基盤にしっかりとしたロジカルの根を張った上での異様さを持つ「八十岡」に対し、その基盤すら自社規格のオリジナルで出来ている石村はより一段と異質に感じられる。

 『天才』肌のプレイヤー同士の対戦とあって、どのような展開を見せる事になるのかが非常に楽しみだ。

Game 1

佐々木 「うわー、ラッシュ。ライザってまだ俺の実力じゃ勝てないよね?」
 
 席に着くや否や筆者に、堰を切ったような早口で語りかけてきたのは佐々木だった。ミスをしなければ勝てるかも知れないよ、と試合前に諦め気味な高校生に声を返してみる。

佐々木 「いや、今日はツイテない日だからやばいんだって。今日はGP2日目抜けられるくらいの運が必要だから、今の所全然足りない。どーしよう?」

 何故か運の量の心配を始める目の前の少年は、真剣そのもので筆者に訴えかけるが、答えようにも良く分からない質問にはどう返したらいいものか難しい。

佐々木 「まあ、今回負けても経験値貯まるからいいかな?」

 言い淀んでいる筆者の為に具体的な質問へと切り替えてくれたらしい。まあ、強いプレイヤーとのゲームは良い経験だからね。勝てれば尚更いいよ。なるべくポジティブな方向に誘導してあげると、満足そうにシャッフルを始める佐々木。・・・でも一つ気になる。『経験値』って貯まるとどうなるの?

佐々木 「強くなるけど?」

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 ダイスロールで勝利したのは佐々木で、少し間を空けながらも先手を選ぶ。佐々木は土地を3枚を並べて《放牧の林鹿/Grazing Gladehart》をキャストし、その間に《冒険者の装具/Adventuring Gear》を2枚プレイしていた石村は《巨大蠍/Giant Scorpion》で鹿を迎え撃つ。

 攻撃できない佐々木は《カルニの宝石/Khalni Gem》で《森/Forest》と《沼/Swamp》を回収し、宝石からのマナで《猛火の松明/Blazing Torch》を鹿に装備させる。

 4ターン目を迎えた石村は1枚だけ《冒険者の装具/Adventuring Gear》を蠍に纏わせると、《沼/Swamp》を置いてから上陸攻撃に移る。戦闘終了後に戦線に追加された《吸血鬼の夜鷲/Vampire Nighthawk》を見て眉を顰めた佐々木は、ターンが帰ってきてすぐさま松明が装備された鹿をレッドゾーン送り込むと、フルタップでブロッカーが《吸血鬼の夜鷲/Vampire Nighthawk》のみの石村が考え込む。

 1分半位経っただろうか。安全だと思って攻撃した佐々木も段々と不安な表情へと変わる。悩みに悩んだ石村は閃いたように顔を上げると、「《猛火の松明/Blazing Torch》装備されているから《吸血鬼の夜鷲/Vampire Nighthawk》じゃブロック出来ないじゃん」と、何やらカードの効果を忘れていた様子。最終的に本体へとダメージを通す事が出来た佐々木は、《ニマーナの売剣/Nimana Sell-Sword》を場に追加してターンをエンドする。

 土地を持っていた石村は、2枚の《冒険者の装具/Adventuring Gear》を《吸血鬼の夜鷲/Vampire Nighthawk》に移し替えると、上陸による強化をした上でレッドゾーンへと送り込む。

 何とか《吸血鬼の夜鷲/Vampire Nighthawk》の攻撃を防がなければならない佐々木は、《蜘蛛糸の鎧/Spidersilk Armor》で飛行をブロック可能な《ニマーナの売剣/Nimana Sell-Sword》を作り上げる。

 しかし、上陸の止まらない石村の《吸血鬼の夜鷲/Vampire Nighthawk》は常に6/7というサイズを保っている怪物である。撃ち落とす為には大きな犠牲が必要となるが、それでも止めなければゲームが決してしまう。《ニマーナの売剣/Nimana Sell-Sword》を《巨森の蔦/Vines of Vastwood》強化する事で何とか《吸血鬼の夜鷲/Vampire Nighthawk》を撃ち落とし、窮地を脱したようにも思えた佐々木だったが、新たに石村の陣営に現れた《迷いし者の番人/Shepherd of the Lost》が再び佐々木を追い詰める。

 《蜘蛛糸の鎧/Spidersilk Armor》の恩恵で、石村が上陸できなかったターンの攻撃には耐えられるが、上陸してしまうと一気に7/7というサイズにまで成長してしまうため、手がつけられない。

 一応は《猛火の松明/Blazing Torch》の起動と《マラキールの門番/Gatekeeper of Malakir》のキッカー能力で石村陣営のクリーチャーを減らすも、ガンとなっている《迷いし者の番人/Shepherd of the Lost》までは手が届かない。

 結局、序盤の《吸血鬼の夜鷲/Vampire Nighthawk》によるライフ差は埋まることはなく、やがてチャンプブロッカーが足りなくなった佐々木は土地ばかりになってしまった場を片づけた。

佐々木 0-1 石村

Game 2
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 再び先手を取った佐々木は、7枚の手札をかなり悩んだ後にキープした。対する石村はかなり恵まれた手札だったようで、佐々木のキープ宣言を聞くや否やにオッケーサインを出す。

 3ターンの間土地を置くだけで目立ったアクションを取らない佐々木に対して、好調な石村は《ステップのオオヤマネコ/Steppe Lynx》から《面晶体集め/Hedron Scrabbler》という軽快な滑り出しを見せる。

 4ターン目にようやくブロッカーとして《ニマーナの売剣/Nimana Sell-Sword》を召喚するものの、それは石村の《未達への旅/Journey to Nowhere》で退かされてしまう。後続として、更に《血の求道者/Blood Seeker》を追加したときには佐々木のライフは10まで減ってしまっていた。

 クリーチャーを引けない佐々木の手札は全て土地であり、キープした初手である『土地5、《ニマーナの売剣/Nimana Sell-Sword》、《巨森の蔦/Vines of Vastwood》』から全て土地を引き続けていたのだ。

 うんともすんとも動いてこない佐々木を訝しみながらも《沼のぼろ布まとい/Bog Tatters》を追加した石村が攻撃宣言に入ると、本当に何も持っていない佐々木に対応する術など残されているはずもなかった。

佐々木 0-2 石村

佐々木 「あー、どうやったら勝てたかなー?」

 負けた後に愚痴らず、真っ先に対戦相手に自分の問題点を尋ねる佐々木。周りのギャラリーも合わさって、主に2ゲーム目のマリガンミス等についての検討戦が始まった。そう、彼の目標は『経験値を貯める事』なのだ。このような光景がこれからも何回も何回も繰り返されて、いつかこんな言葉を聞く事になるんだろう。

佐々木 「ねえ、強くなったよ」

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