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オールカードロチェスタードラフト

オールカードロチェスタードラフト

By Shuhei Nakamura

 その年に発売された大型エキスパンションにある全てのカード、しかもフォイル仕様をすべて卓上に並べ1番から8番まで時計回りに、8番からは更に逆回りで2番まで、そして2番からはまた時計回りで今度は1番までとドラフトを繰り返す...もはや恒例行事と言った趣まであるリミッツ全カードドラフトではあるが去年から若干の変更点がある。

 これまでは8番が最初にカードをドラフトする回が終了するとドラフト順自体がブースタードラフトよろしく逆回転していたのだが今大会からはカードが無くなるまで全て時計回りへと、またカード構成について前大会では神話レアとレアが各1枚、コモンとアンコモンが各2枚であったが今大会では神話レアとレアに加えてアンコモンまでが各1枚、コモンのみが各2枚へと変更が行われた。

 このカード総枚数の変化とゼンディカーという超高速環境は果たしてどのような凶悪デッキを生み出すこととなるだろうか、予選一位通過の荒井健一郎が選択した自らの席順は8番、これによって大塚高太郎、石村信太郎、北川知明、北山雅也、栗原伸豪、安藤智幸、津場勇匡、そして荒井健一郎という座順となった。

 記念撮影後、あまりにカード数があるために配列を覚える時間が5分取られつつ改めてヘッドジャッジの梅咲からの諸注意が伝達される。

 一度オールカードドラフトを始めてしまうとおおよそ1時間半、ぶっ通しでのドラフトピックとなってしまう。またドラフト中は私語はおろか他者への情報伝達と取られかねない動きは全て禁止となるのだ

 荒井の指名により①番となった大塚が選んだカードは

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《ソリン・マルコフ/Sorin Markov》

 強力カードが連なる黒を大塚に選択された②番の石村、黒以外のカードの中から石村が選んだ最高のカードは

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《ヘルカイトの突撃者/Hellkite Charger》


 黒、赤と続き③番、北川へと順番は廻る。

 青、緑、白の中から1枚を選ぶのか、それとも2人目の黒へと参加するのか

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《水蓮のコブラ/Lotus Cobra》

 ここで考えどころとなったのは④番、北山。

 本人のプロフィールにあるようにこの大会中は常に黒を、《ソリン・マルコフ/Sorin Markov》を携えて勝ち上がってきた。そのマルコフを選択した盟友、大塚とは2人分の距離がある。北山の答えはもうひとつの強力黒カードだ

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《堕ちたる者、オブ・ニクシリス/Ob Nixilis, the Fallen》

 それを受けて⑤番栗原は迷わない。これまでに取られているは黒、赤、緑に黒。

 栗原は人気薄のどちらを取るかも迷わない。選択したのは

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《エメリアの天使/Emeria Angel》

 ⑥番に座るは安藤、その安藤が選んだのは1周目1順目ただ唯ひとりのアンコモンピックとなった。だが決してそのカードは劣っているというわけでは無い、むしろ敢えて3人目の黒へと参入してでも取る価値のあるカードなのだ

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《吸血鬼の夜鷲/Vampire Nighthawk》

 6人までの色主張が決まり、もう大分選択肢が狭められている⑦番津場が選んだのは丁度対面、準々決勝の相手である北川と同じ色だった。

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《猛り狂うベイロス/Rampaging Baloths》

 他のプレイヤーがそれぞれの色を決めるのを見てから自らの色を決める⑧番というポジションを自ら選んだ荒井が唯一手をつけられていなかったこの色のカード選ぶのは自明だ。

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《ジュワー島のスフィンクス/Sphinx of Jwar Isle》

 返す刀でのもう一枚もまた青のトップカード

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《失われた真実のスフィンクス/Sphinx of Lost Truths》

 ここからは逆時計回りで②の石村までとなる、青を2枚重ねて強烈に色の主張した⑧荒井のようにもう一度自分の色をアピールする機会が与えられる。

 2色目を早々と選ぶかそれとも色を重ねてくるか、注目のピックは

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⑦津場《巨身化/Gigantiform》

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⑥安藤《湿地での被災/Marsh Casualties》

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⑤栗原《審判の日/Day of Judgment》

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④北山《マラキールの血魔女/Malakir Bloodwitch》

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③北川《霧深い雨林/Misty Rainforest》

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②石村《噴出の稲妻/Burst Lightning》となった。

 各自それぞれの選択した色のカードを重ねて色の固定化と近隣プレイヤーへのアピールを選んだ。ここら辺は高速化の果てに単色寄りのデッキとなりやすいゼンディカー環境を踏襲している。

 だがほぼ全てのプレイヤーが似通った戦略を取る中で異彩を放ったのは③北川だ。

 自身の2手目で緑がらみながら土地カードの《霧深い雨林/Misty Rainforest》を取り3手目となる2周目2番目のピックでも《新緑の地下墓地/Verdant Catacombs》を選択、続く4手目でも《沸騰する小湖/Scalding Tarn》を選択。

 これにはザワザワとした、動揺のような、はたまた忍び笑いに似た痙攣が会場を駆け抜ける。

 もしや全てのプレイヤーが一度は考える全カードドラフトでのレア取りなのか、結論を出すのはまだ早い。

 両隣に目を移そう。


 ②石村は2周目では2枚目の《噴出の稲妻/Burst Lightning》に赤の最強コモン生物《板金鎧の土百足/Plated Geopede》で赤単路線を、出現カードが完全に固定されている全カードドラフトではとかく不足がちになる低マナ域のクリーチャーや除去の価値は値千金となる。

 ④北山は《マラキールの門番/Gatekeeper of Malakir》と《光輪狩り/Halo Hunter》を選択し黒単へと向かい...

 ⑤栗原は自カラーである白のパワーカードでかつ他者が参入への取っ掛かりとなる《未達への旅/Journey to Nowhere》を2枚ともこの手順で押さえて色の独占を磐石としつつある。

 ⑥安藤は《忌まわしい最期/Hideous End》と《見栄え損ない/Disfigure》で卓内2人目の黒単へと着々と歩を進めている。

 一方で1周目を終えて厳しい状況となったのは①大塚。

 《ソリン・マルコフ/Sorin Markov》を取って黒を主張したものの④北山、⑥安藤という2人の黒が優勢で人気薄の白は卓内で2人を賄うには厳しく見える、かといって同じく卓内1人の青は上家の⑧荒井が赤は②石村が既に表明している。

 苦悩の末、①大塚が選んだ道は《オラン=リーフの生き残り/Oran-Rief Survivalist》2枚を連続取得で緑へと参入。

 これの余波を受けたのがその直前に《変わり樹のレインジャー/Turntimber Ranger》を選択して緑同盟者系へと足がかりをかけていた⑦津場。逆順で《ウマーラの猛禽/Umara Raptor》を取り青緑へとシフトと同時に同盟者は譲らない事を明確にするがするがこれは隣の⑧荒井が青を宣言している以上、危険な賭けでもある。

 その⑧荒井もダブルスフィンクスから《マグマの裂け目/Magma Rift》《業火の罠/Inferno Trap》と取って青赤へと移行しようとしているが②石村との距離も近くこれからに向けて火種となるかもしれない。

 3周目に入ってプレイする色の宣言から具体的なデッキ構築へとより細密なものへとなっていく。まず始めに動いたのは③北川、《エルドラージの碑/Eldrazi Monument》と《ニッサ・レヴェイン/Nissa Revane》というスタンダードでも活躍する循環コンボを手中に収め上陸を絡めた緑主体デッキへと舵を切る。

 ⑦津場は《海門の伝承師/Sea Gate Loremaster》《ウマーラの猛禽/Umara Raptor》で青緑同盟者路線へ、それを受けて①大塚も《バーラ・ゲドの盗賊/Bala Ged Thief》と《ニマーナの売剣/Nimana Sell-Sword》で黒緑同盟者へと住み分けを試みる。他のプレイヤーも各自継続して宣言した色のカードを取り進みは順調なようだ。

 このドラフトも序盤戦から中盤戦へと移り変わる頃合かもしれない。

 この段階での所作がデッキの最終形に大きく現れる。

 そして一見何でもないようなところにこそ各人の志向が見え隠れする。例えば③北川の影響かフェッチランドの有用性が高い赤単の②石村、黒単の④北山がこの3周目で優先的にピックした場面や②石村が《板金鎧の土百足/Plated Geopede》の次に食指を延ばしたのは現状ほぼブロックされないクリーチャーである《刃牙の猪/Bladetusk Boar》である。

 ⑥安藤は《サラカーの匪賊/Surrakar Marauder》と《心臓刺しの蚊/Heartstabber Mosquito》に手をかけ、⑧荒井は《風乗りの長魚/Windrider Eel》、《マグマの裂け目/Magma Rift》と完全に青赤路線となった。だが3周目から4周目にかけてのベストプレイを選ぶとすれば④栗原。

 自身の9手目となる4周目の2回目のピックで《冒険者の装具/Adventuring Gear》を選択、これだけを見ると何でもないようなドラフトの一風景だが栗原の上手いところはこの次に自分がピック順になるのに間を挟むのが黒から《吸血鬼の裂断者/Vampire Lacerator》で吸血鬼デッキへと固定化を図っている③北山を通すのみのわずか2順で次の順手が来るという事、小型飛行生物という性格に加え装備とも親和性が高い白という色にとってコモンで最強の装備品である《冒険者の装具/Adventuring Gear》は喉から手が欲しいカード、かといって1枚目を取ってしまうと自分の順目が来る前に他のプレイヤーに取られてしまう。

 このタイミングでの装具はまさにベストと言えるもの。

 その上《未達への旅/Journey to Nowhere》の次は《コーの空漁師/Kor Skyfisher》とマナ拘束の薄い白いカードから優先的に押さえて2人目が参入する目を潰す手腕といい完全に卓の半球を掌握していた。

 逆にデッキの方向性になかなか目処がつけられないのが①大塚、5周目の2枚は《ムル・ダヤの巫女/Oracle of Mul Daya》と《硬鎧の群れ/Scute Mob》とカードパワー的には申し分ないのだが①大塚が目指すべき同盟者デッキに必須といえるパーツではないのが苦しいところ。

 続く6周目には意を決して《砕土/Harrow》と《ムラーサの紅蓮術士/Murasa Pyromancer》で緑黒赤の3色同盟者へと渡りをつけようとしたが緑のカードで何か動きがあると2つ上家で同じく同盟者の⑦津場か2つ下で緑の上陸をかき集めている③北川のどちらかに反応されてしまう。

 そんな八方ふさがりともいえる展開を打開しようと①大塚は一か八かの大賭けに出る、7周目の1手目で《溶鉄の尖峰、ヴァラクート/Valakut, the Molten Pinnacle》、2手目《ゴブリンの先達/Goblin Guide》を取り下家の②石村に対して覆いかぶさる形での赤へと参入する。

 現状では白を独占している⑤栗原と赤をほぼ独占の②石村が抜けていて誰かが止めなければならないという状況、それならば3人が過当競争している緑をこのまま不毛に重ねるよりは⑤栗原にがっちりと抑えられている白に比べまだ隙がある赤に活路を見出す選択をした方が勝ち上がれる可能性はある。

 そう判断してでの赤参入ではあるが中盤にして②石村・①大塚・⑧荒井と赤が3つ並ぶ異常事態となってしまった。

 ①大塚の電撃参戦に青赤の頭を痛めるのは⑧荒井も②石村も同じ事だがより深刻なのは赤単色でドラフトしている②石村。こちらも隣の⑦津場と被ってるとはいえ青いカードに逃げ道を求められる⑧荒井に対して逃げ込む先がない。

 ②石村には実害もさることながら欲しいカードがいつ取られるかわからないというプレッシャーも圧し掛かる。

 もちろんプレッシャーは②石村だけが受けるのではない。

 仕掛けた方の①大塚にも同じ分だけ、いや色換えで抱えた無駄カードを考えるとより大きく跳ね返ってくる。《松明投げ/Torch Slinger》を取れば追随され、《ゴブリンの奇襲隊/Goblin Bushwhacker》《ゼクター祭殿の探検/Zektar Shrine Expedition》が消えればこれ以上取られまいと確保に走るという現象が頻発していた。

 そんな赤争いを尻目に着実にデッキパワーを上げているのはその争いの外延部に位置するプレイヤー達、特に③北川だ。

 《ニッサ・レヴェイン/Nissa Revane》から呼び寄せる《ニッサに選ばれし者/Nissa's Chosen》を6周目と7周目に、併せてこの周回で貴重なマナ生成クリーチャーの《緑織りのドルイド/Greenweaver Druid》、8周目には《大木口の幼生/Timbermaw Larva》2枚と緑単色へと大きく変貌を遂げた。

 黒の⑥安藤は《心臓刺しの蚊/Heartstabber Mosquito》と相性抜群の《魂の階段の探検/Soul Stair Expedition》を取りコントロール志向へ、同じく黒ながら吸血鬼デッキの④北山も吸血鬼クリーチャーの優先から遂に《血の長の刃/Blade of the Bloodchief》と《血の饗宴/Feast of Blood》という吸血鬼専用カードを回収。大半のプレイヤーはデッキの仕上げへと向かいだしたようだ。

 終盤戦へと入る前にこの段階での各プレイヤーの色構成を再確認すると

①大塚ー赤タッチ緑
②石村ー赤単
③北川ー緑単
④北山ー黒単吸血鬼
⑤栗原ー白単
⑥安藤ー黒単
⑦津場ー青緑同盟者
⑧荒井ー青赤

 筆者の私感では白を完全に独占している⑤栗原が抜け出していて、それに単色で構築が出来ている②石村と③北川、④北山、⑥安藤が追随する形となっている。

 合計ピック数が20枚を超える10周目前後からはデッキの総仕上げとなる最後の2、3枚を選ぶ作業と同時にもう1つの重要な作業が残っている。

 それはサイドボード用のカードの収集、特に初戦の相手となる対面のプレイヤーに効果的なカードは場合によってはメインボードにそのまま入れて確実に準々決勝を勝ち抜くという戦略まである。

 ⑧の荒井はまさにその戦略、1ターン目からクリーチャーを展開してくる④北山の吸血鬼デッキに対して有効な《クラーケンの幼子/Kraken Hatchling》と《地鳴りの揺るぎ/Seismic Shudder》を2枚とも手中に収めている。その内の何枚かはメインボードに入っていることだろう。

 初戦が緑対決となる③北川と⑦津場は決め手となるかもしれない《ゼンディカーの彼方導き/Zendikar Farguide》が③北川の手に渡った。

 全てのプレイヤーがカットを意識しだした事も手伝って一部の人気色では色自体の枯渇も始まっている。そんな狂騒とはもはや隔世の位置にいるのが白帝国を築いている⑤栗原。

 10周目に《飛来する矢の罠/Arrow Volley Trap》と《空の遺跡、エメリア/Emeria, the Sky Ruin》、11周目《光輝王の昇天/Luminarch Ascension》と対戦相手となる①大塚に極めて有効な《崖を縫う者/Cliff Threader》、12周目に《崖を縫う者/Cliff Threader》2枚目、13周目に至っては他の7人がカットやサイドボードレベルのカードを取る中で《精霊への挑戦/Brave the Elements》と《コーの奉納者/Kor Sanctifiers》という極上の2枚と色を独占している強みが最大限に現れている。

 もちろん何枚かは他プレイヤーからのカットを受けてはいるのだが絶対的な物量の違いで⑤栗原へとカードが流れ込んでくる。唯でさえ強い⑤栗原のデッキなのにサイドボード要員も1級のカードが揃う事になりそうだ。

 17周目の段階であと数周を残しているが残りカードのラインナップを考えるともはや総評に移っても良いだろう。

 まずはなんと言っても⑤栗原。質、量共に抜けたデッキを構築したと思われる。攻防自由に切り替えれるサイドボードの柔軟性も含めて総合力で栗原に対抗するのは至難のわざといえる。

 その栗原に対抗できるとすれば《マラキールの血魔女/Malakir Bloodwitch》《光輪狩り/Halo Hunter》を要する黒単吸血鬼の④北山、赤単で火力も充実している②石村、型にはまった時の爆発力がある緑単③北川あたりか。

 果たして栗原の進攻を止める者は現れるだろうか、それは準々決勝のカバレージにて。

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