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決勝戦:栗原 伸豪(東京) vs. 石村 信太朗(埼玉)

決勝戦:栗原 伸豪(東京) vs. 石村 信太朗(埼玉)

By Daisuke Kawasaki

 シールド3回戦、ドラフト3回戦の後、オールカードロチェスターによるシングルエリミネーションを勝ち抜いて、決勝戦にコマを進めたのはこのふたり。

 「ウルトラソリッド」と呼ばれ、ガチガチのリミテッドプレイヤーとして有名な栗原 伸豪(東京)。

 そして、独自のマジック観をもち、「ライザ」の通称で知られる石村 信太朗(埼玉)だ。

 ピック終了時に最有力候補だったふたりが、それぞれのブロックで圧勝としか言いようのない勝利を積み重ねて、この席に座る。

 The Limitsの優勝を、リミテッド最強の称号を賭けて。

 このリミテッド最強決定戦The Limtsというイベントが最初に開催されたのは、2006年のことである。

 2006年の日本マジック界のトーナメントシーンと言えば、夏の日本選手権、そして冬のThe Finalsの2大イベントを森 勝洋(大阪)が優勝した、いわゆる「モリカツイヤー」という印象が強い。

 また、その後のトーナメントシーンへの大きな影響としては、今年のPlayer of The Yearである渡辺 雄也(神奈川)が森と決勝戦を戦い、惜敗したものの、大器の可能性を多くのプレイヤーに与える鮮烈なデビューを飾ったことも、大きなトピックであっただろう。。

 森 勝洋と、渡辺 雄也。

 当時の、そして現代のマジックシーンに、たしかにその名を刻み、今なお影響を与え続けているビッグネーム。このふたりの決勝戦こそが、この年のすべてだったと言ってしまってもいい。

 だが、その影で、本来ならば、2006年の、そして日本マジックのある側面の顔となるだけの実力と戦績を持ちながら、すんでの所でその権利を取り逃してしまった男がいた。

 大澤 拓也(神奈川)だ。

 2006年の、最初のプロツアーである、プラハ。ラヴニカブロックリミテッドで開催されたこの大会で、圧倒的な技術を持って勝ち抜き、日本人4人目のプロツアーチャンピオンとなった大澤。

 この年には、さらにプロツアー・チャールストンでkajiharu80(齋藤 友晴・鍛冶 友浩・八十岡 翔太)の3人がプロツアー・チャンピオンになり、日本史上最多の4人のチャンピオンが誕生したことで、プロツアーチャンピオンとしての影は薄くなってしまった。

 だが、大澤は、狭き門(当時のThe Limitsは、各地予選を抜けた16名のみで開催されるイベントだった)を抜け、初代リミッツチャンプとなる権利を獲得した。

 この年に、大澤がThe Limitsで優勝していれば、大澤は名実ともに「日本最強のリミテッドプレイヤー」として、2006年の顔となっていたはずだった。多くのプロプレイヤーの中では当時最強のリミテッドプレイヤーとして認知されていた大澤が、周知されるためのイベントとなっていた可能性があったのだ。

 しかし、結果として、初代リミッツチャンピオンとなったのは、決勝戦で大澤を倒した田崎 亮だった。翌年のプロツアー・プラハの決勝戦で敗北したことで、大澤がリミテッダーとして世界でも数枚上の実力を持っているという事実を「結果」として周知させるチャンスは失われた。

 それは、大澤の、マジックに対するモチベーションも、少しだけ失わせたのかもしれない。

 いまや、大澤は、プロプレイヤークラブでLv2以上が招待されるThe Limitsの参加権を持っていない。今年のThe Limitsを前にして、大澤が筆者に言ってきた。

大澤 「僕がThe Limitsのためにできることはないですか?」

 今年のThe Limitsでは、大澤がライターとして参加し、シールド・ドラフトの構築解説をしている。

Game 1

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 先手の石村は、2ターン目に《ゼクター祭殿の探検/Zektar Shrine Expedition》をキャスト。返して、栗原は《コーの飛空士/Kor Aeronaut》をキャスト、続くターンにも《コーの空漁師/Kor Skyfisher》を追加し、飛行でのクロックを用意する。

 対して、石村は《山/Mountain》をセットし続け、《ゼクター祭殿の探検/Zektar Shrine Expedition》の上にカウンターを載せていくのみ。

栗原 「不穏だ...」

 といいつつも、栗原は《マキンディの盾の仲間/Makindi Shieldmate》を戦場に追加する。この《マキンディの盾の仲間/Makindi Shieldmate》が《ゼクター祭殿の探検/Zektar Shrine Expedition》の生み出す7/1のダメージをプリベントする。

 栗原は飛行2体でアタックしてターンエンド。このエンドに《不安定な足場/Unstable Footing》をキャストする。

石村 「(ライフが)12対10か...」

 石村は小考の後に《髑髏砕きの巨人/Shatterskull Giant》をキャスト。この巨人が栗原の《コーの鉤の達人/Kor Hookmaster》によってタップされてしまう。

石村 「やっぱミスだったー」

 石村は頭を抱え、《カルニの宝石/Khalni Gem》でマナを回復しつつ、《尖塔の連射/Spire Barrage》で《コーの空漁師/Kor Skyfisher》を除去する。

 栗原は、《世界を鎮める者/World Queller》をキャスト。

 石村は、ちょっと盤面を冷静に俯瞰し、それから軽く頷いてカードを片付けた。

栗原 1-0 石村

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 石村 信太朗というプレイヤーに対する筆者のイメージはふたつある。

 ひとつは、「強いプレイヤーが持つ特殊なオーラを持っているプレイヤーである」という印象だ。

 スイスラウンドの2回戦でのフィーチャリングマッチにおいて、石村をよく知る高橋 純也は、石村の持つ「異質さ」を八十岡になぞらえて表現していたが、これは、言い得て妙だと思う。

 八十岡や、同じく高橋が例に挙がった森 勝洋に限らず、突き抜けた実力を持ったプレイヤーは、唯一無二といっていい雰囲気をまとっている。もちろん、まったく同じ人間などいないのだから、万人が万人のオーラをまとっているのは当たり前なのだが、高橋の言葉を借りれば「異質さ」が実力同様突き抜けているのが強いプレイヤーというものなのだ。

 ちなみに、その石村の持つ八十岡っぽさは、中島 主税(神奈川)に言わせれば「マジックの中でも他人がやらないような特殊なルールを初見で勝てるタイプの力」だそうだ。

 実際に、石村は、このオールカードロチェスターという特殊なフォーマットで、圧勝し続けてくるだけのデックを構築している。

 閑話休題。たしかに、石村には八十岡の持つような雰囲気がある。もしも八十岡が一子相伝なのであれば、伝承者は石村だろう。それぐらいに「強プレイヤーであることを思わせる異質さ」を持ち、だからこそ印象に残っているプレイヤーなのだ。

 そして、ふたつめが、にもかかわらず「なかなかブレイクしないプレイヤーである」という印象だ。

 これはもちろん筆者の主観だ。

 というのも、筆者が先日、「石村がブレイクしないなぁ」と思いながら石村の戦績を確認してみたら、思いのほか、といっては石村に失礼だが、思いのほかに石村は成績を残している。むしろ、だから筆者の中で印象に残っているプレイヤーだったわけだ。

 つまり、石村は「すでにブレイクしている」のだ。

 では、なぜ筆者の主観では「石村はブレイクしていない」印象になっていたのか。

 答えは簡単だ。石村はタイトルを獲得していないからだ。

 それくらいに、ひとつの大会で優勝するか、しないかというのは大きい。

 ここのつのトップ8よりは、ひとつの優勝なのだ。

Game 2
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 先手の石村がマリガン。そして、初動は、2ターン目の《巣穴の煽動者/Warren Instigator》。

 この《巣穴の煽動者/Warren Instigator》が《コーの飛空士/Kor Aeronaut》と相打ち、石村は《破滅的なミノタウルス/Ruinous Minotaur》をキャストする。

 《破滅的なミノタウルス/Ruinous Minotaur》は《コーの鉤の達人/Kor Hookmaster》によってタップされ、続いて石村は《髑髏砕きの巨人/Shatterskull Giant》を戦場に追加するものの、栗原は《コーの地図作り/Kor Cartographer》を追加したため、非常に攻撃しにくい盤面となってしまう。

石村 「うわぁ...」

 といっても、攻めないわけにも行かない石村は《髑髏砕きの巨人/Shatterskull Giant》を2体の2/2と相打ちさせて、《破滅的なミノタウルス/Ruinous Minotaur》を追加する。

石村 「どのレアだされても負ける...」

栗原 「じゃあ、一番生ぬるいレアを」

 と、栗原は《征服者の誓約/Conqueror's Pledge》でトークンを6体生み出す。

 そして、ここから栗原のレアが連打される。なにせ、《征服者の誓約/Conqueror's Pledge》と《世界を鎮める者/World Queller》のレアコンボが決まってしまったのだ。

 さらに《フェリダーの君主/Felidar Sovereign》まで追加され、《未達の目/Eye of Nowhere》...ではなく《未達への旅/Journey to Nowhere》が石村のクリーチャーを根こそぎにしたのだった。

石村 「これ、どうやったら勝てるんだ...」

栗原 2-0 石村

 シールド3回戦が終了し、3勝しているプレイヤーの中から、大澤にドラフトピックの記事を書くプレイヤーを選出してもらった。

 その時の選択基準は、大澤に完全に一任した。そして、大澤は純粋に自分が強いと思っていて、なおかつ、自分にとっても勉強になるくらいに、ドラフトのピックを見てみたいプレイヤーを取りたいと言った。それが、多くのプレイヤーがリミテッドを知るために見せたいプレイヤーだと。

 筆者の主観では、それは、大澤が自分以外でThe Limitsを優勝して欲しいと思えるプレイヤーだという意味にとらえられた。

 大澤の書いた記事は、この記事だ。

 大澤の選択について、あまり多くを語るのは野暮だろうと思う。

 だから、ふたつだけ。

 ひとつは、「日本でのマジック最強プレイヤー」ではなく「リミテッドの日本最強プレイヤー」という評価を、名実ともに得るにふさわしいプレイヤーは、現在、栗原で間違いはなかったということ。

 そして、ふたつめ。おめでとう、栗原 伸豪。

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