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Limits 2010 オールカードロチェスタードラフト

Limits 2010 オールカードロチェスタードラフト

By Tomohiro Kaji

 世界選手権との併催で、プロの参加こそ少なかったが、今年のLimitsにもたくさんのプレイヤーが集まった。
 その中から選ばれた8名による、恒例の「オールカード・ロチェスタードラフト」について振り返ってみたい。


 まずはどんな種目なのかを説明しよう。

 これは、普通のロチェスタードラフトとは違い、ミラディンの傷跡にある全てのカードをひとつのテーブルに並べ、1番から8番まで時計回りに、8番からは更に逆回りで1番まで1枚ずつドラフトしていく。そして延べ16枚を終えたら、次のターンとして2番から始め、また時計回りで今度は1番へ、また折り返して2番まで、ドラフトを繰り返す。

 現在のレギュレーションではなかなか味わえない、変わった競技だ。

 しかもコモンとアンコモンは各2枚づつ用意され、都合300枚以上のカードをピックすることになる。1ピックあたりのプレイヤーに与えられた時間は30秒と短いものの、大量に並べられたテーブルのカードの持ち主が決まるまでに休憩なしの約2時間という、非常に過酷なフォーマットだ。
 さらに、そのピックが終わるまでの間、周りのプレイヤー達のピックを記憶し続け、その卓内での最強デッキを構築しなければならず、優勝するのはとても難しいことだろう。

 もちろんプレイヤーに嬉しい面もあり、ここで使うカードはすべてフォイル仕様になっていて、一般的にはピックが遅い《オパールのモックス/Mox Opal(SOM)》などの構築向きな高額カードもある。世界選手権を終えた海外プレイヤーもテーブル一面に広がる日本語のフォイルカードをみてなにやら楽しそうだ。

 それでは大量の爆弾アーティファクト達に、2枚づつの除去カード、そして感染生物がすべて双子という強力カード目白押しな、普段のリミテッドでは考えられない壊れたロチェスタードラフトを追ってみよう。


 予選ラウンド一位通過の武田 浩樹が1番席に座ること希望し、順に松本 悠希、森 正剛 、新見 清晃、林 翔也、戸塚 公太、井上 徹、最後に山中 智史という並びになった。

Pick!

 栄えある第1手、武田の選択は《荒廃のドラゴン、スキジリクス/Skithiryx, the Blight Dragon(SOM)》。

1番席
武田 浩樹
takeda

 感染を目指すという強い意思を周りに伝えると、松本は《伝染病エンジン/Contagion Engine(SOM)》と、手広くいく。

2番席
松本 悠希
matsumoto

 次に森は《槌のコス/Koth of the Hammer(SOM)》と赤を主張し、毒のカードは取らない方針を明確にした。

3番席
森 正剛
mori

 続く新見は《溶鉄の尾のマスティコア/Molten-Tail Masticore(SOM)》と無色のカード。

4番席
新見 清晃
niimi

 5番席・林の選択は黒いカード《執行の悪魔/Carnifex Demon(SOM)》だが、感染の武田とは方向性とは方向を異にする。

5番席
林 翔也
hayashi

 戸塚は《エルズペス・ティレル/Elspeth Tirel(SOM)》。プレインズウォーカーのパワーは見逃せないということか。

6番席
戸塚 公太
tozuka

 7番井上は《ワームとぐろエンジン/Wurmcoil Engine(SOM)》と続き、

7番席
井上 徹
inoue

 最後となる山中は、意外にもマルチカラーである《滞留者ヴェンセール/Venser, the Sojourner(SOM)》を取る。これでプレインズウォーカー3種が出揃った。

8番席
山中 智史
yamanaka

 そして折り返しの8番、山中はブリンク能力とのシナジーとして《オキシダの屑鉄溶かし/Oxidda Scrapmelter(SOM)》をピックし、この時点で青白につづく3色目の赤を取りに行く。

 ここで、まだ《肉体と精神の剣/Sword of Body and Mind(SOM)》と無色ピックする7番井上に、一貫して白主張の《太陽破の天使/Sunblast Angel(SOM)》を取った6番戸塚。

 ここで《知性の爆発/Cerebral Eruption(SOM)》から赤に参入する5番林に、4番新見は《大霊堂の王、ゲス/Geth, Lord of the Vault(SOM)》で林に黒を被せる一方、3番森は《蔵製錬のドラゴン/Hoard-Smelter Dragon(SOM)》と赤単色の主張を続ける。

 そして重い《伝染病エンジン/Contagion Engine(SOM)》をピックした松本が《大建築家/Grand Architect(SOM)》を取り、16ピック目の武田へと《法務官の手/Hand of the Praetors(SOM)》が流れた。


単色か多色か

 このSOM環境のドラフトで最強のアーキタイプといえば感染と言われているが、武田の《荒廃のドラゴン、スキジリクス/Skithiryx, the Blight Dragon(SOM)》で意思表示したことから、他7名がそれを避けてしまいここからの武田のピックはとても面白い。

 1から8へ,8から1へと一巡したあとは、23456781とずれ、逆順へと続くわけだが、次の周回では《嚢胞抱え/Cystbearer(SOM)》×2、そしてその次は《疫病のとげ刺し/Plague Stinger(SOM)》×2と続き、除去を挟んで《死体の野犬/Corpse Cur(SOM)》×2と一直線に感染ピックを続けた。

 その間、3番森の赤単、6番戸塚の白単ピックも黙々と行われ、森は《電弧の痕跡/Arc Trail(SOM)》×2に、戸塚は《拘引/Arrest(SOM)》×2となかなかのもの。もちろん、各鍛冶に加え、「戦場に出たとき」能力付き生物の《剃刀のヒポグリフ/Razor Hippogriff(SOM)》と《オキシダの屑鉄溶かし/Oxidda Scrapmelter(SOM)》もそれぞれ持っている。

 では、この3名以外はどんな方針だったのだろうか。

 2番松本は《大建築家/Grand Architect(SOM)》から青を主色に設定し、上の感染と下の赤単ピックにはさまれながらも、《マイアの戦闘球/Myr Battlesphere(SOM)》や《パラジウムのマイア/Palladium Myr(SOM)》に、《銀白のスフィンクス/Argent Sphinx(SOM)》と、除去カラーではないもののクリーチャーのスペックで、マナ加速からのボムというプランが明確に出ている。
 しかし、青は除去がないために《決断の手綱/Volition Reins(SOM)》こそあるものの、すべてが大振りになってしまうため、そこを補うため赤の《粉砕/Shatter(SOM)》などの軽い除去をピックした。

 4番新見は《大霊堂の王、ゲス/Geth, Lord of the Vault(SOM)》と《溶鉄の尾のマスティコア/Molten-Tail Masticore(SOM)》で手広くいくかと思われたが、《微光角の鹿/Glimmerpoint Stag(SOM)》、《正義の施行/Dispense Justice(SOM)》2枚というカードパワーの低いカードから白へ参入し、その後、卓で唯一の武田の感染を止めに《屍百足/Necropede(SOM)》や緑の《テル=ジラードの堕ちたる者/Tel-Jilad Fallen(SOM)》を取りに行く。
 感染カードは感染デッキに対してとても有効なのだが、中途半端な枚数ではいわゆるライフ20、毒10を同時に目指す30点デッキになってしまいがちだ。武田とマッチアップされれば有利かもしれないが、3色になってしまった分、単色2人にはマナベースで不利になってしまった。

 5番の林は《執行の悪魔/Carnifex Demon(SOM)》スタートから全体除去の《知性の爆発/Cerebral Eruption(SOM)》という赤黒へ進んだわけだが、《皮裂き/Skinrender(SOM)》に《燃えさし鍛冶/Embersmith(SOM)》《トゲ撃ちの古老/Spikeshot Elder(SOM)》と、一枚で盤面を支配しうるカードを独占した。さらに2枚の《血まなこの練習生/Bloodshot Trainee(FUT)》と装備のシステムも内蔵している。
 カードが卓にコモン、アンコモンそれぞれ2枚であることから、除去呪文を独占することで彼のシステムクリーチャーは対処されにくくなり、松本や戸塚のようなパーマネント処理手段に乏しいデッキを構築しているプレイヤーを完封してしまいそうなピックだ。

 こういったデッキは、マナの面でトラブルを起こしやすいのだが、色の合った2枚のマイアがそれをサポートしてくれそうだ。

 そして7番の井上は、無色神話レアの《ワームとぐろエンジン/Wurmcoil Engine(SOM)》と《肉体と精神の剣/Sword of Body and Mind(SOM)》から様子を伺い、《先駆のゴーレム/Precursor Golem(SOM)》と遅い巡目の(ちなみに27手目!)《皮裂き/Skinrender(SOM)》から黒を決める。  そして、その後《決断の手綱/Volition Reins(SOM)》から青を目指すが、松本が有色のパワーカードを占有しているので難しく、武田が感染スタートしたために嫌われていた緑の非感染パーツが安いことに気づき、《真っ二つ/Slice in Twain(SOM)》から編入する。  そして、住み分けに成功した井上はマナカーブ、除去、パワーカードの揃ったバランスの良いデッキを構築し、あとはプレイ次第といったところ。

 最後の8番手の《滞留者ヴェンセール/Venser, the Sojourner(SOM)》からドラフトを始めた山中は、カードパワーの高い《不退転の大天使/Indomitable Archangel(SOM)》、《真実の確信/True Conviction(SOM)》と進むが、シナジーの構成要素が不足し、《きらめく鷹/Glint Hawk(SOM)》や《粗石の魔道士/Trinket Mage(5DN)》に不安が残る。
 通常の2倍以上のカードプールに対し、ボムと除去でないカードを早くピックすればその分周りのデッキが強くなってしまうため、最初に色で迷走した分のディスアドバンテージが響いてしまったように思う。


 さてこの8人の対戦結果がどうなったかについては、カバレージに詳しく有るのでそれを参照して頂きたい。

 オールカードロチェスタードラフトというとても稀な種目と、2時間を超えるドラフトと緊張の中、参加者の方は本当にお疲れ様でした。実際にピックするのはテーブル一面のカードを見なければならず、かなり大変そうでした・・・ 

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