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Round 6: Brian Kibler(アメリカ) vs. Brad Nelson(アメリカ)

Round 6: Brian Kibler(アメリカ) vs. Brad Nelson(アメリカ)

by Zac Hill / translated by Yonemura "Pao" Kaoru

「これにスリーブかけていいか?」

 キブラーは席に座る早々、自分のエクステンデッドのデッキを指しながら言った。

 その《包囲の搭、ドラン》デッキを使って初日の構築戦を素晴らしい成績で駆け抜けているだけに、キブラーがそのデッキに惚れ込んでいるのは理解できる。

 ネルソンは答える。

「40枚の方だろ」

「デッキの出来が悪かったのか?」

「ああ、最悪だね」

 ネルソンの謙遜は、彼の完全な構築だけでなく各マッチに向ける集中力の証明であるここ数回のイベント、すなわちプロツアー1回、グランプリ2回、アメリカ選手権における彼の連続入賞記録には似つかわしくなかった。

「静かだな」

 キブラーは、6人のプレイヤーが黙ったままシャッフルするアリーナの緊迫感を肌で感じながらそう言った。

「空気を変えるか」

「ブライアン・キブラー、ブラッド・ネルソン、ザック・ヒル、コンリー・ウッドがいるんだぜ。静かなのはもう終わりだよ」

 観客の中からそんな声が上がった。(え? 私? いや、彼が何を言ってるのか解らないですよ)


大言壮語と破顔一笑
ブライアン・キブラーとブラッド・ネルソンはプロツアーでももっとも愛想のいいプレイヤーだ

第1ゲーム

 ブライアンは自分の言葉を守り、会話はすぐにネルソンのドラフト・デッキが実際のカード《包囲の搭、ドラン》を相手にしたとしたらどれほど凶悪か(《覚醒のドルイド》、かかれ!)という話に発展していた。そしてすぐにそれぞれシャッフルし、両プレイヤーとも初手をキープ。

 ブラッドは《森》を出し、キブラーはデッキに4枚入っている《歴戦の歩兵》の1体を呼び出す。ネルソンは《歴戦の歩兵》を《獣相のシャーマン》で封じたが、返しにキブラーが《山》を出して《稲妻》を放ったことで塵に帰らされる。そして2体目の《歴戦の歩兵》が姿を見せて、ネルソンのライフは残り19点に。

 ブラッドの第3ターン、《放蕩紅蓮術士》が戦場に登場。キブラーのタフネス1クリーチャー軍団の大ピンチが訪れる。

「これ、どうする?」

 ブラッドはカードを1枚つまみ上げて読むフリをしながら問いかける。

「どうもしねえよ」

 ブライアンはそう言い、それを墓地に放り捨てた。戦場に残り続けることはできなくなっていた。

 キブラーはアンタップし、土地を出して《野生のグリフィン/Wild Griffin》[M11]を呼び出し、2点で攻撃してターンを返す。ブラッドは《耕作》を唱えて《森》と《山》を出し、《歴戦の歩兵》を《放蕩紅蓮術士》で片付けると、キブラーは追い詰められてしまった。

 キブラーはなおも戦意を失わず、ネルソンを攻撃して残り14点にまで削り、《テューンの戦僧》を出してプレッシャーをかけていく。ブラッドは6枚目の土地を出し、ため息をついた。

「うまくねぇな」

 ブラッドは《トリスケリオン》を唱え、ターンを返す。

「ああ。ミスしたつもりはないんだけどな」

 ブライアンは4枚目の土地を出し、次の一手を考える。

「嫌なカード持ってそうだな......《紅蓮地獄》は?」

 この戦闘が、ゲームの趨勢を定める。

 ブラッドは、コンバット・トリックに巻き込まれて《放蕩紅蓮術士》の起動型能力も《トリスケリオン》のカウンターも無駄にしたくなかった。キブラーが早く仕掛けすぎれば、ネルソンの直接ダメージで部隊を失う危険性がある。そして、彼は決断した。《野生のグリフィン》だけで攻撃し、《歴戦の歩兵》をアンタップのまま残してブラッドのライフは残り12点。

 ブラッドはキブラーの終了ステップに《歴戦の歩兵》を除去し、自分のターンに《トリスケリオン》で攻撃してブライアンのライフを16点に。ネルソンは《峡谷のミノタウルス》を出してプレッシャーをかけるが、キブラーは《平和な心》でそれに対処する。キブラーは再び、今度は《テューンの戦僧》と《野生のグリフィン》の2体で攻撃する。ネルソンは《トリスケリオン》のカウンターで《野生のグリフィン》をたたき落とした。キブラーはそれに対応して《鼓舞する突撃》を唱え、ネルソンはさらに対応してもう1つ《トリスケリオン》のカウンターを取り除き、続けて《放蕩紅蓮術士》を使って《野生のグリフィン》を除去しきる。戦闘が終わって、ネルソンのライフは残り8点だ。

 ネルソンはアンタップし、《トリスケリオン》で攻撃してから《大蜘蛛》を唱えて《テューンの戦僧》への備えにする。ここでキブラーが引いてきたのは《目潰しの魔道士》、即座に唱える。キブラーの終了ステップにネルソンは《放蕩紅蓮術士》を起動してキブラーのライフを13点にし、自分のターンに入って《大蜘蛛》で攻撃してライフを11点にまで減らす。ブライアンは《トリスケリオン》のカウンターと《放蕩紅蓮術士》の能力を使って《目潰しの魔道士》を除去したが、巨大な《ヤヴィマヤのワーム》に行く手を遮られる。

「行く手ナシか」


巨大な壁を前にしたキブラーの顔

 キブラーは《テューンの戦僧》で攻撃し、ネルソンは《トリスケリオン》でチャンプ・ブロックし、キブラーが持っているかもしれない《溶岩の斧/Lava Axe》[M11]のようなものに備えてライフを守る。そして《ヤヴィマヤのワーム》と《大蜘蛛》がキブラーに襲いかかってキブラーのライフを3点まで削ったところでターンを返す。キブラーが再び《テューンの戦僧》で攻撃するも、ネルソンは黙ってそれを《放蕩紅蓮術士》でブロックし、キブラーのライフを残り1にする。出口を失って、キブラーは戦場を片付けた。

ネルソン 1 - 0 キブラー

「ウソはついてないぜ。もう少しそのデッキを使って欲しかったな」

 ネルソンの言葉に、キブラーは答えて言った。

「《稲妻》を《獣相のシャーマン》に打ってなければ勝ってたぜ......多分」


第2ゲーム

 キブラーはこのゲームをマリガンから始めるハメになった。

「ブラッド・ネルソンのブン回りを見届けるチャンスだぜ」と、自分の手札を見ながら言うブラッド。

 キブラーは6枚の手札をキープすると、《平地》を戦場に出した。ネルソンは《森》から《ラノワールのエルフ》。

「覚悟はいいか?」

 ネルソンは言う。

 キブラーの第2ターンに《テューンの戦僧》が出てくるものの、ネルソンはさらに《ラノワールのエルフ》、そして《獣相のシャーマン》。《テューンの戦僧》が攻撃に入ると、ネルソンは即座に《獣相のシャーマン》を叩きつける。

「なんだありゃ」と横からコンリー・ウッズが口を挟む。

 2体の「熊」が文字通り相打ちになると、キブラーは《歴戦の歩兵》と《先兵の精鋭》を並べ、一方のネルソンは《棍棒のトロール》を出して戦力を整えていく。

 《先兵の精鋭》が攻撃し、《歴戦の歩兵》が強化してネルソンのライフは17点になる。ネルソンは火力呪文を警戒して、《棍棒のトロール》をブロックに回さなかったのだ。ネルソンはアンタップし、深慮の仮面を脱ぎ捨てて全軍突撃してキブラーのライフを14点に削る。そして今度は本当の熊、《ルーン爪の熊》を呼び出してターン終了。


手、カード、ヒゲ。ネルソンの顔は3重に守られている

 キブラーはカードを引き、少し考えると、マナを全てタップしてネルソンの《ラノワールのエルフ》2体に《火の玉》を打ち込む。土地が3枚で止まってしまっているネルソンには強烈な一撃だ。《棍棒のトロール》は相変わらず猛威を奮って、ネルソンはさらに攻撃を仕掛けてキブラーのライフを10点に削る。キブラーはカードを引いて再び長考してから、《山》を出してターンを返す。《先兵の精鋭》と《ルーン爪の熊》を相打ちにするのはもったいないと考えたのだ。そして、再びネルソンの《棍棒のトロール》が攻撃を仕掛ける。

「ブロックなしだ」

 キブラーの宣言を受け、ライフは残り6点に。

 キブラーの次のターン、引いてきたのは《突撃するグリフィン》。ネルソンは相変わらず土地3枚から動かないが、そこでとっておきの《紅蓮地獄》がうなりを上げ、キブラーの戦力を一掃する。キブラーは《投げ飛ばし》で《棍棒のトロール》をタップさせるが、《テューンの戦僧》や《歴戦の歩兵》はネルソンが新しく出してきた《覚醒のドルイド》を防ぐことはできなかった。《森》、《棍棒のトロール》、《覚醒のドルイド》が攻撃し、キブラーは生き残っているクリーチャー両方でチャンプ・ブロックを強いられて残り1点。ここでキブラーが引いてきたのは......。

「本体に《スズメバチの一刺し》」

 ネルソンの言葉がキブラーの手を止め、回りから歓声が上がったのだった。

ネルソン 2 - 0 キブラー

「『どうしようって?』とは言いたくなかったな」

 試合後、ネルソンは観客に向かって言った。選手たちは握手を交わし、そして戦場を立ち去ろうとしていた。

「インスタントでやっとけばよかったな」

 笑いながらキブラーはそう言い、カードを片付けるのだった。

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