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Round 16: 渡辺 雄也(神奈川) vs. Kyle Boggemes(アメリカ)

Round 16: 渡辺 雄也(神奈川) vs. Kyle Boggemes(アメリカ)

By Daisuke Kawasaki

 Round 15が終了したときに、齋藤 友晴(東京)がこんな事を言っていた。

齋藤 「今回ほど、日本がぼろ負けしたプロツアーって久しぶりじゃないですか?4~5年ぶりくらいじゃないですかね」

 Round 15が終了した時点で、トップ8の可能性を残した日本人プレイヤーはもはや残っていない。だが、日本人がトップ8に入賞しなかった、というだけで言えば、2008年のプロツアー・クアラルンプールや2009年の世界選手権のように、ここ数年でも全く無かったわけではない。

齋藤 「今回は、もっといいデッキがいくらでもありましたね。あと、メタゲームが違いすぎました。今回のデッキはプレイングが難しくて、すごく疲れるんですけど、その上で全く知らないデッキや、知ってはいたけど、より調整が進んだデッキと当たり続けたんで後半集中力が切れちゃったのかもしれません」

 過去において、日本と欧米の情報格差が叫ばれたことが多くあった。《落とし格子/Portcullis》の例を挙げるまでもなく、シークレットテックの前に、多くの日本人プレイヤーが涙をのんできた。

 だが、ここ数年では、むしろ日本のテクニックが海外勢を圧倒してきていた。齋藤は、近年で言えばその申し子と言っていいだろう。

 今回は、その齋藤ですら、情報量で追いついていない、そういう意味で日本勢が完敗したプロツアーだったと言っていいだろう。

齋藤 「いっそ、すがすがしいですよね。外人つえー!って。昔に戻ったみたいです」

 だが、齋藤のデックも、海外勢のデックに劣っていた、というわけではない。

 このラウンドでは、上位4卓がID(合意の引き分け)を行ったため、齋藤製のデックを使い、トップ32入賞を目指す渡辺 雄也(神奈川)のマッチをお届けしよう。

r16_both.jpg

Game 1

 2ターン目に《タルモゴイフ/Tarmogoyf》をキャストし、3ターン目には《魔力変/Manamorphose》経由で2体目を追加した渡辺。対するKyleは、《台所の嫌がらせ屋/Kitchen Finks》で時間を稼ぎつつ、《調和/Harmonize》で手札を増やす。

 さらにKyleがプレイした《探検/Explore》《不屈の自然/Rampant Growth》とプレイするのだが、これを渡辺は2連続の《マナ漏出/Mana Leak》で封じ込め、ゲームの主導権を握り始める。

 渡辺はさらにKyleの《台所の嫌がらせ屋/Kitchen Finks》を《謎めいた命令/Cryptic Command》で打ち消すと、2体の《タルモゴイフ/Tarmogoyf》で攻撃しKyleの残りライフは5。

 この5点を《稲妻/Lightning Bolt》と《罰する火/Punishing Fire》で削りきって、まずはGame 1を勝利。

渡辺 1-0 Kyle

 スイッチングサイドボードを搭載した渡辺のデック。

 実際に、このラウンドではどのようなサイドボーディングをしたかをみてみよう。

In

4 《田舎の破壊者/Countryside Crusher》
3 《否認/Negate》
2 《瞬間凍結/Flashfreeze》

Out

3 《紅蓮術士の昇天/Pyromancer Ascension》
2 《時間のねじれ/Time Warp》
4 《マナ漏出/Mana Leak》

 1枚の《紅蓮術士の昇天/Pyromancer Ascension》を残した事に関して、「《時間のねじれ/Time Warp》あたりのパーツを残すよりはましだから、1枚残しましたけど」と語る渡辺。

 また、クリーチャーはほぼ火力で除去でき、戦場に残らないため、《否認/Negate》をメインに《マナ漏出/Mana Leak》を抜くというサイドボーディングを行っている。

Game 2

r16_watanabe.jpg

 後手の渡辺は《思案/Ponder》をプレイし、Kyleは2ターン目に《不屈の自然/Rampant Growth》をプレイ。

 続いてKyleは《血編み髪のエルフ/Bloodbraid Elf》をプレイ。この続唱でめくれたのが《探検/Explore》。《血編み髪のエルフ/Bloodbraid Elf》は《罰する火/Punishing Fire》で除去されたものの、《探検/Explore》の能力で2枚目の土地をプレイし、《大祖始の遺産/Relic of Progenitus》をプレイする。

 渡辺はここで2枚目の《思案/Ponder》をプレイ。返しでKyleは《台所の嫌がらせ屋/Kitchen Finks》をプレイすると、《巨森、オラン=リーフ/Oran-Rief, the Vastwood》で+1/+1カウンターをのせる。さらに《大祖始の遺産/Relic of Progenitus》のタップ能力を使用。これに対応する形で渡辺は《沸騰する小湖/Scalding Tarn》を使用、これを追放する。

 渡辺は4マナを残してターンを終了。この4マナでKyleのプレイした《調和/Harmonize》を《謎めいた命令/Cryptic Command》でカウンターし、さらに《台所の嫌がらせ屋/Kitchen Finks》を手札へと戻す。そして、返しで《田舎の破壊者/Countryside Crusher》をプレイ。

 一方のKyleは、渡辺に2マナしかないこの隙に3マナ残して《風景の変容/Scapeshift》をプレイするのだが、これは《否認/Negate》される。渡辺のアップキープに土地が3枚墓地に落ちて、《田舎の破壊者/Countryside Crusher》は6/6に。これがアタックしてKyleのライフは19。回答を求めて、Kyleは《大祖始の遺産/Relic of Progenitus》の能力で墓地をすべて追放する。

 ここでプレイされた《台所の嫌がらせ屋/Kitchen Finks》はカウンターせず、《明日への探索/Search for Tomorrow》もスルー。《田舎の破壊者/Countryside Crusher》がさらにひとつ大きくなって、《台所の嫌がらせ屋/Kitchen Finks》がチャンプブロックしたことでKyleのライフは23に。

 《思案/Ponder》で《否認/Negate》を手に入れている渡辺。《罰する火/Punishing Fire》で《台所の嫌がらせ屋/Kitchen Finks》を除去するが、ここで《大渦の脈動/Maelstrom Pulse》が《田舎の破壊者/Countryside Crusher》に打ち込まれる。

 《風景の変容/Scapeshift》を打たれる心配があるので、渡辺は《田舎の破壊者/Countryside Crusher》を墓地に置く。だが、渡辺はすでに《思案/Ponder》で1枚だけ残した《紅蓮術士の昇天/Pyromancer Ascension》が山札の上にあることを知っている。

 これをプレイすると、《罰する火/Punishing Fire》によって、カウンターをのせる。《思考の大出血/Thought Hemorrhage》を《謎めいた命令/Cryptic Command》でカウンターすると、《タルモゴイフ/Tarmogoyf》をプレイしてターンエンド。

 そして、Kyleのターンエンドにプレイした《罰する火/Punishing Fire》でクエストが達成される。

 手札が土地しか無かったKyleは、渡辺に手を差し出したのだった。

渡辺 2-0 Kyle

 Brad Nelson(アメリカ)がトップ8入賞を決めたことにより、齋藤がトップを走っていたPoYレースが大きく動くこととなった。

 ここまで5年間、渡辺を含み日本人がPlayer of the Yearを獲得してきた。

 今年、12月に行われる千葉の世界選手権。

 果たして、そこで、歴史はどのように積み重ねられるのか。

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