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準々決勝: Michael Jacob(アメリカ) vs. Brian Kibler(アメリカ)

準々決勝: Michael Jacob(アメリカ) vs. Brian Kibler(アメリカ)

by Zac Hill / Translated by YONEMURA "Pao" Kaoru


 ブライアン・キブラーは大騒ぎだ。昨シーズンの「カムバック」から、3回のプロツアーでトップ8に進出し、そのうち1回は優勝。グランプリでも1回優勝しているという事実は、ただの目安に過ぎない。彼の対戦相手マイケル・ジェイコブは常に成績をキープし続けているプロプレイヤーで、今回初の個人戦トップ8だが、アメリカ代表チームに2回選ばれ、2008年にはチーム戦で世界王者にも輝いている実力派だ。

 この2人はこのイベントに向けて、ともにプレイテストを重ねてきた。つまり、お互いの手の内は完全に判っているということになる。キブラーは、ブラッド・ネルソンをトップ8へと導いた黒白緑の《包囲の搭、ドラン》を使った、今は「Treehouse」と呼ばれるようになったデッキを使っている。一方のマイケル・ジェイコブは、ベン・ルービンが使っていたのと同じ、《残酷な根本原理》コントロール・デッキを使っている。


第1ゲーム

 両者マリガンなし。

「白枠だぜ」

 ジェイコブは《沸騰する小湖》で《島》を出しながらそう言い、《定業》を唱えて1枚を上に残した。

 キブラーは《反射池》を出し、それを戻す。ジェイコブは《定業》をもう1枚唱え、そして長考に入った。

「まずかったか?」

「かなりね」

 問いかけるキブラーに、ジェイコブは答える。そしてカードの1枚を上に残し、それを引いてから、もう1枚の《沸騰する小湖》を割って《島》を出してくる。そして、さらなる《定業》で見た2枚は両方ともライブラリーの下へ。

「《定業》で《定業》引いて、その《定業》はハズレってか」

 キブラーは祈り混じりにそう言った。


異なるスタイルを極めたアメリカ人2人
マイケル・ジェイコブとブライアン・キブラー

 キブラーの2枚目の土地《黄昏のぬかるみ》が緑マナ1点と黒マナ1点を出す。黒マナを使って《強迫》を唱え、《マナ漏出》を捨てさせる。緑マナは《ツリーフォークの先触れ》を呼び出し、《つぶやき林》をライブラリーの上に準備する。キブラーの選択は次の第3ターンに《包囲の搭、ドラン》が出てくることを想像させるもので、ジェイコブは正解を探して頭をひねったが、結局、《山》を出すだけでターンを返した。

 キブラーは《ツリーフォークの先触れ》から《つぶやき林》を出すのを止め、代わりに《思考囲い》を唱えた。《包囲の搭、ドラン》はまだ来ていないのかもしれない。《マナ漏出》をトップデックしていたジェイコブは、手札にある《精神を刻む者、ジェイス》を守るために《マナ漏出》を唱える。次のターンに土地を引けば《精神を刻む者、ジェイス》を出すことが出来るのだ。次のターン、土地を引かなかったジェイコブは《定業》を唱えて土地を探そうとしたが益なし。キブラーは《沼》を出し、もう1枚の《思考囲い》を唱え、ジェイコブの手札に《マナ漏出》がもう1枚あるのを横目に《精神を刻む者、ジェイス》を捨てさせる。その後《壌土のライオン》を唱えてからターン終了だ。

「俺の《壌土のライオン》は1/1にはなり得ないぜ」

 そう言うキブラーの白マナ源は、森でもある《つぶやき林》だけなのだ。

 ジェイコブは4枚目の土地《反射池》を出したものの唱える呪文はなし。キブラーは《壌土のライオン》で攻撃すると、《樹上の村》をプレイする。ジェイコブは《崩れゆく死滅都市》を出すものの、やはり何も行動はナシ。キブラーは《樹上の村》と《壌土のライオン》で攻撃し、ターンを返す。どちらのプレイヤーも決め手になるようなカードを引けないでいるようだ。

 ジェイコブは再びカードを引くだけでターン終了。キブラーが《思考囲い》を唱えると、ジェイコブは対応して《ザルファーの魔道士、テフェリー》を唱える! 《思考囲い》で《墓所のタイタン》が墓地に送られ、タップアウト状態のジェイコブを蹂躙すべく《カメレオンの巨像》が降臨する。

 ジェイコブは土地をアンタップして手を止める。やがて、《罰する火》を《カメレオンの巨像》に打ち込み、引いてきたばかりの《燃え柳の木立ち》を出すことで《罰する火》を手札に戻し、再利用して《カメレオンの巨像》を倒した。キブラーは《遍歴の騎士、エルズペス》を使い、《壌土のライオン》を強化して攻撃して6点、ジェイコブのライフは残り6。《ツリーフォークの先触れ》で《包囲の搭、ドラン》を持ってくると、ジェイコブは綱渡り状態になってしまった。

 ジェイコブは《ザルファーの魔道士、テフェリー》で攻撃し、キブラーを驚かせる。キブラーは次のカードを引き、何が起こったのかを再確認しようとする。《遍歴の騎士、エルズペス》は《壌土のライオン》を宙に舞わせ、《樹上の村》はクリーチャー ― 類人猿になり......そして、終わり。

キブラー 1 - 0 ジェイコブ

「4枚目の土地を引いてれば、勝ってたはずだ。そうじゃなかったら《ザルファーの魔道士、テフェリー》を引いたターンにそっちが《思考囲い》を引いてなくても勝ってたはずだ」

「そうだろうね。だが、一般論としてはこっちがいいと思う。昨晩、ルービンと調整したんだけどね。その前にも山ほどやった。周りのみんなは言うのさ、《包囲の搭、ドラン》対グリクシスなんてテストしても、どっちもほとんどいないだろ、って。いや、やっといてよかったよ」

 ジェイコブの言葉にキブラーは応える。

「それじゃ、グッドラック」

 新しい手札を引きながらのキブラーの言葉に、ジェイコブは答えた。

「そうだな」

 ジェイコブは手札をキープ、一方のキブラーはマリガンする。

「おい、静かだな! 誰か楽しんでないのか?」

 ジェイコブの超えに、隣のテーブルからポール・ライツェルの声。

「俺の相手はジャンドだぜ。どう思う?」


第2ゲーム

 キブラーは6枚でスタート。ジェイコブは《崩れゆく死滅都市》を出し、キブラーの初手は《反射池》。ジェイコブは第2ターンに《定業》で1枚を残し、《燃え柳の木立ち》をタップして出した無色マナから《大祖始の遺産》を唱えた。

「なんだこれ」

 もう1枚の《反射池》を出しながら言うキブラー。ジェイコブは《涙の川》を出してターン終了。キブラーは何もできず、ジェイコブは《大祖始の遺産》を生け贄に捧げてカードを引くと、《反射池》を出してターンを返す。何も出来ないまま、さらに《謎めいた命令》で《反射池》を手札に戻されて1枚でなく2枚を捨てるハメになったキブラーは言う。

「これが練習だったらここで投了するね」

 ジェイコブは《忍び寄るタール坑》でクロックを刻みながら、《定業》でアドバンテージを確保していく。キブラーはようやく色マナを出せる土地を手に入れ、《タルモゴイフ》を唱えたがこれは《瞬間凍結》。ジェイコブが6枚目の土地を出し、《墓所のタイタン》が戦場に現れる。キブラーが魔力を振り絞って唱えた《強迫》で《謎めいた命令》を落とし、2枚目の《タルモゴイフ》を呼び出す。《忍び寄るタール坑》が生命を得、ジェイコブの攻撃が始まる。キブラーは《タルモゴイフ》でトークンをブロックし、11点のダメージを受けて残りライフは9点。

「何を引いても無理だな」

 キブラーは投了した。

キブラー 1 - 1 ジェイコブ

「よし。そっちが事故ってこっちが事故って、これからマッチ開始だな」

 キブラーはそう言うが、ジェイコブは黙ってシャッフルを続ける。

「《墓所のタイタン》はヤバいわ」

「1枚入れてるのには理由があるんだ。複数入れたら制御不能さ」

 しゃべりのスイッチが入ったキブラーは、マジックオンラインで《ミラーリの目覚め》+《黄金の願い》+《旗印》+《ワームの突進》でたたき出した最大ダメージの物語を始めた。「大げさに言ってるんじゃないぜ、文字通り、文字通りだ。ダメージの計算に翌日までかかったのさ」 オチがついたところで、第3ゲームを始める二人。

「グッドラック」

 そう言ってゲームを始めようとするキブラー。

「あー......うん、そっちもね」

 おそるおそる答えるジェイコブだった。


第3ゲーム

 キブラーはマリガン。

「このスリーブが悪いんだ、きっと。マリガンしまくりじゃねえか」

 引き直した6枚もそういいものではなかったようで、「マジかよ!」と言いながら再度引き直すキブラー。

「なんだよこれ、どっちもちゃんと回ってないじゃねえか。ターンを回してるだけで何も......」

 ジェイコブは7枚でキープ。


笑うと言うより「キブラーする」とでも言うべきいい笑顔。

 キブラーが《樹上の村》を出すと、ジェイコブは《崩れゆく死滅都市》を出す。キブラーがもう1枚《樹上の村》を出し、ジェイコブはマナ2点を残してターン終了。キブラーが第3ターン、第4ターンと続けて《樹上の村》で攻撃し、ジェイコブはただ土地を並べるだけだ。

 そしてジェイコブの第4ターン、ジェイコブが唱えたのは《精神を刻む者、ジェイス》だった。

「+2で、そっちのライブラリーを見るよ」

 キブラーは盤上に並ぶ2枚の《樹上の村》と《森》を見下ろした。そして、《精神を刻む者、ジェイス》に《樹上の村》1体で攻撃し、カウンターを2つにまで減らす。ジェイコブは再びキブラーに消術をかけ、カードをライブラリーの底に送ると《忍び寄るタール坑》を唱える。再び《樹上の村》が《精神を刻む者、ジェイス》に攻撃したが、今度はジェイコブの《忍び寄るタール坑》がそれをブロックする。

 アンタップ後、ジェイコブは再びキブラーの運命を操作する。そして、そのカードをライブラリーの上に残した。

「残すのかよ」

 キブラーがぼやく。

 ジェイコブは続けて《大祖始の遺産》を唱え、土地をプレイできなかったキブラーは《聖遺の騎士》を捨てる。ジェイコブは《定業》を2枚続けて唱えて、それ以上何もせずにターン終了だ。

 キブラーはカードを引く。「これかよ」言いながら《ツリーフォークの先触れ》を唱える。持って来た《つぶやき林》はおそらく《精神を刻む者、ジェイス》が底に送ってしまうだろう。

 ジェイコブは再び《定業》を唱えてカードを手に入れると、《精神を刻む者、ジェイス》が予想通り《つぶやき林》を投げ捨てる。

「もう充分だ」

 そう言って、キブラーは投了した。

ジェイコブ 2 - 1 キブラー

 カメラの切り替えを待っている間に、キブラーはヘッドホンを耳に付けた。

「一曲聴いてもいいかな。『Take a Momentすぐだからさ』」

(『Take a Moment』は曲の名前でもある。キブラーは洒落が好きだ)

「俺のには『Eye of the Tiger』が入ってるんだ。Jポップも入ってる。キングダムハーツのテーマはいいよね!」

 間違いなくマイケル・ジェイコブです。ええ。


第4ゲーム

「ホントにマリガンしなくてよさそうだ」

 キブラーがそう言い、ジェイコブも手札をキープする。キブラーは《霧深い雨林》を生け贄に《つぶやき林》を出し、《ツリーフォークの先触れ》を唱えてもう1枚の《つぶやき林》をライブラリーに置いた。

「ホントに呪文を唱えられそうだ!」

 キブラーはそう言った。

 ジェイコブは《崩れゆく死滅都市》をそっと出した。キブラーは《樹上の村》と2体目の《ツリーフォークの先触れ》を出し、《包囲の搭、ドラン》をライブラリーに置く。ジェイコブは《滝の断崖》をプレイし、《マナ漏出》の体勢を整えてターンを返した。

 キブラーのターン、《包囲の搭、ドラン》は無事解決されて、キブラーは6点で攻撃する。しかし《包囲の搭、ドラン》に2発の《稲妻》が突き刺さり、《ツリーフォークの先触れ》はダメージを与えられなくなった。ジェイコブは《定業》を唱え、《山》を出すが、キブラーの手にはもう1枚の《包囲の搭、ドラン》があった。ジェイコブは《定業》で《マナ漏出》を引いてくるものの、キブラーは安全圏を確保できていた。

 ジェイコブの第4ターンに《精神を刻む者、ジェイス》が現れ、《渦まく知識》能力を起動する。最初はキブラーの圧勝かに見えたゲームが、少しずつ彼の手から滑り落ちていこうとしていた。このターン、対抗策を手に入れなければならない。

「まだ終わりじゃないぜ」

 キブラーはもう1枚の《包囲の搭、ドラン》をトップデッキしていた。《ツリーフォークの先触れ》の1体が《精神を刻む者、ジェイス》に、もう1体がジェイコブに襲いかかり、ジェイコブのライフは残り17点になる。ジェイコブは《燃え柳の木立ち》を出して終了。

「攻撃宣言するぜ」

 キブラーはアンタップしてからそう言った。驚くべきことに、ジェイコブはライフが6点まで減っても反撃の手段を持っていないように見えた。実際の所、彼の作戦は《神秘の指導》で《弱者の消耗》を持ってくるというもので、キブラーのターンの最後に実際にその行動を取ったのだが、戦場には黒マナ源は1つしかなかった。

 ジェイコブはアンタップし、そして《ヨーグモスの墳墓、アーボーグ》をプレイする。

「これが俺の秘密の作戦さ」

 そう言ってターンを返す。キブラーはカードを引き、《思考囲い》を唱える――と、ジェイコブは対応して《弱者の消耗》を唱えた。キブラーは《残酷な根本原理》を捨てさせ、《樹上の村》で攻撃してジェイコブのライフは残り3点。

 ジェイコブは《定業》でライブラリーの上のカードをそのまま残し、引いてきたのは《定業》。ジェイコブは《連合の秘宝》を唱え、《定業》を唱え、カード2枚を底に送った。《樹上の村》が攻撃してくると、ゲームはそこで終わった。

「樹よ行け、行け、行け!」

 キブラーが叫ぶ。

「呪文が唱えられるのがこんなに嬉しいなんて!」

ジェイコブ 2 - 2 キブラー

 プレイヤーたちはゆっくりと、最後となる第5ゲームに向けてシャッフルをしていた。

「映ってるぜ。早くしろって思ってるんじゃないか」

 ジェイコブが言う。

「なあに、もうちょっとおしゃべりしてようぜ」

 キブラーは答えた。


第5ゲーム

 ようやく2人はマジック・ザ・ギャザリングをプレイすることに決めた。どちらもマリガンはなしで、ジェイコブは《定業》とリバイズド版の《島》からゲームを始めた。

「ちっぽけじゃないとな」

 《定業》で1枚残した。キブラーは《つぶやき林》から《ツリーフォークの先触れ》を出し、もう1枚の《つぶやき林》をライブラリーに置く。ジェイコブは《崩れゆく死滅都市》を出してから《大祖始の遺産》を唱えた。キブラーは《樹上の村》を出し、《ツリーフォークの先触れ》で《包囲の搭、ドラン》を探した。

 ジェイコブはもう1枚の《崩れゆく死滅都市》を出し、2マナ残した状態にする。キブラーの《包囲の搭、ドラン》は《マナ漏出》で打ち消された。そしてジェイコブは4枚目の土地、《燃え柳の木立ち》を出した。キブラーの土地は3枚で止まったが、《聖遺の騎士》が登場する。

 ジェイコブはキブラーのターンの最後に手を止める。

「俺のクリーチャーを一掃する方法を考えてるのか?」

「いや」

 ジェイコブは《大祖始の遺産》を自分に使い、《罰する火》を《聖遺の騎士》に放つ。そして《燃え柳の木立ち》で回収してからアンタップし、《定業》を唱えてカードを1枚残してターン終了だ。

「4枚?」

 キブラーが問いかける。彼は《つぶやき林》から1点のダメージを受けて《思考囲い》を唱え、ジェイコブの手札には《神秘の指導》、《マナ漏出》、《罰する火》があることを確認する。《神秘の指導》を捨てさせて、ジェイコブのライフは残り14点。キブラーのターン終了時に、ジェイコブは《大祖始の遺産》を使って墓地のカード1枚を取り除き、《罰する火》を使って差し引き1点のダメージを与える。

 ジェイコブはアンタップし、《精神を刻む者、ジェイス》を唱える。そして忠誠カウンターを5個に増やし、キブラーのライブラリーの一番上を見てそのまま残す。

「こりゃいいカードだ」

 キブラーはそのカードを引いてそう言った。

「考えがあるんだ。もうライフはそう残ってないからね」

 ジェイコブのその答えを聞いて、キブラーは言った。

「ああ。なんか考えてるってツラしてるからな」

 《精神を刻む者、ジェイス》を狙ったキブラーの《大渦の脈動》は《マナ漏出》で打ち消され、キブラーのライフは残り12点に。


キブラー曰く、ジェイコブは何か企んでいる。

 ジェイコブは自分のターンに《精神を刻む者、ジェイス》の《渦まく知識》能力を使い、《忍び寄るタール坑》を戦場に出す。そして、《大祖始の遺産》で《大渦の脈動》をキブラーの墓地から取り除いてからターンを返した。

「勝てる気がしないな」

 キブラーはそう言ってため息をつき、カードを引いてターンを返す。ジェイコブはキブラーのターン終了時に《神秘の指導》をフラッシュバックで使い、新しいのを1枚手に入れる。

 ジェイコブは《残酷な根本原理》で引き金を引き、キブラーのライフを8に減らす。そして《精神を刻む者、ジェイス》でキブラーのライブラリーを確認してそのままに残す。

 キブラーは絶望的な盤面を見ながらアンタップした。

「一撃でも食らわしてやる」

 キブラーはそう言うと、《樹上の村》で突撃を敢行する。ジェイコブはライフを失って残り22点......そこで、キブラーは手を挙げた。

 マイケル・ジェイコブがブライアン・キブラーを3-2で下し、準決勝進出!

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