マジック:ザ・ギャザリング 日本公式ウェブサイト

イベントカバレージ

決勝: Paul Rietzl(アメリカ) vs. Brad Nelson(アメリカ)

決勝: Paul Rietzl(アメリカ) vs. Brad Nelson(アメリカ)

By Yusuke Yoshikawa

 本大会を語るキーワードをひとつ挙げるとすれば、それは間違いなく「殿堂」ということになるだろう。

hall of fame banner

 「鳳凰」Kai Buddeの復活がその最たる例としてあり、Brian Kiblerは殿堂入り発表直前にアピールするかのごとくの大活躍を見せた。そしてエクステンデッド構築戦を席巻したのもGabriel Nassifによる「殿堂白単」であった。

 決勝に先立って、本年度の「マジックの殿堂」入りプレイヤーがアナウンスされた。
 Gabriel Nassif、Brian Kibler、齋藤 友晴。
 彼ら3人に共通することは、いずれも今まさに活躍を続け、実績を残し続けていることである。自らトップ8に入賞したKiblerをはじめ、トップ8に2人のプレイヤーを送り込んだNassifのデッキ、そして齋藤も現在進行形でPlayer of the Yearのタイトル争いに加わっているのだから。
 「殿堂」というモチベーションが彼らを強烈にドライブしてきたことは想像に難くない。そこには、結果として与えられるだけでなく、自ら勝ち取る称号としての、新たな「殿堂」のかたちがある。そのおかげで、われわれは伝説がつくられていくところを目の当たりにすることができる。

 一方、この決勝に臨むふたりのプレイヤー、Paul RietzlとBrad Nelsonは、一見して「殿堂」との直接的つながりは見られない。Rietzlは古参の部類に入るプレイヤーではあるものの大きなタイトルでは知られていないし、Nelsonはプロシーンでの活躍がここ1~2年に始まっている新鋭だ。
 しかし、少しひも解くと「殿堂」の言葉が見え隠れする。準々決勝でKaiを倒して大いに名を上げたBradはもちろんそうだし、Paulが手にするデッキは長く交流のある親友・Nassifによる「殿堂白単」なのである。

 伝説から伝説へ。新たな物語が生まれるところを、目撃することにしよう。

Game 1

F_Nelson.jpg

 先攻をとったBradだが、いきなりダブルマリガンに見舞われてしまう。対するPaulは7枚でキープ。Bradも5枚を1枚1枚丁寧にめくり、納得してゲーム開始を宣言した。

 この環境を象徴するフェッチランドから《つぶやき林/Murmuring Bosk》というスタートのBradに対し、Paulは《平地/Plains》を静かに置く。そのデザインは古い白枠のもので、新しいエクステンデッドにあって歴史を感じさせるパーツだ。そこから、混成マナシンボルを持つ《運命の大立者/Figure of Destiny》という、「今のカード」をプレイする。

 Bradが《タルモゴイフ/Tarmogoyf》、Paulが《闘争の学び手/Student of Warfare》と出し合ったところで、Bradは《強迫/Duress》をプレイする。
 これをPaulは通し、さらなる《運命の大立者/Figure of Destiny》と《白蘭の騎士/Knight of the White Orchid》、2枚の《マナの税収/Mana Tithe》に加え《清浄の名誉/Honor of the Pure》が公開される。Bradはここから《清浄の名誉/Honor of the Pure》を選ぶ。
 確認を終えたところで、3/4となった《タルモゴイフ/Tarmogoyf》が攻撃。Paulのライフが17と、はじめて動いた。

 Paulは2枚目の《平地/Plains》をフェッチしてきて《運命の大立者/Figure of Destiny》を2/2とし、さらに3枚目の土地を置いて攻撃。《ツリーフォークの先触れ/Treefolk Harbinger》がブロックしてきたところでこれを4/4に成長させる。
 Bradは《タルモゴイフ/Tarmogoyf》アタック、これが通されると《名も無き転置/Nameless Inversion》を《闘争の学び手/Student of Warfare》に撃ち込み、こちらもサイズを5/6にまで上昇させる。

 Paulは《運命の大立者/Figure of Destiny》での攻撃後、先ほど見せた《白蘭の騎士/Knight of the White Orchid》《運命の大立者/Figure of Destiny》2枚目と出す。
 Bradの《タルモゴイフ/Tarmogoyf》攻撃は通され、フェッチランドを多用したPaulのライフはすでに3となる。土地を置いてターン終了。
 Paulのターン、まず《白蘭の騎士/Knight of the White Orchid》2枚目を呼び、今回は《平地/Plains》を引き寄せる。そして4/4《運命の大立者/Figure of Destiny》と《白蘭の騎士/Knight of the White Orchid》1体目で攻撃し、Bradのライフも6に落ち込む。

 対する《タルモゴイフ/Tarmogoyf》の攻撃は、少し頭を抱えて考えて、《白蘭の騎士/Knight of the White Orchid》の方でチャンプブロック。
 「終わり?」というように言うPaulを手で制して、《朽ちゆくヒル/Putrid Leech》を出すBrad。《つぶやき林/Murmuring Bosk》から黒マナを得たのでライフは5、これに対し、Paulは迷いながら《マナの税収/Mana Tithe》を1枚使う。
 もちろん1マナ払って、Bradにもまだもう1マナある。これにて解決終了。Paulも残る1マナで《運命の大立者/Figure of Destiny》2体目を2/2に。

 アンタップ、ドローからPaulはしかめ面で考える。眼前には土地が4枚に4/4《運命の大立者/Figure of Destiny》、2/2《運命の大立者/Figure of Destiny》、《白蘭の騎士/Knight of the White Orchid》
 意を決して総員突撃、4/4がブロックされ、2/2の《運命の大立者/Figure of Destiny》が起動されることなくBradのライフは1残る。
 Paulは土地4枚フルタップで《イーオスのレインジャー/Ranger of Eos》をプレイする。2枚持ってきたのを確認するやいなや、自分のターンに入ろうと動いたBrad。
 しかしそれを手で制して、Paulは手から《平地/Plains》を置き、いま持ってきた《闘争の学び手/Student of Warfare》を出した。

 目の前にはブロッカーが2体。
 Bradはドローして、そのまま土地を片付けた。

Paul 1-0 Brad

 「《殺戮の契約/Slaughter Pact》、持ってたよね?」とPaulが問う。
 答えず、ただ首をすくめるBrad。

F_Nelson2.jpg

Game 2

 Bradの7枚キープにPaulも「OK」。
 《樹上の村/Treetop Village》vs《ステップのオオヤマネコ/Steppe Lynx》、というスタートになった。
 Bradは《タルモゴイフ/Tarmogoyf》を出し、Paulはフェッチランドを置いてから攻撃、これが通されてライフは19対16。そして《運命の大立者/Figure of Destiny》を追加する。

 この《運命の大立者/Figure of Destiny》に《大渦の脈動/Maelstrom Pulse》を撃つことを選び、《タルモゴイフ/Tarmogoyf》が3/4となって反撃を開始する。
 Paulはまたしてもフェッチランドから攻撃。そして《幽体の行列/Spectral Procession》がトークンを与える。この状態でライフ15対11。
 《タルモゴイフ/Tarmogoyf》の攻撃後、しょうがなくといった様子で《朽ちゆくヒル/Putrid Leech》《ツリーフォークの先触れ/Treefolk Harbinger》と並べ、《つぶやき林/Murmuring Bosk》を持ってくるBradには、少し覇気が薄れている気がする。
 またまたフェッチランドから総攻撃、大活躍の《ステップのオオヤマネコ/Steppe Lynx》は《朽ちゆくヒル/Putrid Leech》でチャンプされる。続いて《闘争の学び手/Student of Warfare》をレベルを2にして終了。

 Bradは《つぶやき林/Murmuring Bosk》のマナから《包囲の搭、ドラン/Doran, the Siege Tower》を出し、《タルモゴイフ/Tarmogoyf》で攻撃するのだが、《包囲の搭、ドラン/Doran, the Siege Tower》を《流刑への道/Path to Exile》されてしまっては望みなく、その時点で投了した。

Paul 2-0 Brad

 Gabriel Nassifの手によるデッキを、Paul、Kai Budde、Jay Elarar(カナダ)とMagic Online上で調整してきて完成したという「殿堂白単」。
 その強さはどこにあるのか、という問いに、今回のエクステンデッドで結果を残している八十岡 翔太はこう感想を述べる。

八十岡 「メタゲームを読みきった結果、なんだろうね。強いデッキにはとことん強い。その意味で『ソリューション』っぽい」

 また、森 勝洋の見立てはこうだ。

 「《清浄の名誉/Honor of the Pure》が強い。《罰する火/Punishing Fire》が効かなくなるのが大きいね。そしてデッキ全体が早いのもメリット」

 「殿堂」を渇望したNassifが作成し、Kaiという「殿堂」が認めたデッキ。
 その想いを背負って、Paul Rietzlはいまタイトルに王手をかけた。

F_Rietzl.jpg

Game 3

 決勝のテーブルには、厳しさとどこか「ゆるさ」が入り混じった雰囲気が流れている。
 これまでの厳しい勝負と比べ、勝っても負けてもこれで終わり、ということと、ここまで来れば「All or Nothing」ではない安心感があるからだろうか。

 Bradはここでもマリガンに見舞われてしまった。
 シャッフルをしているときの視線も、どこか遠くをさまよう。
 6枚を見て、軽く眉を動かした。

 フェッチランドから《つぶやき林/Murmuring Bosk》のBradに、またも《ステップのオオヤマネコ/Steppe Lynx》スタートを決めるPaul。
 第2ターンのドローをして、Bradは軽くため息をつく。さらにフェッチを重ねて《森/Forest》、《朽ちゆくヒル/Putrid Leech》を出す。

 Paulにフェッチランドはあるか?
 土地を置かずに考えている。

 答えは「ある」。出してすぐに起動、さらに《清浄の名誉/Honor of the Pure》。《ステップのオオヤマネコ/Steppe Lynx》は《朽ちゆくヒル/Putrid Leech》ですら止められない。
 Bradは《壌土のライオン/Loam Lion》を出し......土地を置けない。

 Paulは1/2→3/4の《ステップのオオヤマネコ/Steppe Lynx》で攻撃、これは《壌土のライオン/Loam Lion》でチャンプブロック。
 そしてそこには、約束されたように《幽体の行列/Spectral Procession》がある。
 Bradは《包囲の搭、ドラン/Doran, the Siege Tower》を引き、「Go」とだけ告げた。

 Paulの手札から、2枚目の《清浄の名誉/Honor of the Pure》。

 名誉をいま、高らかに掲げよう。

Paul 3-0 Brad

F_ShakeHands.jpg

PTAms_Winner_Rietzl.jpg

おめでとう、プロツアー・アムステルダム2010チャンピオン、ポール・リーツェル!

前の記事: 準決勝: Marijn Lybaert(ベルギー) vs. Brad Nelson(アメリカ)
イベントカバレージ/プロツアー・アムステルダム10 一覧に戻る

イベントカバレージ