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準々決勝:大塚 高太郎(神奈川) vs. Andrea Giarola(イタリア)

準々決勝:大塚 高太郎(神奈川) vs. Andrea Giarola(イタリア)

By Daisuke Kawasaki

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 大塚 高太郎(神奈川)を最初に「曲者」だといってきたのは、プロツアー・プラハチャンピオンの大澤 拓哉(神奈川)だったように思う。

 その時、大澤と筆者は、プレイヤーのプレイングの傾向について議論しており、大きくわけてふたつの方向性にわかれるのではないかという結論に達した。

 ひとつは、できるだけ安定したプランを構築し、場を固め、じわじわと有利にしていくプレイング。

 もうひとつは、相手の攻撃の隙を狙い、最小の効果で最大のアドバンテージを獲得し、そのアドバンテージを勝利に結びつけるプレイング。

 前者を「固める系」で、後者を「曲者系」と大澤は名付けた。

 「固める系」の代表格といえば、大澤自身であるし、大澤の師匠格にあたる石田 格(東京)も間違いなく固める系のプレイヤーだ。当然、八十岡 翔太や三田村 和弥あたりのプレイヤーも固める系であり、そう考えるとプロプレイヤーには固める系のプレイヤーは多いように思われる。

 一方の「曲者系」には誰がいるだろうか?

 浅原 晃(神奈川)は、「固める系」と「曲者系」の両プレイを使い分ける、もうワンランク上の超曲者ということで、二人の意見は一致したが、じゃあ、典型的な「曲者系」は誰だ?という話になった。

 筆者は、大澤に森 勝洋(大阪)ではないか?と聞いた。

大澤 「うーん、モリカツもそうですけど......案外に、大塚君も曲者系ですよ」

 その回答は、意外なものだった。

Game 1

 土地が4枚に、《暁輝きの発動者/Dawnglare Invoker》《生き残りの隠し場所/Survival Cache》《光明の目覚め/Luminous Wake》という初手をキープした大塚。非常に防御的なカード中心のキープだ。

 しかし、これだけ防御的なカードをキープしてもどうにもならないような攻勢を受ける事になる。

 Giarolaは、2ターン目に《巣の侵略者/Nest Invader》、3ターン目に《成長の発作/Growth Spasm》とつなげた上で、なんと4ターン目に《ペラッカのワーム/Pelakka Wurm》をキャストしてきたのだ。

 これではさすがの大塚も対処のしようがない。

Giarola 1-0 大塚

 大塚 高太郎が曲者。筆者にはそのイメージはなかった。

 実際にそういうイメージを持っている読者の方はどれぐらいいるだろうか。むしろ、特定のプロプレイヤーのプレイ傾向や、特徴にどれぐらいの興味があるだろうか?

 大塚のイメージとして強いのは、プレミアイベントでのアベレージが高いと言うことだ。大塚が大負けしている大会というのはそんなに記憶に無い。

 もともと、ジャンルに限らずゲームが好きで、誘われればどんなゲームでも遊ぶ大塚なのだが、どのゲームをやってもアベレージは高い。

 それは、ゲームをするセンスがあるということではあるが、もうひとつ、大塚は非常に「やり込み系」のプレイヤーなのだ。

 どんなに異常な難易度のゲームでも興味を持てば黙々とクリアへの練習を積み続けることができる。実際に、筆者の目から見ればいわゆる「クソゲー」としか思えないような難易度のゲームを大塚が黙々とやり込み、クリアーしている姿を見たことがある。

 そしてもちろんマジックも大塚が興味を持っている異常な難易度のゲームのひとつである。

 だから、大塚は、きっと、マジックをやりこむことにも長けているのだろう。

Game 2

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 一方的に大塚が蹂躙されたGame 1に対して、Game 2は大塚が一方的に蹂躙する展開となった。

 大塚は、2ターン目にキャストした《ハリマーの波見張り/Halimar Wavewatch》を毎ターンレベルアップさせ続け、即レベル5に。

 そして、この6/6にさらに《マンモスの陰影/Mammoth Umbra》をエンチャントし9/9防衛でアタックをはじめる。

 赤緑のGiarolaのデックではこのサイズの化け物に対処する方法は、ほとんど無い。仕方なく、《ペラッカのワーム/Pelakka Wurm》と《戦争売りの戦車/Warmonger's Chariot》を装備した《戦装飾のシャーマン/Battle-Rattle Shaman》でブロックする。

 ここには予定調和的に《絶望の誘導/Induce Despair》が刺さり、そのまま9/9がゲームを決めきった。

Giarola 1-1 大塚

 しかし、大塚のパーソナリティとしてもっと知られているのは、いわゆる「古淵」の練習場として自宅が提供されていることなのかもしれない。

 大塚の住む家には、大澤・北山のふたりはもちろん、中島や、栗原 伸豪(東京)や小室 修(東京)、さらには中村 修平(大阪)・渡辺 雄也(神奈川)・三田村 和弥(千葉)といったレベル8プレイヤーにいたるまで、多くのプレイヤーが訪れ、主にリミテッドの練習を積んでいる。

 大塚のトップ8の主要因となったドラフト全勝にここでの練習が無関係だったとは思えない。

 ドラフト前に、大塚にやりたいアーキタイプを聞いたところ、こんな返事が返ってきた。

大塚 「モリカツが、今、MOで連勝してるオレのテクニックを伝授してやるって最近いつも電話がかかってくるんですよ」

 そこで、森から伝えられたのが、青に黒・白・赤のどれかの色をタッチして、除去を散らす方法と、黒緑の軽除去+重量クリーチャーという方法だという。実際に、大塚がここまで《族霊導きの鹿羚羊/Totem-Guide Hartebeest》を多めにピックしてきたのも、この森のテクニックの影響も大きいという。

大塚 「緑黒は大澤のオススメでもあるんで、まぁ強いと思いますよ」

 このように、多くのプレイヤーの意見に耳を傾ける柔軟さを大塚はもっている。

大塚 「でも、まぁ青好きなんで青使いますけどね」

 そして、他人の意見に流されすぎない意志の強さも、大塚は持っている。

Game 3

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 ここまで一方的な展開が続いたこのマッチアップだったが、Game 3は多少の均衡状態を保ち、中盤までゲームが進む。

 ここでGiarolaは、《ペラッカのワーム/Pelakka Wurm》とならび大塚がほとんど対処できないクリーチャーである《ウラモグの破壊者/Ulamog's Crusher》をキャストする。

 大塚は守護神ともいえる《族霊導きの鹿羚羊/Totem-Guide Hartebeest》をキャスト。そしてライフとダメージレースを計算し始める。

 この大塚の手つきをみて、観戦していた栗原 伸豪(東京)はこういった。

栗原 「KTO(大塚)のあの手の動きは......勝てる時の動きですね!」

 大塚の手札には《コジレックの職工/Artisan of Kozilek》がおり、相手の《ウラモグの破壊者/Ulamog's Crusher》のアタックを一度防いでしまえば、《コジレックの職工/Artisan of Kozilek》の召喚から、《族霊導きの鹿羚羊/Totem-Guide Hartebeest》を回収し、《マンモスの陰影/Mammoth Umbra》をエンチャントすることで、サイズで圧倒するビジョンがあった。

 だが、この大塚のプランは《野心の発動者/Wildheart Invoker》がキャストされたことで崩壊してしまう。

 大塚はここまでチャンプブロックをすることでターンを稼ぐプランでいたのだが、この《野心の発動者/Wildheart Invoker》の持つトランプル能力はチャンプブロックで残りターンを計算することを許さず、また、横にいる取るに足らないレベルのクリーチャーをも脅威に変化させるのだ。

 そこで、大塚はプランの変更をせざるを得ない。

 《暁輝きの発動者/Dawnglare Invoker》をキャストするプランだ。

 だが、もともと大塚がこのプランを選ばなかった理由がある。そう、あまりにも簡単に対処されてしまうのだ。

 Giarolaは《産卵の息/Spawning Breath》をキャストする。

 手札に《剥奪/Deprive》があるフリを一応していたが、手札をシャカシャカしながら苦笑いするしか無くなってしまう大塚。

 この大塚の手つきをみて、観戦していた北山 雅也(神奈川)はこういった。

北山 「大塚くんのあの手の動きは......負ける時の動きですね!」

Giarola 2-1 大塚

 Game 3での栗原や北山の言葉を聞いてもらえればわかると思うが、多くのプレイヤーは他のプレイヤーの動きを見ている。

 そして、多くのプレイヤーは自分特有の動きがあったりするものだ。Brian Kiblarの手札縦シャッフルは、有名すぎるくらいに有名だろうし、三田村の持ちネタのひとつは、Wafo-Tapaのシャッフルの物まねだ。

 また、動きだけでなく、相手のプレイヤーのプレイングもよく見ている。それは自分がプレイする時の参考、という意味もあるが、ある種の性として「自分がプレイする時にどうするか?」を念頭に入れて他人のプレイを見ているからだろう。そうすると「間違っているとは言えないが自分と違うプレイをする人」がいることに気がつく。

 大澤が、大塚のプレイングが曲者系であると気がつき分析した背景はそんなところにあるのだろう。

 マクロの視点でいって、マジックが人間のやるゲームである以上、それぞれの人生にとってそれぞれのマジックとのつきあい方がある。

 だが、それはミクロな視点でも存在する。

 マジックが人間のやるゲームである以上は、そのプレイヤーならではのプレイやクセがあってしかるべきなのだ。それぞれのマジックがあるものなのだ。

Game 4

 Giarolaが2ターン目にキャストしてきた《草茂る胸壁/Overgrown Battlement》を《絶望の誘導/Induce Despair》で除去した大塚。

 この時の大塚の表情を、俗に「ドヤ顔」というのだろう。なにせ、提示されたクリーチャーは《カラストリアの血の長、ドラーナ/Drana, Kalastria Bloodchief》だったのだから。

 続いて《野心の発動者/Wildheart Invoker》をキャストしてきたGiarolaだったが、返すターンで大塚は《カラストリアの血の長、ドラーナ/Drana, Kalastria Bloodchief》をキャスト。

 《戦装飾のシャーマン/Battle-Rattle Shaman》などでなんとかダメージレースに持ち込もうと考えたGiarolaだったが、この凶悪な恐血鬼を前にまったく手も足もでないのだった。

Giarola 2-2 大塚

 大塚といえば、曲者であって、柔軟な人付き合いと頑固さを併せ持っているプレイヤーだ。その頑固さと柔軟さが、大塚のプレイの強さの、曲者としての強さの背景になっている。

 だが、大塚を表現する時にもっとも顕著に語り継がれているカードがある。

 《雲打ち/Cloudthresher》だ。

 大塚が、この前にトップ8に入賞したプロツアーである世界選手権2007。

 この時に、大塚は後に世界王者になるUri Pelegと対戦、《ロクソドンの戦槌/Loxodon Warhammer》を《熟考漂い/Mulldrifter》に装備させ、勝利を確信したその瞬間。

 Pelegの手札から飛び出してきた、《雲打ち/Cloudthresher》。

 このたった1枚のカードのせいで、大塚は準決勝で敗退することとなった。

 あまりに印象的で、あまりに鮮烈な逆転劇。

 この時のことをいまだ、多くのプレイヤーは語り継いでいる。

 大抵のプレイヤーは自分の試合は覚えているが、他人の記憶に長く残る試合をすることは難しい。

Game 5

 一進一退で迎えた最終戦。

 大塚は《ハリマーの波見張り/Halimar Wavewatch》からスタートという、勝利した第2ゲームを思わせる展開。

 一方のGiarolaも、2ターン目に《草茂る胸壁/Overgrown Battlement》から、《魂うねりの精霊/Soulsurge Elemental》という展開。

 ここで、さらに《生き残りの隠し場所/Survival Cache》をキャストした大塚だったのだが、返すターンで《コジレックの捕食者/Kozilek's Predator》がキャストされ、《魂うねりの精霊/Soulsurge Elemental》が5/1になってしまう。

 《ハリマーの波見張り/Halimar Wavewatch》をここで失うわけに行かない大塚は、この攻撃をスルー。結果、2回目の《生き残りの隠し場所/Survival Cache》ではカードを引くことができない。

 《ハリマーの波見張り/Halimar Wavewatch》をレベルアップさせ、《エランドの陰影/Eland Umbra》をエンチャントしたことで、0/10という圧倒的な防御を完成させた大塚。これに対処すべく《野心の発動者/Wildheart Invoker》をキャストしてきたGiarolaだったのだが、大塚は5マナ揃った所で大アクションを見せる。

 《カラストリアの血の長、ドラーナ/Drana, Kalastria Bloodchief》!

 5ターン目に{B}{B}を揃えるという幸運にも恵まれ、完全に場を支配するクリーチャーが降臨する。

 まさに勝利した第4ゲームの再来だ。

 だが、返すターンで、Giarolaの手札からでてきたのは、これまでに一度も見なかった《熱光線/Heat Ray》。

 《イキーラルの先導/Ikiral Outrider》でなんとか盤面をしのごうとする大塚だったが、《戦装飾のシャーマン/Battle-Rattle Shaman》と《大群の力/Might of the Masses》が一気に大塚のライフを奪いきったのだった。

Giarola 2-3 大塚

 きっと、仙台の会場で、大塚の顔を見て、《カラストリアの血の長、ドラーナ/Drana, Kalastria Bloodchief》、もしくは《熱光線/Heat Ray》の話題をするプレイヤーは多いだろう。

 それくらいに、《カラストリアの血の長、ドラーナ/Drana, Kalastria Bloodchief》に打ち込まれた《熱光線/Heat Ray》は鮮烈な印象を残した。

 《雲打ち/Cloudthresher》といい、《熱光線/Heat Ray》といい、どちらも大塚唯一のビデオマッチだ。その場で、これだけ印象深いマッチを見せるのは、もはや運命だろう。

 だが、それを一種のネタとして屈託無く大塚にいうことができる、そういう友人が大塚の周りにいるからこそで、だからこそこれらの出来事はネタとして語り継がれていってしまう。

 マジックは、人間がやるゲームであり、ひとりひとりの人間が違うように、それぞれのプレイするマジックには違いがある。

 そして、大塚のまわりの友人達は、マジックを通して、大塚の人間性を理解している。

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