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決勝戦:Paulo Vita Damo Da Rosa(ブラジル) vs. Guillaume Matignon(フランス)

決勝戦:Paulo Vita Damo Da Rosa(ブラジル) vs. Guillaume Matignon(フランス)

By Daisuke Kawasaki

 三日間にわたるプロツアー・サンファンもついに、決勝戦。

 決勝の席に座ることに許されるのは、400名弱から選出されたふたりのみ。

 ひとりは、ブラジルの英雄、PVことPaulo Vita Damo Da Rosa。

 その圧倒的なプレイングスキルによって、弱冠22歳ながら、プロシーンのトップに躍り出た超スーパースター選手である。

 以前、プロツアー・京都の時に、Jon Finkel(アメリカ)・Kai Budde(ドイツ)の二大巨頭に続くプレイヤーは誰か、という話題があり、京都で優勝したGabriel Nassif(フランス)こそその地位にふさわしいという結論となった。

 そして、今、またその議論を蒸し返すのであれば、そこに名前が挙がるプレイヤーは、おそらく、Luis Scott-Vargas(アメリカ)とPVだろう。

 そのPVが今、プロツアー6回目のトップ8入賞を果たし、そして、今、優勝に向けて王手をかけている。

 先ほど名前が挙がったFinkel(12回)・Budde(9回)・Nassif(9回)の他には、殿堂プレイヤーのDarwin Kastle(8回)、そして日本の大礒 正嗣(6回)・津村 健志(6回)の6人しか達成していないトップ8入賞の域に、ついにPVは踏み込んだのだ。

 そして、もしも、ここを優勝すれば、同回数ながら優勝経験のない、大礒・津村を一気に抜き去ることになる。

 そう、ここでPVが優勝することが、また、新しい伝説のはじまりとなるのだ。

Game 1

 先手のMatignonは1ターン目にキーカードである《訓練場/Training Grounds》をキャスト。そして、2ターン目3ターン目と続けて《先読み/See Beyond》をキャストし、続いて《空見張りの達人/Skywatcher Adept》を戦場に送り込む。この《空見張りの達人/Skywatcher Adept》に《敬慕される教師/Venerated Teacher》で一気にレベルカウンターを載せる。

 一方のPVは、3ターン目に《尊大な血王/Arrogant Bloodlord》、4ターン目に《オンドゥの巨人/Ondu Giant》をキャストしたもののクロックの高さについて行けない。

 キャストした《虚身の勇者/Null Champion》は除去したPV。《血の座の吸血鬼/Bloodthrone Vampire》を追加する。

 ここでダメージレースを持ちかけるべくアタックしたMatignonだったが、この隙に、PVが《本質の給餌/Essence Feed》からの《血の座の吸血鬼/Bloodthrone Vampire》アタックで一気にMatignonのライフを削り切ったのだった。

PV 1-0 Matignon

 1本目を適切なプレイングでひっくり返し勝利したPV。たしかに、PVを超えるだけのプレイングスキルを持ったプレイヤーなど、いないのだろう。

 だが、対するGuillaume Matignon(フランス)のデックは、卓内でも最強といわれている《訓練場/Training Grounds》《敬慕される教師/Venerated Teacher》を活用した青黒のレベルアップである。

 準々決勝の観戦中に八十岡 翔太(東京)がいうには、青系のレベルアップの中でも、踏み倒し型になるなら、白よりも黒の方が、レベルアップした時のクリーチャーの質が上ということで、強いということだ。

 ましてや、Matignonのデックは、《血の復讐/Vendetta》が2枚も入っている。たとえ、PVのプレイスキルが高かろうと、それを覆しうるだけのデックのクオリティをMatignonは持っている。

Game 2

 《勇者のドレイク/Champion's Drake》を出し、飛行でクロックを刻んでいくMatignon。これに対抗すべく《血の座の吸血鬼/Bloodthrone Vampire》をだすPVだったが、これを《バーラ・ゲドの蠍/Bala Ged Scorpion》で討ち取られてしまう。

 《虚身の勇者/Null Champion》と2体目の《血の座の吸血鬼/Bloodthrone Vampire》で《バーラ・ゲドの蠍/Bala Ged Scorpion》をブロックし、討ち取ったPVだったが、Matignonはここに《ゾフの影/Zof Shade》を追加する。

 プレッシャーをかけられ続けているPVだが、実はここまで土地が止まり続けている。この時点で、土地の枚数が、PVが2枚にMatignonが7枚という圧倒的な差。

 やっと引いた3枚目の土地から、《ゾフの影/Zof Shade》を除去出来る《最後の口づけ/Last Kiss》ではなく、《ウラモグの手先/Pawn of Ulamog》をプレイ。

 《ジョラーガの樹語り/Joraga Treespeaker》によってマナベースを安定させようとするPVに対して、Matignonは《虚身の勇者/Null Champion》をキャスト。《勇者のドレイク/Champion's Drake》がいるこの状態では、レベルアップを持ったクリーチャーは存在自体が強力なプレッシャーとなる。

 ここで《血の座の吸血鬼/Bloodthrone Vampire》を墓地に送り落とし子トークンを生み出したPVに対して、マナを加速させじとMatignonが《血の復讐/Vendetta》を落とし子トークンを対象に打ち込んだことで、星はイーブンとなった。

PV 1-1 Matignon

 マジックをやる上で、マリガンというのは、非常に難しい。

 土地が少なすぎてもマリガンしなければいけないが、土地が多すぎてもマリガンしなければいけない。

 それをロジックに依るプレイヤーもいれば、経験に依るプレイヤーもいるだろう。

 PVは、マリガンをロジックに依るタイプであるように見受けられる。彼は初手をみて、序盤に動けるカードが多い上に《森/Forest》を手札に入れれば、さらなるマナの安定を狙えるため、マリガンのリスクが大きいと判断したのだろう。

 そのプレイングが正しかったかどうかは結果論で判断するのではなく、そのプレイヤーの行動指針で決めるべきだろう。

Game 3

 《コジレックの審問/Inquisition of Kozilek》で序盤のプランを確定させるPV。対してMatignonは《勇者のドレイク/Champion's Drake》をキャスト。さらに、《敬慕される教師/Venerated Teacher》をキャストするが、戦場にレベルアップはいない。

 一方のPVは2ターン目に《血の座の吸血鬼/Bloodthrone Vampire》をキャストしている。Matignonが《先読み/See Beyond》で手札整理をしたのちにアタックしてきたところで、《勇者のドレイク/Champion's Drake》へと《血の復讐/Vendetta》を打つPV。

 そして、自身のターンに《血の座の吸血鬼/Bloodthrone Vampire》をPVがキャストしたことで、いったん場はイーブンに。

 ここで、Matignonは《血の座の吸血鬼/Bloodthrone Vampire》を《バーラ・ゲドの蠍/Bala Ged Scorpion》で除去。対して PVは《虚身の勇者/Null Champion》をキャスト。

 これを相打ち要員として使うのではなく、ダメージソースとして活用するべく、Matignonの攻撃をスルーし、レベルアップを重ねる。PVは手札に土地が多いため、ここで大きくクロックを刻まなければきびしいのだ。

 一気にPVは2体で攻撃し、Matignonのライフを6とする。対するPVのライフも6なので、何か持っていればMatignonはゲームを有利に進めることができるのだが、ここで何もなかったMatignonは《敬慕される教師/Venerated Teacher》だけでアタックする。

 返しで、PVの《虚身の勇者/Null Champion》を《バーラ・ゲドの蠍/Bala Ged Scorpion》がブロックする。何か引かなければ勝てないMatignonだが、ここで《グール・ドラズの暗殺者/Guul Draz Assassin》をキャストする。

 この《グール・ドラズの暗殺者/Guul Draz Assassin》に《最後の口づけ/Last Kiss》がキャストされ、ブロッカーが排除されたため、PVが初優勝に王手をかける。

PV 2-1 Matignon

 スーパースターであるPVの対戦相手ということで、あまり注目されていないGuillaume Matignonではあるが、実は、彼は新鋭というわけではなく、むしろちょっとした古豪に分類されるプレイヤーである。

 実際に、会場にいた日本のプロプレイヤーに彼についてたずねると、ほとんどのプレイヤーが彼のことを知っていた。

 「あ、フランスのおっちゃんでしょ?」

 おっちゃんというほどの歳ではないが、そのことはここでは置いておこう。

 Matignonは、ここ数年のプロツアーには継続的に参戦している。今年のプロレベルが4、生涯プロポイントが49というあたりから見ても、決してこれまで好成績を残してきたプレイヤーではないが、しかし、だからこそ、二日目以降のチームドラフト面子として多くのプレイヤーと交流をしている。

 そのため、日本人のプロたちも彼の顔をよく知っているのだ。

 継続的なプロツアー参加はそれがたとえ高い成績を残さないものだとしても、たとえば日本の中島 主税(東京)がそうであるように、多くの友人を世界中に作ることができる。

Game 4

 Matignonは1ターン目に《グール・ドラズの暗殺者/Guul Draz Assassin》をキャストする。

 この《グール・ドラズの暗殺者/Guul Draz Assassin》に《最後の口づけ/Last Kiss》を撃てるかどうかが勝負を大きく分ける。

 Matignonは《敬慕される教師/Venerated Teacher》でレベルアップして、アタック。返すターンにPVは《最後の口づけ/Last Kiss》!これには会場から歓声が上がる。

 だが、返すターンで、Matignonは《死者のインプ/Cadaver Imp》から《グール・ドラズの暗殺者/Guul Draz Assassin》を再びだす。これには会場の逆サイドから歓声が。

 PVも《野心の発動者/Wildheart Invoker》《戦慄の徒食者/Dread Drone》と盤面に追加し、かなり強力な場を構築しているのだが、とにかく《グール・ドラズの暗殺者/Guul Draz Assassin》に触ることができるカードがない。

 そして《グール・ドラズの暗殺者/Guul Draz Assassin》が無双し、PVの構築した盤面がじわじわと崩されていく。

 PVはこれをどうにかするために《ニルカーナの亡霊/Nirkana Revenant》で悪あがきをする。返しでMatignonは《ゾフの影/Zof Shade》をキャスト。PVは《ニルカーナの亡霊/Nirkana Revenant》でアタックし、長考する。

 ここで《夢石の面晶体/Dreamstone Hedron》をキャストしたPV。だが、これは敗着打だった。

 Matignonは《訓練場/Training Grounds》をキャスト。

 これによって、超シェイドとなった《ゾフの影/Zof Shade》が、《グール・ドラズの暗殺者/Guul Draz Assassin》《死者のインプ/Cadaver Imp》とあわせて、一撃でPVのライフを削り切った。

PV 2-2 Matignon

 そんなMatignonにとって、このプロツアー・サンファンの決勝は、彼のマジック人生史上でも初めての大舞台である。

 だが、少なくとも、決勝戦に向かうまでの2戦を見ていて、彼からはそういった重さは感じることができなかった。たとえば、初日落ちして、マジックをやめたいといいつつも、それでもマジックが楽しくて結局二日目も三日目もチームドラフトに興じ続ける三田村 和弥のように、とにかく楽しくてマジックをやっているように見える。

 Matignonにとっては、マジックが楽しくて、より楽しいマジックを求めた先にプロツアーがあったというだけのことなのだろう。

 なにより、プロツアーの会場にくればチームドラフトの相手に不足しないのだから。

Game 5

 ここまで一貫して後手を取っているPV。

 2ターン目に《血の座の吸血鬼/Bloodthrone Vampire》をだしたPVに対して、Matignonのファーストアクションは4ターン目の《訓練場/Training Grounds》という非常に悪いもの。

 続くターンに《霜風の発動者/Frostwind Invoker》をキャストしたMatignon。対して、PVは《血の座の吸血鬼/Bloodthrone Vampire》の2体目をキャストし、さらに《ジャディの生命歩き/Jaddi Lifestrider》をキャストして6点をゲインする。

 ここで後続を追加できないMatignonに対して、PVは《ニルカーナの亡霊/Nirkana Revenant》をキャスト。押されていたGame 4に比べて、この盤面での《ニルカーナの亡霊/Nirkana Revenant》は完全にゲームを支配する力がある。

 そして、これに対するMatignonの対抗策が......レベルアップクリーチャー無しの《敬慕される教師/Venerated Teacher》。

 数ターンが経過したところで、会場中に大きな拍手が鳴り響いた。

PV 3-2 Maritinon

 会場中を非常に大きな、大きな拍手が包んだ。

 今、ここで、PVは戦績において津村・大礒を抜き、ことプロツアーの成績基準でいうならば、歴代5番目の戦績を持つ男となったのだ。

 新たなヒーローの誕生を祝う事自体を楽しむ、それもプロマジックとの正しいつきあいかたのひとつだし、この会場にいる多くのプレイヤーはそれを楽しめる人たちだ。

 そして、一方で、そんなPVの新たな伝説にたいして気にも留めずに、チームドラフトに興じ続けるプレイヤーたちもいる。Matignonも、決勝戦が終わり、表彰式までのわずかな時間で、次のチームドラフトの予定を決め、表彰式が終わったが早いか、すぐにパックをむき始めた。

 人の人生の数だけ、マジックの形があり、マジックとのつきあい方がある。

 そして、同じように、プロマジックとのつきあい方も人の数だけある。

 齋藤 友晴のように、マジックを仕事にするべく努力したり、中村 修平のように、マジックコミュニティのために貢献したり、渡辺 雄也のように、より高みを求めることを目指したり、津村 健志のように、自分の夢のために一度プロシーンを離れ、そして戻ってきたり。

 生活環境が変わってプロから引退するプレイヤーもいれば、そんな中でも石井 泰介のように、社会人を続けながら結果を残す努力をするプレイヤーもいる。一方で、佐々木 優太のように、あたらしくこのプロツアーという世界に触れ、その魅力に引き込まれつつあるプレイヤーもいる。

 マジックの最大の魅力は、様々な遊び方を許容する懐の深さにある。そして、プロマジックも、プレミアイベントも、そんな楽しみ方のために利用するべきツールのひとつなのだ。

 日本では、来週にグランプリ・仙台が、そして年末には世界選手権が予定されている。

 あなたも、あなたのマジックとのつきあい方のために、プレミアイベントを利用してみてはいかがだろうか?

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