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Round 1: Gabriel Nassif(フランス) vs. 中村 修平(大阪)

Round 1: Gabriel Nassif(フランス) vs. 中村 修平(大阪)

by "FOREST" Keita Mori

 世界選手権初日、競技種目はスタンダード。

 現在のスタンダードというフォーマットについて、広く知られている事実がある。
 とにかく、ジャンド続唱(Jund Cascade)が強い。

 最近のマジックのスタンダード事情に明るくないという方は、この世界選手権カバレージの中でも紹介している翻訳記事「ゼンディカー ゲームデー スタンダード」を是非ご一読いただきたい。

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 端的にまとめると、《血編み髪のエルフ》を筆頭としたアラーラ再誕の「続唱」メカニズムを核とした赤黒緑のデッキが、とにかく支配的な強さを見せているのだ。

 そんな状況下で迎える世界選手権だからこそ、やはり勝負論として最も注目したいポイントがある。

 世界最高峰のプレインズウォーカー達は、はたしてどのような手段(デッキ)で「ジャンド時代」というメタゲームに斬りこんでくるのか? 

 そして、ジャンド続唱を選んだ者たちは、どのような戦いぶりで、その包囲網をかいくぐろうというのか?

 以上のような観点も念頭に置いて、二人の世界的名手による「ジャンドをめぐる戦い」をここでお送りしたい。

中村 修平:続唱ジャンド
Gabriel Nassif:4色《残酷な根本原理》コントロール


 もはや単なる蛇足かもしれないが、両者とも年間最優秀プレイヤー(Player of the Year)賞を獲得したことのある強豪である。

Game 1
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 ラフな白いシャツを着こなし、深く胸もとを開けたリゾート風の洒脱なコーディネートで決めてきたNassif。対して、バーバリーのハーフコートと黒いパンツというシックな出で立ちが中村。両者マリガンなく、Nassif先行でゲームはスタートした。

 多色デッキ同士の対決ということもあり、最初の3ターンは静かに土地をセットしあうだけの展開。先に4マナ域に辿り着いた先行のNassifが《復讐のアジャニ》を展開し、中村のタップインランドを縛りつけるというファーストアクションとなった。

 タップインランド連続という状況下でアジャニによるマナ拘束を受けてしまった中村は動きが重く、後手5ターン目に《荒廃稲妻》での報復を試みるが、Nassifの《二重否定》がこれを阻むのだった。中村、実に3ターン連続でタップイン状態の《竜髑髏の山頂》プレイというマナベース構築である。

 《復讐のアジャニ》で静かにマナを縛りあげながら、エンドステップの《エスパーの魔除け》によるドローサポートもあり、Nassifがストレートに7マナ域に到達。ここではやくも《残酷な根本原理》を炸裂させた! 

 強烈な、しかも必殺技級の先制パンチを食らってしまったかたちの中村だが、皮肉にも手札に腐っていたクリーチャー除去魔法の枚数がちょうど3枚。中村はこれらをディスカードし、続くターンに《血編み髪のエルフ》を唱えて、続唱で《不屈の自然》をめくりだした。いちはやく「続唱」呪文のマナ域に到達するため、そして色マナベースを安定させるために投入されているカードが《不屈の自然》であると考えて良いだろう。中村は3/2エルフのアタックによって《復讐のアジャニ》の忠誠カウンターを減らし、必殺の「敵だけ《ハルマゲドン》」モードから逃げ切った。

 静かに土地をおきながら、Nassifは《復讐のアジャニ》を《稲妻のらせん》モードで使用して3/2エルフを除去。返すターンに中村も二体目の《血編み髪のエルフ》を召喚して応戦するも、そこからめくりだされた《荒廃稲妻》をNassifが《衝撃的な幻視》で打ち消し、なんとか戦場に出た3/2エルフも《稲妻》でなぎ払われてしまう展開。《残酷な根本原理》を決めているNassifは完全にゲームの流れを掌握している。

 続くターン、「発明者」Patrick Chapinがデザインしたという多色クルーエルコントロールはその真価を見せた。

 すなわち、メインボードからの《プレインズウォーカー、ニコル・ボーラス》!

Nassif 1-0 中村

Game 2
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 両者とも大量のカードをサイドボードから投入して迎える第2ゲーム、もちろん中村からのキックオフだ。

 中村の初動は3ターン目の《荒廃稲妻》で、Nassifがこれを《瞬間凍結》するという攻防。対するNassifは《広がりゆく海》で中村の《竜髑髏の山頂》を《島》に変える。色マナのタイトなジャンド続唱デッキの序盤戦にとって厳しい一手だが、中村はセット《根縛りの岩山》から《不屈の自然》でマナベースを整備して対抗した。

 中村の5ターン目の《包囲攻撃の司令官》をNassifの《二重否定》が阻むが、続く中村のターンの《血編み髪のエルフ》と、続唱からめくれた《ゴブリンの廃墟飛ばし》+キッカーが通り、Nassifの《崩れゆく死滅都市》を破壊した。アタック5点! ここでNassifは《エスパーの魔除け》から打ち消し呪文のドローを期待するレスポンスを見せているが、成就せず。

 攻勢に出た中村に対抗すべく、Nassifはブロッカーとして《否定の壁》を展開。対して中村はここで《若き群れのドラゴン》召喚。4/4飛行ドラゴンが二体降臨する。

 Nassifは《残酷な根本原理》で事態の掌握にかかるが、中村は続くターンに《朽ちゆくヒル》を戦線に加えて攻勢を維持。まもなく中村の《包囲攻撃の司令官》が通り、これによってGabriel Nassifはデッキを片づけはじめるのだった。

Nassif 1-1 中村

Game 3
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 日本代表選手三名は、メインとサイドをあわせた75枚の内容を完全に揃えたデッキで初日スタンダードに臨んでいる。そして、緒戦をともに白星で飾った渡辺 雄也(神奈川)と塩田 有真(岡山)がかけつけ、自軍の大将である日本王者の試合を見守りはじめた。気づけば黒山の人だかりの中、二人の名手は静かにデッキをシャッフルする。

 Nassifが先手7枚、中村が後手6枚の初手をそれぞれキープして、第3ゲームがはじまった。そして静かなセットランドが続く序盤が過ぎて、後手中村が4ターン目を迎えた。

 中村の手札の4マナ域呪文は《思考の大出血》と《血編み髪のエルフ》。ここでNassifと中村の視線がバチバチと火花を散らして交錯し、一呼吸おいてから、中村は《思考の大出血》をプレイした。

 ...そして、このソーサリーが通り、中村は《残酷な根本原理》を宣言! サイドボード後もNassifのデッキに2枚残されていた「必殺技」がすべて追放されたのだった。

 ちなみに、ここで公開されたNassifの手札の内容は、3枚の土地、《地震》、《ジュワー島のスフィンクス》、《本質の散乱》だった。

 かくて、「安全確認」を済ませている中村は続くターンに《血編み髪のエルフ》を唱え、続唱で《朽ちゆくヒル》がめくりだされた。

 しかし! ここでNassifはニヤリと笑って《二重否定》。

中村 「もってるのかぁ、ここ...」

 さすがの勝負強さ、鮮烈なトップデッキを披露するNassif。

 続くターンにNassifは《ジュワー島のスフィンクス》を召喚し、対する中村は《若き群れのドラゴン》召喚で応じた。

 ここから静かにドローゴーを続けるNassifに対し、《芽吹くトリナクス》、《血編み髪のエルフ》から《不屈の自然》と積極的に動く中村。さらに中村は《ゴブリンの廃墟飛ばし》をキッカーで唱えるが、ここに《本質の散乱》をあわせてくるNassif。ならば、とサイドインした《精神腐敗》を続ける中村だったが...Nassifは《急転回》!

 中村は強烈なカウンターパンチを食らってしまい、なんと手札に温存していた第2ゲームのクローザー、《包囲攻撃の司令官》を捨てさせられてしまう。
 
 驚嘆するギャラリー! 落胆の色をかすかににじませる中村。
  ...《急転回》だって!?

 それでも、くぐり抜けてきた修羅場の数が違うベテラン中村。序盤に会心の《思考の大出血》を決めて《残酷な根本原理》を追放しているだけに、アグレッシブな攻めに活路を見出したようだ。敵陣の「5/5飛行・被覆」の《ジュワー島のスフィンクス》をものともせず、勇躍してフルアタック!

 4/4飛行ドラゴン、4/4飛行ドラゴントークン、3/3トリナクス、3/2エルフによるアタックを前に、様々なブロックプランを検証するNassif。試合を終えた盟友Patrick Chapinも駆けつけ、Nassifのプレイを見守る中...スフィンクスで《芽吹くトリナクス》をブロック宣言。一気にNassifのライフは9点まで削り落される。

 返すターン、NassifはX=2の《地震/Earthquake》によって敵陣地上兵力を一掃。これによって4/4飛行を二体コントロールする中村と5/5被覆・飛行を擁するNassifが完全な睨みあいとなる。

 そう、二人の強豪による戦いは、消耗戦の果てのトップデッキ合戦ということとなったのだ。

 そして...

 またしても!

 Nassifは《プレインズウォーカー、ニコル・ボーラス》をトップデッキ!

 力なく土地を引き続けた中村をよそに、Gabriel Nassifが貴重な白星を手にすることとなった一戦だった。

Nassif 2-1 中村

 世はまさに「ジャンド時代」。実際問題、ここ世界選手権でも「ジャンド」使用者はかなりの数となるだろう。しかし、ここローマにかけつけたプレインズウォーカーたちはさまざまな意欲作によって時代を斬り裂こうとしてもいるのである。

 「ジャンドをめぐる戦い」の行方を、是非とも見届けていただきたい。

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