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yayaの奇妙な冒険 第1部:MOクラシック

yayaの奇妙な冒険 第1部:MOクラシック

By Daisuke Kawasaki

 世界選手権初日スタンダード6回戦が終了し、世界選手権は国別選手権モードに突入した。

 かに見えたが、その一方で、会場に特設されたMagic Onlineブースでは、Magic Onlineチャンピオンシップが開催されようとしていた。

 有名ジャンキーが闊歩する魔境として知られる電脳世界Magic Online。もちろん、多くのプレイヤーにとっては、日常生活の数少ない隙間時間をうまく利用してマジックをプレイできる便利なツールであるMagic Onlineではあるが、しかし、一方で、プレミアイベント出場によって獲得できるポイントを積み重ねに積み重ね、8名のみという狭き門、このMOチャンピオンシップへの参加権を獲得するようなジャンキープレイヤーがいることもまた事実。

 このMOチャンピオンシップは、世界選手権各日程の通常ラウンドが終了した後に、国別対抗戦が行われるのと同じタイミングで三日間3ラウンドずつ開催され、上位2名が日曜日に開催される決勝戦を戦うことになる。

 世界選手権の裏番組と侮る事なかれ、この大会では、優勝者に100万円という高額賞金が用意されているのだ。

 8名の選ばれた猛者、エリート中のエリートプレインズウォーカーが戦い抜く、マジック史上屈指のソリッドなトーナメント。

 この記事は、そんな煉獄に迷い込んでしまったひとりの日本人マジックプレイヤーの奮戦の様子をお伝えするものである。

 そのプレイヤーの名前は...仮にyaya3としよう。


第一部:ファントム《恐血鬼/Bloodghast》


 MOアカウント「yaya3」は、ご存じの方もいるかもしれないが、本年度のMagic Online上のPlayer of The Yearを獲得した、MOジャンキーの中でも一目置かれる存在である。

 その正体は...という話をすることにも特には意味は無いだろう。Magic Onlineはリアルのマジックのトーナメントシーンとは、まったく別の文化を持つ世界。たとえば、「FFFreak」ことBrad Nelson(アメリカ)のように、電脳世界での知名度が先にあり、その後トーナメントシーンにデビューしていったプレイヤーの例もあるが、しかし、必要なのは「yaya3」の経歴ではない。

 「yaya3」がMOPoYを獲得しうるだけのプレイヤースキルと長時間のプレイを苦にしないマジック愛を持ったプレイヤーで有ることがわかれば問題ないだろう。

 そして、「yaya3」は、MOPoYのみならず、MOチャンピオンの座をも獲得するべく、このローマの地へと足を運んだのだ。

 初日にyaya3を待ち受けるフォーマットは、MOクラシック。

 聞き覚えの無い方もいるかもしれないので、簡単にご説明しよう。

 MOクラシックとは、端的に言えば、「これまでにMagic Online上で発行されたすべてのカードを(一部の制限をのぞけば)自由に使用することの出来るフォーマット」である。

 Magic Onlineの稼働こそ、マジックの歴史上からみれば浅い歴史であるものの、たとえばミラージュブロックの再販のように、積極的に過去のセットがデータとして提供されていくため、思いのほかそのカードプールは広い。

 そして、タダでさえ広いカードプールをさらにカオスなものとしているのが、Master Editionと呼ばれる「再録エキスパンション」シリーズの存在だ。

 デュアルランドをはじめとして、《Force of Will》などの絶版カード大量投入のこのエキスパンション。「現物化不可」という条件付きであるために、いわゆる「再録禁止カード」も大量に投入されているのだ。

 このカオスなカードセットが使用できることで、MOクラシックは、あたかもヴィンテージとレガシーの中間のような奇妙なレギュレーションとなっているのだ。

川崎 「MOクラシックってどんな環境でしょうか?」

yaya3 「一言でいうと、カオスだよね。実はそんなにやってないんで、詳しくはわからないんだけど、《Bazaar of Baghdad》が制限されていなかったりするんで、今回は発掘を選んだんだよね」

川崎 「なるほど、ベタなデッキ選択は、一見ヤソ...yaya3さんらしからぬ感じも受けますけど...」

yaya3 「んー、トップメタだし、メタられなければ、間違いなく勝てるデッキだからね。少人数でのトーナメント(8人)だけに、ひとりでもメタっていない奴がいれば一気に勝率が上がる。だから、こう言う時はメタられなければ強いデッキを使うのも悪くないと思うよ」

川崎 「なるほど」

yaya3 「という理由もあるけど、実は資産の問題もある」

川崎 「え?MOの資産ですか?」

yaya3 「うん、もちろん」

川崎 「へぇ。てっきりカードくらい用意してもらえるものじゃないかと思っていたんですけれどね...」

yaya3 「いや、たとえばインヴィテーショナルのヴィンテージとかも自前のカードじゃない、インヴィテーショナルなのに。それと同じって考えれば、まぁ、一応納得は出来る」

川崎 「なるほど、そういやyaya3さん、インヴィテーショナルの出場経験ありますものね」

yaya3 「そんなリアルの経歴の話はいいよ。で、カード足りなかったから、Sam Black(アメリカ)に《Force of Will》とか借りたんだよね」

川崎 「仲いいですね、サムと」

yaya3 「実はそうでもない。連絡先知らなかったから、なかしゅー(中村 修平)に連絡してもらって、カード借りれる事になったんだけど、MO上で話しかけられて『当日会場で渡せばいいか?』って言われたんだよね」

川崎 「MOのデータをわざわざ直接あって渡すんですか」

yaya3 「実物のカードと間違えてたみたいね。言ったら、その場で貸してもらえたよ」

川崎 「なるほど。しかし、《Force of Will》が会場で必要なのって国別対抗戦のレガシー担当者くらいだと思うんですけど、yaya3さんが日本代表チームだとでも思ったんですかね」

yaya3 「なわけないでしょ。しかし、国別対抗戦とMOチャンピオンシップって同じ時間にやってるけど、もし俺が日本代表になってたらどうする予定だったんだろうね」

川崎 「あ、はじまるみたいですよ」

 触れてはいけない世界の真理に触れ、命のやりとりをしかねないところだったyaya3を危うく助けた筆者。まぁ、そんな話はさておいて、吸血鬼ならぬ《恐血鬼/Bloodghast》をお供に、電脳世界の猛者たちと戦い抜くことになったyaya3。果たして、発掘デッキは電脳の海を渡りきることができるのだろうか。

 ちなみに、文中で、MOクラシックはカオス、という話をしたが、具体例が無いのもアレなので、yaya3以外のマッチアップでの実例をひとつお伝えしよう。

 デックは、《Helm of Obedience》と《虚空の力線/Leyline of the Void》のコンボデックである。{X}{T}で起動し、X枚のカードが墓地に落ちるまで山札をめくり、そして途中でクリーチャーが出てきた場合は、それのコントロールを得るという《Helm of Obedience》。

 実は、ノークリーチャーの《Kjeldoran Outpost》時代には、ライブラリーアウト狙いの対策カードとして使用された実績もあるこのカード。しかし、このデックは、《Helm of Obedience》の墓地に落ちるまでの部分を悪用する。

 そう、《虚空の力線/Leyline of the Void》が張られていれば、カードは墓地に落ちないので、山札が無くなるまでライブラリーがめくられることになるのだ。

 このコンボの恐るべき瞬殺パターンをお届けしよう。

 対戦相手は、いわゆるクロック・パーミ系のデックである。

 まず、1ターン目。セット《沼/Swamp》から《強迫/Duress》で、《Force of Will》を抜くと、3枚の《水蓮の花びら/Lotus Petal》から《ネクロポーテンス/Necropotence》をキャストし、手札を最大限まで増加させる。

 続くターンに、《暗黒の儀式/Dark Ritual》2枚から《Helm of Obedience》そして、《Demonic Tutor》。これで対戦相手は投了である。

 さすがに《Demonic Tutor》や《ネクロポーテンス/Necropotence》は制限カードであるものの、このような2ターンキルが横行するのが、このMOクラシックという環境なのだ。

 それではyaya3のMOクラシック3ラウンドをみていこう。


Round 1:Ivan_kulbich_aka_Striped

Game 1

 初手に2枚の《虚空の力線/Leyline of the Void》を持っているyaya3。これを戦場に出すが、相手は1ターン目に《通りの悪霊/Street Wraith》をサイクリング。

yaya3 「...ストーム系か...《虚空の力線/Leyline of the Void》損した」

 《陰謀団式療法/Cabal Therapy》で《むかつき/Ad Nauseam》を指定するが、相手の手札にあったのは《ゴブリンの放火砲/Goblin Charbelcher》。

 次のターンには大量のマナ加速からの《ゴブリンの放火砲/Goblin Charbelcher》起動で、94点のダメージ。ライフはマイナス74。

Game 2

 《Bazaar of Baghdad》2枚と大量の発掘カードによって、ほとんどのライブラリーが墓地に送り込まれることとなる。

 《黄泉からの橋/Bridge from Below》×4と、《恐血鬼/Bloodghast》×4が《戦慄の復活/Dread Return》《炎の血族の盲信者/Flame-Kin Zealot》の力を借りて、一瞬で相手のライフはマイナスに。

Game 3

 対戦相手はなんとか《ゴブリンの放火砲/Goblin Charbelcher》をキャストしたものの、それを起動するだけのマナを確保できず、そのうちに、yaya3のコンボが決まって、勝利。


Round 2:Orgg Ascetic

 対戦相手のデックは、《絵描きの召使い/Painter's Servant》と《丸砥石/Grindstone》で一気にライブラリーアウトを狙うデック。
Game 1

 yaya3が2ターンキル。

Game 2

 《Bazaar of Baghdad》によって十分に墓地を肥やしたyaya3だったが、ここで《黄泉からの橋/Bridge from Below》に《根絶/Extirpate》を打ち込まれてしまい、瞬殺の形が無くなってしまう。

 とはいえ、すでに戦場には《ナルコメーバ/Narcomoeba》と2/2トークンが1体いた上に、手札には《Force of Will》があったので、万全の体制のyaya3。

 《陰謀団式療法/Cabal Therapy》によって、すでに手札の《絵描きの召使い/Painter's Servant》は確認済。《丸砥石/Grindstone》こそキャストされているものの、《絵描きの召使い/Painter's Servant》は《Force of Will》で食い止める。対戦相手の手札は1枚。

 しかし、ここでyaya3は考えた。なぜ相手はまだライフに余裕があるのに、焦って《絵描きの召使い/Painter's Servant》をキャストしてきたのだろうかと。

 そして、熟考の末に取ったプレイングは、《陰謀団式療法/Cabal Therapy》フラッシュバック。宣言は《絵描きの召使い/Painter's Servant》!

 見事対戦相手の最後の手札である《絵描きの召使い/Painter's Servant》をディスカードさせ、yaya3は危なげなく勝利したのだった。

 ケアに定評のあるyaya3ならではのプレイであったといえるだろう。


Round 3:Anathik

 先ほど紹介した《Helm of Obedience》《虚空の力線/Leyline of the Void》デックとの全勝対決。メインから《虚空の力線/Leyline of the Void》をとってくるこのデックは天敵とも言える。

Game 1

 案の定、ゲーム開始前に置かれる《虚空の力線/Leyline of the Void》。そして、《強迫/Duress》がyaya3の《Force of Will》を無理矢理使わせる。

 2ターン目に《絵描きの召使い/Painter's Servant》までキャスト(このデッキは《絵描きの召使い/Painter's Servant》《丸砥石/Grindstone》とのハイブリッドなのだ)され、抵抗むなしくyaya3投了。

Game 2

 《虚空の力線/Leyline of the Void》を引くまでマリガンを繰り返した相手だったが、それにより、手札の枚数が著しく減り、デックの爆発力が削がれてしまう。

 《エメラルドの魔除け/Emerald Charm》を駆使しつつ、2体の《ナルコメーバ/Narcomoeba》と《臭い草のインプ/Stinkweed Imp》でのビートダウンを決行するyaya3。

 途中、《修繕/Tinker》で《ダークスティールの巨像/Darksteel Colossus》をサーチされるという場面もあったが、《蒸気の連鎖/Chain of Vapor》で対処し、パワー1飛行でのビートダウンを達成する。

Game 3

yaya3 「相手7枚でキープしたぁ...」

 当然ゲーム開始前に戦場に出される《虚空の力線/Leyline of the Void》、2枚。そして、2ターン目の《イクスリッドの看守/Yixlid Jailer》。

 《エメラルドの魔除け/Emerald Charm》は引き当てたものの、色マナの出る土地が遅れたことで、今度は、yaya3が《イクスリッドの看守/Yixlid Jailer》と《絵描きの召使い/Painter's Servant》によるビートダウンをされてしまう。

 なんとか持ちこたえられるかと言うところで、《丸砥石/Grindstone》のキャストで《イクスリッドの看守/Yixlid Jailer》への対応用に手札に握っていた《蒸気の連鎖/Chain of Vapor》を使わされ、さらに《貪欲な罠/Ravenous Trap》まで使用という圧倒的な対策カードによって、初日全勝とはならなかった。


 以上、簡素ながら、yaya3の本日の対戦記録である。

 Magic Onlineにアクセス出来る方なら、もっと詳細なレポートを確認することも可能なので、この機会にMagic Onlineに挑戦してみてはいかがだろうか?

 閑話休題。初日を2-1という好成績ながら不満の表情を隠さないyaya3。

川崎 「お疲れ様でした。不満そうですけれども、2勝は十分じゃないですか?」

yaya3 「これはいいんだけどさ、もうMOクラシック終わったかと思うと...」

川崎 「あぁ、楽しかったですか、やっぱ」

yaya3 「そうだね。正直気分転換にもなるし、結構楽しかったよ」

川崎 「ちなみに、明日はゼンディカードラフト3回戦ですが」

yaya3 「それが憂鬱なんだよね。正直世界選手権本戦で、ゼンディカードラフト2回、6回戦やるわけじゃない。そのあと、さらにゼンディカードラフトでしょ。せっかくMOなんだし、もっと別のエキスパンションでもよかったんじゃないかな」

川崎 「あぁ、たしかに、その方が面白いかもしれませんよね」

yaya3 「ね。予選ラウンドは嫌だけど、決勝戦だけだったらモミール・ベーシック(支払ったマナコストと同じマナコストのクリーチャートークンをランダムに生み出すモミールアバターと基本地形のデッキだけで戦うMO固有のフォーマット)でもよかったくらいだよ」

川崎 「yaya3さんといえば、世界でもっともモミール・ベーシックが強いと言われた人ですよね、そういえば」

yaya3 「最近はあんまりやってないから、さすがに世界一はないかな」

川崎 「そんな話はさておいて、明日のドラフトの戦略なんかを聞かせていただいてもいいですかね?」

yaya3 「いやぁ、3回やるのは本当に憂鬱だ」

 なんだか最後はごまかされてしまったような気もするし、英語版カバレージのインタビューにはなんだか、マジックプレイヤーらしい返答をしていたような気もするが、英語のわからない筆者にはわからない。

 なんにしろ、好スタートを切ったyaya3。明日の第二部もぜひともご確認いただきたい。

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