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2nd Draft:Drafting with Watanabe Yuya

2nd Draft:Drafting with Watanabe Yuya

By Daisuke Kawasaki

渡辺 「4勝5敗の僕に、なにかごようですか?」

 今シーズン後半の「ナベ・ブッディ」とまで呼ばれるほどの好調がウソのように、今回の世界選手権では不調が目立つ渡辺 雄也。実際、第1ドラフトでは、1-2という渡辺らしからぬ成績であり、齋藤 友晴やMartin Juzaの好調と併せて考えると、盤石と思われていたPlayer of The Yearも、少々危なくなってきた感じである。

渡辺 「正直、ジュザやトモハル君がトップ8入ったら祈るだけですよ」

 とはいえ、まだまだ本人の点数上乗せも十分に期待出来るし、なにより渡辺には国別対抗戦での追加得点が残されている。そのためにも、1ラウンド1ラウンドでの得点の積み重ねがまだまだ必要だ。渡辺には休む暇などないのだ。

 というわけで、第2ドラフトでは、必死に勝ち点を重ねなければならない渡辺の、必死なドラフトをお届けしよう。

渡辺 「悪趣味ですね」

 なんと言われようと、渡辺は、リミテッド中心だった今シーズン後半で、もっともプロポイントを稼ぎだしたプレイヤーなのだ。

 そのドラフトテクニックをみたくない人間がいるわけがない。


■第1パック

 以下が、渡辺の第1パックのピックだ。

順目 ピックしたカード その他候補
1 《噴出の稲妻》 《巨森、オラン=リーフ》《心臓刺しの蚊》《空の遺跡のドレイク》
2 《板金鎧の土百足》 《コーの鉤の達人》
3 《ステップのオオヤマネコ》 《巨森の蔦》
4 《領地のベイロス》 《コーの地図作り》《クラーケンの幼子》
5 《尖塔の連射》 《大木口の幼生》
6 《ゴブリンの廃墟飛ばし》 《オラン=リーフの出家蜘蛛》
7 《タクタクの唸り屋》 《破滅的なミノタウルス》《高地の狂戦士》
8 《無謀な識者》 《沼のぼろ布まとい》《面晶体のカニ》
9 《ゴブリンの奇襲隊》
10 《髑髏砕きの巨人》

 それでは要点となるピックを確認していこう。

初手

 「やりたい色は青」とピック開始前には語っていた渡辺だが、ここでは青い《空の遺跡のドレイク/Sky Ruin Drake》ではなく、《噴出の稲妻/Burst Lightning》をピック。

渡辺 「さすがにカードパワーが違いますし、あと、どんなデッキでもどんなタイミングで引いても強いんで、受けの広さが違いすぎます」

3手目

渡辺 「ここは《巨森の蔦/Vines of Vastwood》との2択でしたけど、2手目で《板金鎧の土百足/Plated Geopede》取れていたのもありますから、《ステップのオオヤマネコ/Steppe Lynx》をピックしましたね」

4手目

 2手目・3手目で赤白上陸系のカードをピックしていた渡辺。ここは白い《コーの地図作り/Kor Cartographer》や、赤白系では必須とも言える《ゴブリンの奇襲隊/Goblin Bushwhacker》でも良かったように見えるが...

渡辺 「実際《ゴブリンの奇襲隊/Goblin Bushwhacker》は結構なやんだんですけど、カードパワーで《領地のベイロス/Territorial Baloth》をこの順目では確保しましたね。ここで《ゴブリンの奇襲隊/Goblin Bushwhacker》を取ってしまうと、もう赤白上陸系に行くしか無くて受けが狭いんですよ。あとでも取れるカードなんで、ここは受けが広い選択肢をとって構えました」

5手目

 ここまで、かなり受けの広さを考えてピックしていた渡辺だが、どこかでデック全体の方針を決めなければならない。

 そういう意味で、このドラフト全体を通しての決め手となったピックはこの5手目の《尖塔の連射/Spire Barrage》であった。

渡辺 「5手目の段階で《尖塔の連射/Spire Barrage》が流れてきたって事は、2手目の《板金鎧の土百足/Plated Geopede》とあわせて、赤単ができそうだなと感じました。あと、実際、ここは《大木口の幼生/Timbermaw Larva》から緑単っていう選択肢もあるんですけど《大木口の幼生/Timbermaw Larva》だと、本当に緑単系のみでしか使えないので、一応受けの広さも残しつつ...でも、ほとんど赤単をやる気にはなってましたね」

8手目

渡辺 「さっき言ったように、ほとんど赤単のつもりではいたんですけど、この順目で他にめぼしいものが無い時だったんで、赤青もできるように、拾える時には拾っておこうかなと」

9手目

 このカードが一周してきた時、渡辺は、背中越しにみてもわかるくらいに喜びをあらわにしていた。

渡辺 「これは嬉しかったですね。パックの内容的に1周してくるだろうという予想は大体できていたんですけど、実際に流れてきたのは、素直に嬉しかったです」

 この初手の時点での《ゴブリンの奇襲隊/Goblin Bushwhacker》に限らず、渡辺はカードをピックする際に、一周でどのあたりのカードがピックされるかを(おそらく標準的な卓内色分布を踏まえて)十分に検討している。

 渡辺に限らず、プロプレイヤーと呼ばれるプレイヤーたちのほとんどがやっていることではあるが、単純にパックの中で一番強いカードをピックするだけで終わり、ではなく、余った時間で卓全体のピックの流れを想像することで、より明確なビジョンを持ったピックをすることができる。

 簡単に「お試しあれ!」と言えるような技術ではないが、意識してみることでまた、違ったドラフトの魅力に気づくことができるのではないだろうか。

10手目

渡辺 「ただ、ラッキーでしたね」


第2パック

順目 ピックしたカード その他候補
1 《タクタクの唸り屋》 《エメリアの盾、イオナ/Iona, Shield of Emeria》《高地の狂戦士》
2 《噴出の稲妻》 《タクタクの唸り屋》
3 《松明投げ》 《海門の伝承師》
4 《猛火の松明》 《冒険者の装具》
5 《尖塔の連射》
6 《刃牙の猪》
7 《破滅的なミノタウルス》
8 《地鳴りの揺るぎ》 《ゴブリンの戦化粧》
9 《エメリアの盾、イオナ》
10 《タクタクの唸り屋》
初手

渡辺 「正直、低マナ域が足りなくなることは予想できたんで、《高地の狂戦士/Highland Berserker》も欲しかったと言えば欲しかったんですけど、さすがにカードパワーが違いすぎるので...同盟者同士で《高地の狂戦士/Highland Berserker》から取るのはこの段階ではさすがに無いと思いますよ」

2手目

渡辺 「《タクタクの唸り屋/Tuktuk Grunts》が2枚すでに取れているので、デッキが重くなりそうでしたから《タクタクの唸り屋/Tuktuk Grunts》3枚目には手が出しにくいです。まぁ、そんなことと関係なく単純に《噴出の稲妻/Burst Lightning》はいつ引いても強いんで、普通にこっちですけど」

3手目

 ほぼ、赤単路線を固めていた渡辺ではあったが、実はこの3手目は時間ギリギリまで《海門の伝承師/Sea Gate Loremaster》となやんでいた。

渡辺 「結構同盟者取れていましたし、1パック目で《無謀な識者/Reckless Scholar》を手にも入れていたんで、赤青同盟者も検討しました。ただ、やっぱ《尖塔の連射/Spire Barrage》を5手目でとれた、っていうのを信じようかなと。3パック目でも《尖塔の連射/Spire Barrage》を取れる可能性が高いわけですから」

5手目

渡辺 「ここは他に赤いカードが無かったんですけど。3パック目じゃなくて、2パック目でとれたのは大きいですね」

8手目

 ここは非常に細かい話になるが、単純なカードパワーでいえば《ゴブリンの戦化粧/Goblin War Paint》の方が高い。また、《地鳴りの揺るぎ/Seismic Shudder》はほとんどメインボードに入ることがなく、サイドボード専用カードといってもいい。

 実際に、ピック時にはかなり迷いを見せていたが、最終的には明確なビジョンの元に《地鳴りの揺るぎ/Seismic Shudder》をピックしたという。

渡辺 「たしかに《ゴブリンの戦化粧/Goblin War Paint》の方がカードとしては強いんですけどね。ただ、ここまで2マナ域をほとんどとれていないですし、このパックで確保できる見通しもほとんどないんで、デッキが重い順目で動き出すんですよ。だから、《ゴブリンの戦化粧/Goblin War Paint》が活躍するゲームにはならない。むしろ、相手が早いデッキだったときの受けのサイドボードとして、序盤から動けるカードを確保しておきたかったんですよね」

 実際に、この時点で軽いカードが少ない、というのはデックの構造的な問題点ではあった。

10手目

渡辺 「さすがにこの順目で流れてきたら拾います。結局、5マナ域多すぎてデッキには入りませんでしたけどね」


■第3パック

順目 ピックしたカード その他候補
1 《ゴブリンの近道抜け》 《マラキールの血魔女》
2 《高地の狂戦士》 《見栄え損ない/Disfigure》《心臓刺しの蚊》
3 《ゼクター祭殿の探検》 《不安定な足場》
4 《噴出の稲妻》 《ムラーサの紅蓮術士/Murasa Pyromancer》《タクタクの唸り屋》
5 《破滅的なミノタウルス》
6 《刃牙の猪》 《松明投げ》
7 《ゼクター祭殿の探検》 《破滅的なミノタウルス》
8 《殺戮の叫び》 《ぐらつく峰》
初手

 ここで渡辺が流したカードは、環境でもトップレベルのレアである《マラキールの血魔女/Malakir Bloodwitch》。

渡辺 「いや、これはホント、苦渋の選択でした。とにかく3パック目で2マナ域を確保しないといけなかったんで...《マラキールの血魔女/Malakir Bloodwitch》で負けるのはたしかに嫌なんですけど、でも、これはホントしかたなかったです」

 この渡辺の選択には、齋藤 友晴も

齋藤 「いや《ゴブリンの近道抜け/Goblin Shortcutter》とるよね」

 とお墨付き。

2手目

渡辺 「《見栄え損ない/Disfigure》は魅力的ではあるんですけどね。ただ、2パック目までで《尖塔の連射/Spire Barrage》を2枚とれていたので、色を散らすほどではないかと。2マナ域も欲しかったですしね」

4手目

渡辺 「これは、本当に嬉しかったですね。3枚目は心強いです。ただ、ここまで赤がキツイ流れの中、このパックだけ一気に赤のカードが増えたので、ちょっともったいない感じはありますよね」

6手目

渡辺 「《松明投げ/Torch Slinger》と《刃牙の猪/Bladetusk Boar》はカードの強さ的には結構なやむんですよ...ただ、この時にはすでに《松明投げ/Torch Slinger》は1枚ありましたし、デッキ全体のマナコストと《噴出の稲妻/Burst Lightning》3枚を考えると、2枚目はいらないかなと」

 全体的にわかることだが、渡辺はデッキ全体のマナ域と、それによるデッキの動きをかなり強く意識してカードをピックしている。

 このように、強弱での判断が難しいピックの時には、かなり心強い判断基準になるので、カード全体の強さだけでなく、漠然とでもマナ域を意識したピックをすることがドラフト上達の助けになるのではないだろうか。

8手目

 最後の最後ながら、ある意味一番の問題ピックであると言えるのがこの3パック目の8手目である。

 ちなみに、もうひとつの考慮対象は《ぐらつく峰/Teetering Peaks》。

渡辺 「これは、本当に難しいです。このデッキの場合、《ぐらつく峰/Teetering Peaks》も本当に強いんですよ。というか、《ぐらつく峰/Teetering Peaks》自体が普通に強いカードです」

 盛んに《ぐらつく峰/Teetering Peaks》の強さを主張する渡辺。

渡辺 「ただ、やっぱり、ここでもマナ域が後ろに寄っているっていうのを考えましたね。5マナまでいければ強いデッキなので、5マナ域までつなぐカードが欲しかったんですよ。《ぐらつく峰/Teetering Peaks》はあまりそういう使い方できませんけど、《殺戮の叫び/Slaughter Cry》は3マナ4マナ域の戦闘でのトリックで相手に干渉できる、そう考えて、このカードを取りましたね」

 また、《尖塔の連射/Spire Barrage》の破壊力に頼ったデックでもあるため、できるだけ《山/Mountain》だけで組みたかったとも語る。

渡辺 「本当に理由として弱いですけどね。これは正解がまだわかりません」

 流れをつかみ、順調に強力な赤単を組んだように見えるピックリストであるが、一つ一つのカードのチョイスには渡辺の強い意志が見える。

渡辺 「100点満点で80点くらいあげていいんじゃないですかね」

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 さて、ここで是非とも3-0しておきたい渡辺の、3ラウンドをみていこう。


Round 10

 対戦相手は渡辺の3人下で、非常に強力な黒緑同盟者系のデック。

渡辺 「相当危なかったです。お互いまわって1本ずつとった上で、3本目、運良く地上を膠着させることができたんで、最後に《尖塔の連射/Spire Barrage》で11点本体に打ち込んで勝てました」

 やはり、《尖塔の連射/Spire Barrage》のカードパワー恐るべし、といったところか。

Round 11

 対戦相手の色は青黒。とはいえ、このマッチは相手が2ゲームとも事故ったため、かなり楽に戦えたという。

渡辺 「どれくらい楽だったかっていうと《マラキールの血魔女/Malakir Bloodwitch》を出された返しのフルアタックで勝てちゃったくらいでした。これで《マラキールの血魔女/Malakir Bloodwitch》の憂いはなくなったんで、気が楽になりましたよ。あとは《ぐらつく峰/Teetering Peaks》で負けさえしなければ」

 というわけで、ここまで2連勝の渡辺。

 3連勝のかかった最終戦はフィーチャリングマッチとなっているので、そちらをご覧いただきたい。

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