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Extended Dechtech:齋藤 友晴:Hyper Zoo

Extended Dechtech:齋藤 友晴:Hyper Zoo

By Daisuke Kawasaki

 今回の日本勢が選択したデックの中で最大勢力となったのが齋藤 友晴の作成した最新型Zooこと『Hyper Zoo』だ。

 世界王者となったAndre Coimbraも、齋藤からシェアされたこのデックでエクステンデッドラウンドで4連勝して早々にトップ8進出を決めている。

 齋藤 友晴のデックビルダーとしてのブランドは確立された物であるとみていいだろう。それでは齋藤入魂のデックを紹介しよう。

齋藤 友晴
世界選手権2009
4 《霧深い雨林/Misty Rainforest》
4 《沸騰する小湖/Scalding Tarn》
4 《乾燥台地/Arid Mesa》
2 《寺院の庭/Temple Garden》
2 《踏み鳴らされる地/Stomping Ground》
1 《聖なる鋳造所/Sacred Foundry》
1 《神聖なる泉/Hallowed Fountain》
1 《蒸気孔/Steam Vents》
1 《森/Forest》
1 《平地/Plains》
1 《島/Island》
1 《樹上の村/Treetop Village》

-土地(23)-
4 《貴族の教主/Noble Hierarch》
4 《タルモゴイフ/Tarmogoyf》
4 《聖遺の騎士/Knight of the Reliquary》
4 《悪斬の天使/Baneslayer Angel》
4 《野生のナカティル/Wild Nacatl》

-クリーチャー(20)-
4 《稲妻/Lightning Bolt》
4 《流刑への道/Path to Exile》
3 《稲妻のらせん/Lightning Helix》
4 《バントの魔除け/Bant Charm》
2 《梅澤の十手/Umezawa's Jitte》

-呪文(17)-
4 《翻弄する魔道士/Meddling Mage》
4 《否認/Negate》
4 《貪欲な罠/Ravenous Trap》
3 《トーモッドの墓所/Tormod's Crypt》

-サイドボード(15)-

 Zooの基本的な動きは、ビートダウンである。

 《野生のナカティル/Wild Nacatl》や《タルモゴイフ/Tarmogoyf》というコスト対効果に優れたクリーチャーで殴りつつ、火力や除去でバックアップする。

 「《野生のナカティル/Wild Nacatl》や《タルモゴイフ/Tarmogoyf》以外のパーツでかなり構成をいじれる」と齋藤自身も語るように、根っこのシステムが単純なだけに、様々なバージョンが存在するのがZooというデックの特徴だ。実際、先日のプロツアー・オースティンでは、4人がトップ8に進出しているが、それぞれがそれぞれまったく別のアプローチをしている。

 大別すると、Zooは、5色にして《部族の炎/Tribal Flames》や《アラーラの力/Might of Alara》を投入したドメインZoo。

 《ステップのオオヤマネコ/Steppe Lynx》や《板金鎧の土百足/Plated Geopede》といった上陸クリーチャーを投入した上陸Zoo。

 そして、赤緑白の3色に絞ったNaya Zooの3種類に分類できるのではないかと思う。齋藤がグランプリ・神戸でグランプリ2連覇を達成した時に使用していたのも、このNaya Zooのタイプだ。

 だが、今回、齋藤が持ち込んだHyper Zooは、Naya Zooに青を投入した4色タイプとなっている。

 それでは、このデックに青が入るようになった経緯を齋藤に聞いてみよう。

川崎 「今回もまた、チューンナップされたZooをもちこんだ齋藤さんですが、どのような調整でこの形になったのですか?」

齋藤 「基本はグランプリ・神戸の時と同じで、メタゲーム上に存在するデッキに対して強くなるようにチューンしています」

川崎 「ベースとしてZooを選んだ理由はなんですか?」

齋藤 「Zooは前回のプロツアーで優勝までして、目立っていたからメタられやすそうで避けたかったんですが、Zoo以外の結果を出したデッキが全部脆かったんですよね。たとえば発掘だと墓地破壊、《暗黒の深部/Dark Depths》だとバウンスみたいに単体のカードで対策されやすいデッキばかりだったんですよ。Zooは、たとえば《砂の殉教者/Martyr of Sands》デッキみたいにデッキの構造でメタらないといけないんで、やっぱりZooは動かせないかなと」

川崎 「なるほど。では、具体的な調整について聞いてもいいですか」

齋藤 「ベースとなっているのは、Brian Kiblerがプロツアー・オースティンで使用していたタイプのZooです」

Brian Kibler
プロツアー・オースティン2009 / 優勝
4 《乾燥台地/Arid Mesa》
1 《森/Forest》
1 《幽霊街/Ghost Quarter》
4 《燃え柳の木立ち/Grove of the Burnwillows》
2 《湿地の干潟/Marsh Flats》
4 《霧深い雨林/Misty Rainforest》
1 《山/Mountain》
1 《平地/Plains》
1 《聖なる鋳造所/Sacred Foundry》
2 《踏み鳴らされる地/Stomping Ground》
1 《寺院の庭/Temple Garden》
2 《樹上の村/Treetop Village》

-土地(24)-
3 《悪斬の天使/Baneslayer Angel》
4 《聖遺の騎士/Knight of the Reliquary》
3 《貴族の教主/Noble Hierarch》
3 《クァーサルの群れ魔道士/Qasali Pridemage》
4 《タルモゴイフ/Tarmogoyf》
4 《野生のナカティル/Wild Nacatl》

-クリーチャー(21)-
1 《遍歴の騎士、エルズペス/Elspeth, Knight-Errant》
4 《稲妻/Lightning Bolt》
2 《稲妻のらせん/Lightning Helix》
4 《流刑への道/Path to Exile》
4 《罰する火/Punishing Fire》

-呪文(15)-
3 《古えの遺恨/Ancient Grudge》
3 《血染めの月/Blood Moon》
3 《幽霊街/Ghost Quarter》
1 《神聖なる泉/Hallowed Fountain》
1 《戦争の報い、禍汰奇/Kataki, War's Wage》
4 《翻弄する魔道士/Meddling Mage》

-サイドボード(15)-

齋藤 「このデッキをまわしていて、不満を持ったカードが2つありました。《罰する火/Punishing Fire》と《クァーサルの群れ魔道士/Qasali Pridemage》です」

齋藤 「《罰する火/Punishing Fire》は強い相手には強いけど、メタ的に受けが狭いカードな上に、(《燃え柳の木立ち/Grove of the Burnwillows》との)コンボにならなかった時に、単体が弱いという弱点がありました。《クァーサルの群れ魔道士/Qasali Pridemage》は、その《罰する火/Punishing Fire》に対する耐性が下がるというのがちょっと怪しく感じました」

川崎 「それらのカードを外して《バントの魔除け/Bant Charm》の採用にいたったわけですか」

齋藤 「前回のプロツアーの結果を踏まえても、メタゲームの最上位はZooだと考えていたので、まずはZoo同型対決を考えました。Zooの同型対決の本質っていうのはデカブツと確定除去のゲームなんです。そこで、確定除去を増やしつつ、《クァーサルの群れ魔道士/Qasali Pridemage》を減らせる選択肢になる《バントの魔除け/Bant Charm》は魅力的でした」

川崎 「そこで、青を入れることになったわけですね」

齋藤 「もともと《貴族の教主/Noble Hierarch》が入っているので、青をタッチすることにはあまり抵抗はありませんでした。ただ、どうしてもマナベースが厳しくなるので《燃え柳の木立ち/Grove of the Burnwillows》は入れる事ができなくなったんですけど、ただ、さっきも言ったように《罰する火/Punishing Fire》とのコンボ自体に疑問を持っていたので」

川崎 「メインボードの青いカードは《バントの魔除け/Bant Charm》だけですね」

齋藤 「そうですね。《ロウクスの戦修道士/Rhox War Monk》なんかも検討はしたんですが...」

齋藤 「メタに対応するデッキを作る時は、一覧表みたいなのを作って順位付けしているんですけど、《ロウクスの戦修道士/Rhox War Monk》はかなり順位が低かったんですよね。選択可能なカードプールの中でいうと、《バントの魔除け/Bant Charm》は《梅澤の十手/Umezawa's Jitte》や《稲妻のらせん/Lightning Helix》よりも順位が上だったので採用しました。《悪斬の天使/Baneslayer Angel》もそれらより上でしたね」

川崎 「選択可能なカード、ということですが、逆にZooを作る上で動かせないパーツはどのあたりですか?」

齋藤 「神戸前に《長毛のソクター/Woolly Thoctar》は確定パーツ、っていっておきながら、神戸で《長毛のソクター/Woolly Thoctar》抜けてたんで、確定っていっちゃうのも怖いんですけどね。今回の調整でいうならば、《野生のナカティル/Wild Nacatl》《タルモゴイフ/Tarmogoyf》《聖遺の騎士/Knight of the Reliquary》《稲妻/Lightning Bolt》《流刑への道/Path to Exile》は確定パーツとして扱いました。《悪斬の天使/Baneslayer Angel》もほとんど確定としてみてましたけど」

川崎 「メインボードは《バントの魔除け/Bant Charm》だけですが、サイドボードには結構青いカードがはいっていますね。私見ですけれども、サイド後に齋藤さんがクリーチャーで殴りつつ、《否認/Negate》や《バントの魔除け/Bant Charm》を構えている姿は、シーストンピー(齋藤作のアーキタイプ。赤青緑のカウンター+ビートダウン)を思い出してしまいました」

齋藤 「あぁ、シーストンピーかもしれませんね。《否認/Negate》は家を出る荷物をまとめている時に、フジシュー(藤田 修)さんだったとおもうんですけど『《否認/Negate》はもっていかんの?』っていわれて、持ってきたカードだったんですが、非常に強かったです」

川崎 「あと、サイドボードに入っている青いカードは《翻弄する魔道士/Meddling Mage》ですね」

齋藤 「《翻弄する魔道士/Meddling Mage》は青を入れる段階で、メインかサイドには絶対入るカードになると考えてました。ただ、やっぱりメインだと弱い相手には弱すぎますし、今は白い全体除去が《神の怒り/Wrath of God》と《審判の日/Day of Judgment》でばらけているので、メインはちょっと厳しかったかなと」

川崎 「サイドボードとしては大活躍だったと」

齋藤 「ですね。メインからZoo相手には、サイドボーディングするカードは無いんですが、それ以外のほとんどのデッキにはこの2種類で色々対応できました。今回は発掘をメタるために、サイドボードに墓地対策を7枚はとりたかったので、サイドボードのスペースを空けるという意味でも、役にたってくれました」

川崎 「デックとしては結構満足のいく構成になったと」

齋藤 「今回はZoo自体が非常に警戒されているアーキタイプなので、もともとグレート、ってレベルのデッキは難しいだろうと考えていました。でも、少なくともグッドといえるデッキにはなりましたし、Coimbraの世界王者獲得に貢献できたのでよかったかなと。デッキとしては、今回はスタンダードの方が自信作です」

川崎 「今回の結果を踏まえての改良点はありますか」

齋藤 「うーん、まだわかりませんね。ただ、ポッター(Marijn Lybaert)が使っていた《時間の孤立/Temporal Isolation》は、自分は気づいていなかったカードなので、検討の余地はあると思います。受けは狭いんですが、効く相手への効果が大きいです」

川崎 「なるほど。そのへんはThe Finalsを楽しみにします。さて、The Finals、そしてグランプリ・横浜とエクステンデッドシーズンが続きますが、このデックを使おうと考える人へのアドバイスはありますか?」

齋藤 「見た目はZooなんですが、プレイングがすごく難しいデッキなので、よく練習した方がいいです」

川崎 「シェアされた中野 圭貴さんが『こんな難しいとおもわんかった』っていってましたね、そういえば」

齋藤 「コムシュー(小室 修)もそういってました。《山/Mountain》が入っていないことで、すべてのフェッチが持ってこれる基本地形が1種類ずつしか無いので《聖遺の騎士/Knight of the Reliquary》の能力とかをうまく使わないと色マナが足りなくなって死ぬ事があります。あと、カウンターがあったり、《バントの魔除け/Bant Charm》のモード選択があったりと、選択肢が多いので、そこも難しいです」

川崎 「通常のZooにプラスアルファの難易度ってことですか」

齋藤 「そうですね。Zoo自体も決して簡単なデッキでは無いので、それをちゃんと回せて、なおかつさらに...って感じですね。本当にちゃんと練習しないと厳しいと思います」

川崎 「なるほど。ありがとうございました」

齋藤 「でも、もう動物が《野生のナカティル/Wild Nacatl》しかいないのに、Zoo(動物園)ってのおかしな話ですよね」

 それはZooを超えたZoo、Hyper Zooだからだ!

 Zooを使いこなせている、と自負するあなたは、さらなるアドバンスとして、このHyper Zooをぜひともマスターしてみていただきたい。

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