マジック:ザ・ギャザリング 日本公式ウェブサイト

イベントカバレージ

Round 3:三原 槙仁(千葉) vs. Jan Doise(ベルギー)

Round 3:三原 槙仁(千葉) vs. Jan Doise(ベルギー)

By Jun'ya Takahashi

 時を遡るは4年前。フランスのパリで吹き荒れた《ドラゴンの嵐/Dragonstorm》を覚えておいでだろうか。《炎の儀式/Rite of Flame》と《煮えたぎる歌/Seething Song》から巨大なマナを捻りだしつつストームのカウントを増やし、《ドラゴンの嵐/Dragonstorm》を経由して《ボガーダンのヘルカイト/Bogardan Hellkite》を4体叩きつける、という何とも豪快なコンボデッキのことだ。コンボ自体は単純であるものの、それに至るまでのドロー呪文での手札の整理や、対戦相手の動きに合わせてコンボの速度を変化させなければならないような繊細な側面も持ち合わせているため、一見すると豪快な太刀筋であっても、その握りには奥義とも言える手の内が隠されていることで知られている。

 そんな「繊細かつ豪快」という見事に真逆な二面性を併せ持つ不安定なデッキを乗りこなし、その年の世界チャンピオンに輝いたのが「2006年度世界チャンピオン」こと三原 槙仁(千葉)だ。

R3_Mihara.jpg

 今年の主な活躍では、春先に開催された「グランプリ・仙台2010」での準優勝が目立つだろうか。コントロール対決は繊細に、アグロデッキには豪快に。自分のプレイング・スキルを最も発揮できるコントロールデッキを好んで使用する三原は、今回は森 勝洋(東京)によりチューンナップされた『青黒コントロール』を持ちこんでいる。2連勝という幸先のいいスタートを切っている今大会、嵐を再び巻き起こすことはできるのだろうか。

 「紅葉とエルフの秋」で知られる「プロツアー・ベルリン2008」のトップ8は、ものの見事に『親和エルフ』で埋め尽くされた。トップ8に入賞したプレイヤーの内の6名もが同デッキを使用しており、様々なバージョンが存在したものの、その異様な有様に辟易したプレイヤー達は「どうせ完成度とか関係なく『親和エルフ』ってデッキが強いんでしょ」とその詳細に触れるものは少なかった。しかし、その数週間後にそれらの6つのレシピを改良すべく調整を始めたプレイヤー達は、口をそろえてこう呟くこととなった。

 「Jan Doiseのレシピが最も完成度が高い」

 もちろん後のプレイヤー達が見ればJanのレシピにも不備があるのは当然なのだが、その当時としては最先端を走っており、多くのトッププレイヤー達が模索した「『親和エルフ』の最高形」を最も早く体現していたことは、彼のデッキ構築や選択のセンスが並外れていることを示している。そんな彼が今回お供に決めたデッキは『赤単』。なんともシンプルな選択にも思えるが、昨今増加の一途をたどる『青系コントロール』に対しても戦えるように《溶鉄の尾のマスティコア/Molten-Tail Masticore》等の少し重たいパーツが選択されているのは、彼ならではの的確な調整が伺える。対戦相手の三原のデッキは想定通りの『青黒コントロール』。Janの構築能力が今試される。

Game 1

 ジェスチャーを交えた短い会話の後、さいころの出目で三原の先手でゲームが始まった。

 青と黒の2色土地を2枚置きながら《漸増爆弾/Ratchet Bomb》を設置した三原に対して、Janは2枚の《山/Mountain》から《板金鎧の土百足/Plated Geopede》を展開する。お互いのデッキが明らかとなったところで、三原は続くターンで2枚の《定業/Preordain》によって戦略を整え、《板金鎧の土百足/Plated Geopede》に《見栄え損ない/Disfigure》を撃ち込むことでJanの出足を払いのける。

R3_Doise.jpg

 不満そうな表情を浮かべたJanは、《トゲ撃ちの古老/Spikeshot Elder》を追加するだけで3ターン目を終了した。その動きを弱さと見たのか、三原は試合を一気に動かし始めた。

 まずは《深淵の迫害者/Abyssal Persecutor》。

 返すJanの4ターン目の《溶鉄の尾のマスティコア/Molten-Tail Masticore》は、《精神を刻む者、ジェイス/Jace, the Mind Sculptor》の《送還/Unsummon》能力で軽くいなし、迫害者がゲーム終了へのカウントダウンをスタートする。

 1。

 《精神を刻む者、ジェイス/Jace, the Mind Sculptor》を対処しなければ何も始まらないJanは、とりあえず《よろめきショック/Staggershock》で青いプレインズ・ウォーカーを撃ち落とす。しかし、それを意にも介さない三原は淡々と攻撃を続ける。

 2。

 土地がたんまりと手札に溜まってしまったJanは深くため息をつくと、諦め気味に《溶鉄の尾のマスティコア/Molten-Tail Masticore》をゴブリンの隣に並べた。それを見た三原は淀みない手つきでターン開始のドローステップを興味無さそうに通過し、迫害者で必殺の3発目を繰り出すと、《精神を刻む者、ジェイス/Jace, the Mind Sculptor》を見せてゲームが既に終了していたことを告げた。

 3。

三原 1-0 Jan

Game 2

R3_Mihara_Doise.jpg

Jan 「I start」
三原 「Yes」

 満足げに初手を眺めていたJanは、2枚の《ゴブリンの先達/Goblin Guide》でゲームのスタートボタンを押した。対する三原の初手にはクリーチャーに対する防御手段はなく、慌てて《定業/Preordain》で対処手段を探すが、《吸血鬼の呪詛術士/Vampire Hexmage》しか見当たらない。

 その頼みの綱の吸血鬼による防御網もあっさりと《稲妻/Lightning Bolt》で突破されてしまい、三原は一気に土俵際に追い込まれてしまうが、《破滅の刃/Doom Blade》《方解石のカミツキガメ/Calcite Snapper》と有効な対処手段を続けて引きこむことでなんとかゴブリン達を塞き止める事ができた。しかし、そんな一悶着の間に三原のライフはたったの8にまで削り取られてしまい、「《噴出の稲妻/Burst Lightning》《カルガの竜王/Kargan Dragonlord》《槌のコス/Koth of the Hammer》《反逆の印/Mark of Mutiny》《よろめきショック/Staggershock》2」という土地が3枚で止まっていること以外は文句なしの充実な手札を抱えたJanが勝つのは時間の問題に思えた。

 1枚目の《よろめきショック/Staggershock》は《呪文貫き/Spell Pierce》で回避するものの、2枚目は解決してしまい三原のライフは6に落ちる。数ターン前の脅威であった《トゲ撃ちの古老/Spikeshot Elder》は、《方解石のカミツキガメ/Calcite Snapper》で攻撃したら不思議とブロックされたことで、結果的に何とか対処できたものの、直接的なダメージソースはカウンター出来なければ止めようがない。

 少し諦め気味に《吸血鬼の呪詛術士/Vampire Hexmage》の2枚目を三原が展開すると、《よろめきショック/Staggershock》の反復の解決対象をJanは突然悩みだし、結果的に《吸血鬼の呪詛術士/Vampire Hexmage》を対象にその引き金を絞った。

 本当に本体に向けて打って勝てるのだろうか?

 そんな悩みがあったのかもしれない。手札に抱えたパーマネントを展開し、将来的にブロッカーとして登場するであろう《深淵の迫害者/Abyssal Persecutor》を《反逆の印/Mark of Mutiny》で華麗に勝利したらかっこいいかもしれない。そんな甘えがあったのかもしれない。

 そのターンのドローは《稲妻/Lightning Bolt》で、裏目を引いてしまったJanは少し残念そうな顔をするも作戦通りに《カルガの竜王/Kargan Dragonlord》を展開していく。しかし、Janにとって都合が悪かったのはそのターンのドローだけでなく、前のターンで《破滅の刃/Doom Blade》を引いていた三原にそれを対処されてしまったのだ。

 Janの勝利は零れ落ちるようにその手から離れていく。ブロッカーとして登場したクリーチャーは《反逆の印/Mark of Mutiny》が機能しない《墓所のタイタン/Grave Titan》で、追い詰められた最後のドローが皮肉にも待ち望んでいた4枚目の《山/Mountain》だったのだ。

Jan 「なんか、何回でも勝っていたゲームだった気がするのに......」

 悲しそうにつぶやいたJanはゆっくりと三原に手を差し出した。
 
三原 2-0 Jan

前の記事: Round 3:大礒 正嗣(広島) vs. Thomas Kiene(アメリカ) | 次の記事: 世界選手権2010写真館 DAY 1 前半
イベントカバレージ/世界選手権10 一覧に戻る

イベントカバレージ