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MOCS Day 1:驚愕の苦い花

MOCS Day 1:驚愕の苦い花

By Daisuke Kawasaki

 yaya3こと八十岡 翔太(東京)が見事に決勝戦で散ってから1年がたった。

 今年も「MOの王の船」、もとい、MagicOnline Championship Series(以下MOCS)が世界戦選手権の併催イベントとして開催されることとなった。

 電脳世界の猛者12名が、この千葉幕張メッセに集結することとなった。

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 残念ながら、今年はyaya3の姿はない。だが、yaya3の仇を討つべく、2人の日本人プレイヤーがMOCSにエントリーしている。

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 そのうちのひとり、「Archer.」こと浅原 晃は、前日エントリーのために水曜日にメッセにきて、筆者にこう聞いてきた。

浅原 「ところで、MOCSの明日のレギュレーションって知ってますか?」

川崎 「エクステンデッドだと思いますけど......」

浅原 「なるほど」

川崎 「なるほど、ってどういう意味ですか?」

浅原 「いや、知らないんですよね、レギュレーション」

川崎 「え?気は確かなの?開催は明日なんですよ?」

浅原 「なんの罪もない俺がなぜこんな目に......」

 「無知は罪」という言葉を信じるならば、浅原になんの罪もないことはないだろう。とにかく、レギュレーションを改めて確認した浅原はあわててMOCSの準備をすることとなった。エクステンデッドならば、世界選手権の三日目のレギュレーションである。きっとなんの準備もしていなくても、大丈夫だろう。きっと。

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 もうひとりのMOCS参加の権利を持つ日本人プレイヤー、「riser」こと石村 信太郎(埼玉)は、きちんと準備をしてきたようだ。

石村 「一応、レギュレーションは知ってましたよ」

 筆者の質問に対して、何故そんな質問をするのか、といったように返事をした石村。自宅のPCで構築したデッキをネット上で共有する方法を知らなかったため、会場についてから少し慌てたものの、すぐさまデッキを構築して事なきを得たという。

 使用するデッキは先週の高橋優太の記事で紹介されている「Trap Ramp」。シークレットテックに定評のある石村だけに、隠しテクニックはあるものの、基本的にはオーソドックスなデッキを構築してきたという。

 一方の浅原はどうだろうか?

浅原 「今日の本戦で使った赤緑ヴァラクートに『なんの罪もないヴァラクート』っていう名前をつけたら、本戦で2-4でしたよ......なんの罪もないからって勝てるとは限らないっすね」

川崎 「はぁ。で、使用するデッキは決まったんですか?」

浅原 「そっすね、大体3択です。3種類の『なんの罪もないデッキ』で悩んでます」

川崎 「その『なんの罪もないデッキ』ってなんなんですか?」

浅原 「それは教えられないっすけど、3種類のチューンのどれにするか悩んでるんですよ」

川崎 「それは本戦で使用したいデッキってことですか」

浅原 「そういうことになりますね。あと、一応『気は確かなの?』っていうデッキもあるんですけど」

川崎 「それはどんなデッキですか?」

浅原 「それはですね......(小声でデッキのシステムを説明)」

川崎 「気は確かなの?!」

浅原 「って思いますよね」

川崎 「いや、でも面白いデッキではあります」

浅原 「ローリーさん(藤田 剛史)も、ヤソ(八十岡 翔太)もいいっていったんで、まぁ、じゃあこれでいきますか」

川崎 「たしかに使ってるのを見るのは楽しみですね」

浅原 「いいって言ってる人たちがみんな俺が勝つのに興味がなさそうなのが心配です。俺を助けてくれるのは《八ツ尾半/Eight-and-a-Half-Tails》だけですね」

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 なにはともあれ、浅原のデッキも決まり、無事MOCSが開始された。


 まずは、参加者全員に記念品としてマジックのオリジナルヘッドフォンが配布された。なおこのヘッドフォンのカバーは「ファイレクシア軍」と「ミラディン軍」のものが用意され、自由に選ぶことができた。

 浅原はファイレクシア軍を選択。

 そして石村も、ファイレクシア軍を選択した。

 どうも、日本人参加者はファイレクシア的な物に惹かれる傾向があるようだ。

 一方、このMOCS参加者の中でも最大の大物「FFfreaK」ことBrad Nelson(アメリカ)が選択したのは「ミラディン軍」だった。

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Nelson 「俺はつねに『グッドガイ』でいたいからな」

 満面の笑みで語るBrad Nelson。試しにつけてみたヘッドフォンをしまうのに四苦八苦する姿が非常に愛らしい。


 閑話休題。本戦のスタートである。

 本日のエクステンデッドは全4回戦で行われる。

 浅原・石村の2名は順当に2連勝。この時点で2勝しているのはふたりを合わせて3人。どちらかが1勝のプレイヤーとあたることになる。

 3回戦目が開始され、浅原の対戦相手として表示されたアカウント名は「7720」。石村の初戦の対戦相手であった赤単を使用するプレイヤー、つまりは1勝のプレイヤーである。

 そして、石村の対戦相手として表示されたアカウント名は......「FFfreaK」。そう、Brad Nelsonだ。

 Nelsonが使用するデックはこちらの高橋の記事で紹介されているクイッケントースト、鮮烈土地を多用した多色コントロールだ。

 クリーチャーメインのデッキである石村のデッキ。一時は「青」を宣言した《エメリアの盾、イオナ/Iona, Shield of Emeria》が登場し、優勢な場を作り上げたものの《神の怒り/Wrath of God》で一掃され、敗北してしまうこととなる。


 一方、赤単と対戦するのは浅原。浅原の対戦を見ていた「《苦花/Bitterblossom》師匠」こと高橋 優太(東京)が筆者にこう話しかけてきた。

高橋 「浅原さんのデッキ、気は確かですか?あんな風に《苦花/Bitterblossom》を使うデッキは考えつかなかったです......」

 浅原の戦場には《苦花/Bitterblossom》と《引き裂かれし永劫、エムラクール/Emrakul, the Aeons Torn》。

 そう。浅原のデックは《苦花/Bitterblossom》で《変身/Polymorph》を機能させる「《苦花/Bitterblossom》《変身/Polymorph》デッキ」だったのだ。

浅原 「デッキ名は......KTNとでもしておきましょうか」

 「気は確かなの」の略。相変わらず浅原のデッキ名のセンスはワンダーに満ちている。

 1勝1敗で迎えたGame 3、土地事故気味の対戦相手に、土地を引きすぎた浅原が《変わり谷/Mutavault》《忍び寄るタール坑/Creeping Tar Pit》で対抗する形で決着し、第4回戦は、「Archer.」vs.「FFfreaK」という対戦カード、いや大戦カードとなった。

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 Game 1。序盤から鮮烈土地をタップインしてくるNelsonの隙を突いて、浅原は2ターン目に《苦花/Bitterblossom》を設置する。

 この《苦花/Bitterblossom》から生み出されるフェアリートークンを《マナ漏出/Mana Leak》と《謎めいた命令/Cryptic Command》がサポートすることで、そのままNelsonのライフを削りきってしまった。

 続くGame 2。3ターン目に《エスパーの魔除け/Esper Charm》をNelsonが使用した隙に再び《苦花/Bitterblossom》を設置する浅原。だが、この《苦花/Bitterblossom》は《エスパーの魔除け/Esper Charm》で割られてしまう。

 しかし、その後Nelsonの土地が5枚で止まってしまう。Nelsonは《ジェイス・ベレレン/Jace Beleren》をプレイし、ドローをすすめようとするが、これは《謎めいた命令/Cryptic Command》で押しとどめる浅原。《マナ漏出/Mana Leak》しようとも、タップアウトするわけにいかないNelsonは《ジェイス・ベレレン/Jace Beleren》を墓地に置く。

 ここでの浅原のトップデックが《思考囲い/Thoughtseize》。これをうつとNelsonの手札は

《マナ漏出/Mana Leak》×2
《稲妻/Lightning Bolt》×2
《墓所のタイタン/Grave Titan》
《謎めいた命令/Cryptic Command》
《火山の流弾/Volcanic Fallout》

 という内容。長考の末に、浅原は《稲妻/Lightning Bolt》をディスカードさせる。

 そして、《変わり谷/Mutavault》から出したマナで《変わり谷/Mutavault》をクリーチャー化させると、3マナ残して《変身/Polymorph》を《変わり谷/Mutavault》に。

 《稲妻/Lightning Bolt》を打ち込むNelsonだったが浅原の手札には当然の《マナ漏出/Mana Leak》。そして浅原のヘッドフォン内に響き渡る「テッテレレー」のファンファーレ。


 「MOで強い奴は投了が早い」とは浅原の名言だが、すぐさま投了したNelsonは浅原の元に歩み寄り、そして固い握手をし、浅原のデッキの独創性を褒め称えた。

 実は、初日スタンダード全勝したBrian Kibler(アメリカ)のデックも、浅原がMOで使用しているデッキにインスパイアされ作成されたもの。今やアメリカの強豪の中で浅原は非常に独創的なデッキビルダーとして注目されているのだ。

Nelson 「スタンダードはどんな独創的なデッキをつかっているんだ?」

浅原 「赤緑ヴァラクート」

 Nelsonがちょっと悲しい顔をしたように見えた。もちろん、赤緑ヴァラクート自体にはなんの罪もない。

 浅原からの許可があったので、「サム」ことSamuel Black(アメリカ)も後ろで必死に目コピし、石村をして「三日目はこのデッキにしようかな」とまで言わしめた魅力的なデッキを公開しよう。

KTN?
MOCS 2010 (エクステンデッド)
4 《忍び寄るタール坑/Creeping Tar Pit》
4 《闇滑りの岸/Darkslick Shores》
2 《水没した地下墓地/Drowned Catacomb》
4 《島/Island》
2 《カルニの庭/Khalni Garden》
4 《霧深い雨林/Misty Rainforest》
1 《つぶやき林/Murmuring Bosk》
4 《変わり谷/Mutavault》
2 《沈んだ廃墟/Sunken Ruins》

-土地(27)-
2 《引き裂かれし永劫、エムラクール/Emrakul, the Aeons Torn》

-クリーチャー(2)-
4 《苦花/Bitterblossom》
4 《謎めいた命令/Cryptic Command》
3 《精神を刻む者、ジェイス/Jace, the Mind Sculptor》
4 《マナ漏出/Mana Leak》
4 《変身/Polymorph》
3 《思案/Ponder》
4 《定業/Preordain》
2 《呪文貫き/Spell Pierce》
4 《思考囲い/Thoughtseize》

-呪文(32)-
2 《深淵の迫害者/Abyssal Persecutor》
2 《ワームとぐろエンジン/Wurmcoil Engine》
3 《蔓延/Infest》
1 《墓所のタイタン/Grave Titan》
2 《燻し/Smother》
1 《破滅の刃/Doom Blade》
3 《強迫/Duress》
1 《漸増爆弾/Ratchet Bomb》

-サイドボード(15)-


 なにはともあれ、浅原は全勝し、石村も3勝1敗という好成績で初日を終えた。

石村 「去年のヤソの仇を討たなければ」

 ふたりの思いは同じ。そう、今年こそ、MOCSのタイトルを日本に。

川崎 「浅原さん、明日のレギュレーションは知ってますか?」

浅原 「Masters Edition 4のドラフト、らしいですよ」

 MO上でも発売されたばかりの再録エキスパンション「Masters Edition 4」。

 この圧倒的にカオスな世界を、カオスな二人はどう戦い抜くのか。

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