マジック:ザ・ギャザリング 日本公式ウェブサイト

イベントカバレージ

MOCS Day 3:戦隊の鳴く鷹

MOCS Day 3:戦隊の鳴く鷹

By Daisuke Kawasaki

 世界選手権の三日目が終了し、昨年の世界選手権に引き続き、そして『日本勢は、なぜ勝てなかったのか』で知られるプロツアー・アムステルダムに引き続き、今大会も日本人プレイヤーのトップ8はゼロ人だった。

worlds10_top8.jpg

 しかし、トップ8のメンバーを見てみると、スタープレイヤーが並んでいる。日曜日の対戦は非常に充実して、そして面白いものになりそうだ。日本勢がこの中に入れないことは悔しいが、しかし、それでも楽しめると言うことが日本勢が勝てないと言われる理由のひとつではないかと個人的には思っている。

 特に、トップ8に赤緑ヴァラクートがゼロで、青黒コントロールが5人という事実には驚愕だ。トップ8の使用デッキが、すべてスタンダードの結果から導き出されているわけではないので、それがそのまますぐスタンダードのメタゲームだというわけにはいかないが、日本人プレイヤーのほとんどが赤緑ヴァラクートを選択していたという事実は無視できないだろう。おそらく、日本のメタゲームは遅れていた。

 特に、今回のスタンダードラウンドで注目を集めたのは、初日を全勝したBrian Kibler(アメリカ)の持ち込んだCaw Goこと《戦隊の鷹/Squadron Hawk》入り青白コントロールだろう。Kibler自体は、いわゆる「ナシフ現象」を引き起こしてしまい、トップ8入賞を果たせなかったものの、そのデッキテックのインパクトは今後のメタゲームに大きな影響を与えるであろうことは間違いない。

 そして、そのデッキはKiblerが浅原 晃(神奈川)が使っていたデッキからインスパイアされ使いはじめたというのだ。

川崎 「と、ビデオデッキテックではKiblerが言っていましたけど、本当なんですか?」

浅原 「正確にはちょっと違いますね。Brad Nelson(アメリカ)が聞いてきたんで教えてあげたんですよ。そしたらKiblerが使ってたという」

川崎 「浅原さんが渡したデッキを使っていたと」

浅原 「結構違っていましたけどね、俺のデッキと」

川崎 「オリジナルはどんな感じのデッキだったんですか?」

浅原 「今日のスタンダードで使うデッキですよ」

 そう、MOCS三日目のレギュレーションはスタンダード。そして、浅原が今回使用するデッキはKiblerの「Caw Go」のモデルとなったデッキ、その名も「NTN」だ。

川崎 「『なんの罪もない』でNTNですか。でも、なんでこのデッキで初日でなかったんですか?」

浅原 「ヴァラクートにはなんの罪も無いんですけどね」

 浅原は初日を4-0、2日目を2-1という成績なので、本日2-2すれば、ほぼ確実に日曜日のプレイオフに参加できる事となる。


 一方の「rizer」こと石村 信太朗(埼玉)の使用するデッキは赤緑ヴァラクート。昨日のME4ドラフトで0-3してしまい、今日4連勝して明日に駒を進められるか否かといった所。

 そして、大事な初戦を石村は落としてしまう。

 気を取り直しての第2戦、石村の対戦相手の名前には「Archer.」の名前が。

 浅原も初戦を落としており、ここで運命は日本人同士のつぶし合いを選択したのだ。この日本人対決を制したのは浅原 晃。石村は、続く3戦目も落として0-3で最終戦を迎えた。

石村 「0-3・0-3ときて、最後だけ、4ターン目《原始のタイタン/Primeval Titan》、4ターン目《原始のタイタン/Primeval Titan》というブン回りで終わりました。非常にふがいないです」

MOCSd3_rizer.jpg


 時間は戻って、浅原の3戦目。

 ここで、浅原の対戦相手に表示されたアカウント名は「Mindcandy」。

 そう、三日続けて浅原はOliver Oksとのマッチを戦うことになったのだ。

浅原 「ここまで二日ともOksには勝ってるんで、ここでも勝っておきたいところですね」

 相手がOksか否かにかかわらず、浅原はここで勝利すれば2勝で日曜日進出をほぼ確定させることができる。

MOCSd3_AA.jpg

 対戦するデッキは、赤緑ヴァラクート。本日3戦目のヴァラクートだ。

 Game 1は序盤のOksのブン周りによって、早々に勝負がついた。

 と、誰もが思った。だが、浅原といえば、The Finalsにおいて、3本先取マッチだった決勝を時間の都合で2本先取マッチに変えさせたほど長期戦を得意とする男だ。《原始のタイタン/Primeval Titan》を《精神を刻む者、ジェイス/Jace, the Mind Sculptor》で戻し、《太陽のタイタン/Sun Titan》で《地盤の際/Tectonic Edge》を使い回し、《ゼンディカーの報復者/Avenger of Zendikar》のトークンを《ギデオン・ジュラ/Gideon Jura》にアタックさせる。

 のらりくらりと、死なないようにプレイしているうちに、Oksはガス欠となり、その隙に《天界の列柱/Celestial Colonnade》がライフをじわじわと削っていく。誰もが負けたと思ったマッチを、逆転勝利したのだった。

 だが、その代償は、あまりにも大きかった。

 試合に使われた時間は約40分。Oksには12分弱の時間が残っているのに、浅原に残された時間は8分だ。

 Magic Onlineに詳しくない方のために解説しておくと、MOでは、プレイ時間60分が30分ずつ各プレイヤーに配分されており、自身が優先権を持っているときに減っていく。そしてその時間が0になってしまえば、どんな状況であろうと敗北となる。

 つまり、浅原は、4分ほどの時間的ハンディを持って戦わなければならず、たとえば、3戦目に突入してしまえばOksが浅原の思考時間を上回らない限り、ほぼ敗北してしまうことになる。端的に言えばピンチだ。

 MOの世界に、MOが強い奴はプレイングが早いという言葉がある。

 これは主に投了の話だが、実際、Brad Nelsonや八十岡 翔太をはじめとして、Magic Onlineを主戦場とするプレイヤーは往々にしてプレイングが早い傾向がある。おそらく「自分の持ち時間」が確定している状況では、プレイングの早さがダイレクトにアドバンテージだからそういうスキルが身につくのだろう。

 筆者は浅原はその例外だと思っていた。過去に浅原のマッチを数多く見てきたが、浅原のプレイは遅い。長考がとにかく長いのだ。ほとんど超考だ。

 しかし、浅原もMOプレイヤーの端くれ。時間を犠牲にしたプレイ自体のスキルは持っていた。残り8分だった浅原は5分と自分の時間を使わずに、Oksを倒し、2勝して、トップ8入賞をほぼ確実なものとしたのだ。

 続く4戦目も赤緑ヴァラクート。このマッチもなんなく勝利し、浅原は日曜日のプレイオフに進出することとなる。日本勢として唯一日曜日のマッチを戦うことが可能となった浅原。果たして、昨年のyaya3の仇をとることはできるのか。


 ここで、浅原に、本日使用した青白コントロール「NTN」について簡単な解説をお願いしよう。まずはデッキレシピから。

NTN / Archer.
MagicOnline Championship Series
4 《天界の列柱/Celestial Colonnade》
4 《氷河の城砦/Glacial Fortress》
4 《金属海の沿岸/Seachrome Coast》
1 《霧深い雨林/Misty Rainforest》
4 《平地/Plains》
5 《島/Island》
4 《地盤の際/Tectonic Edge》

-土地(26)-
2 《太陽のタイタン/Sun Titan》
4 《戦隊の鷹/Squadron Hawk》
1 《粗石の魔道士/Trinket Mage》

-クリーチャー(7)-
3 《審判の日/Day of Judgment》
1 《不死の霊薬/Elixir of Immortality》
1 《脆い彫像/Brittle Effigy》
2 《冷静な反論/Stoic Rebuttal》
1 《剥奪/Deprive》
4 《マナ漏出/Mana Leak》
3 《糾弾/Condemn》
2 《未達への旅/Journey to Nowhere》
2 《呪文貫き/Spell Pierce》
4 《精神を刻む者、ジェイス/Jace, the Mind Sculptor》
2 《ジェイス・ベレレン/Jace Beleren》
2 《ギデオン・ジュラ/Gideon Jura》

-呪文(27)-
2 《テューンの戦僧/War Priest of Thune》
1 《真心の光を放つ者/Devout Lightcaster》
3 《天界の粛清/Celestial Purge》
2 《精神壊しの罠/Mindbreak Trap》
4 《瞬間凍結/Flashfreeze》
2 《否認/Negate》
1 《糾弾/Condemn》

-サイドボード(15)-

川崎 「これが、Brad Nelsonに提供したデッキレシピですか」

浅原 「細部に違いがあったかもしれないですけど、ほとんどこのままのレシピを渡したはずです」

川崎 「まずは、このデッキの顔とも言える《戦隊の鷹/Squadron Hawk》を投入することとなったきっかけを教えていただいていいですか?」

浅原 「覚えてないっすね」

川崎 「え?」

浅原 「色々試している時にたまたま試した1枚だった感じで、なにか目的があって《戦隊の鷹/Squadron Hawk》になったわけではないです」

川崎 「多分、普通はここって《前兆の壁/Wall of Omens》が入るスペースだと思うんですけど」

浅原 「そうですね。《前兆の壁/Wall of Omens》も悪くないんですけど、良くもないので色々試してみた感じです」

川崎 「で、《前兆の壁/Wall of Omens》より《戦隊の鷹/Squadron Hawk》の方が優秀だったと」

浅原 「そういうことになりますね」

川崎 「その、《前兆の壁/Wall of Omens》より《戦隊の鷹/Squadron Hawk》が優秀だったという理由を、お願いランキング風に紹介してもらっていいですか?」

浅原 「第5位!《方解石のカミツキガメ/Calcite Snapper》と相打ちできる!」

川崎 「日本製の青黒と戦うときには強力でござーますねー」

浅原 「浅原も、会場で気がついてびっくりしたぞー」

川崎 「結構めんどうくさいので、この後は普通の進行でお願いします」

浅原 「そういう意味でのお願いランキングですね。第4位は相手に《光輝王の昇天/Luminarch Ascension》を出されてもカウンターが載るのを防げるので困らない、ですね」

川崎 「たしかに世界選手権直前に登場していた青白は同型用に《光輝王の昇天/Luminarch Ascension》がメインから入っていたりするものもありましたもんね」

浅原 「そっすね。メインからパーマネントに対処できる手段がほとんど無いので結構重宝します。《精神を刻む者、ジェイス/Jace, the Mind Sculptor》にも対応できますし、《ジェイス・ベレレン/Jace Beleren》なんかはイチコロっすね」

川崎 「いろんなカウンターを取り除きますね。カウンターデッキだけに」

浅原 「どういう意味ですか?」

川崎 「第3位はなんですか?」

浅原 「手札がすぐ7枚になることですね」

川崎 「ドローソースの貧弱さをフォローできてるってことですか」

浅原 「そうですね。実際《精神を刻む者、ジェイス/Jace, the Mind Sculptor》と組み合わさると無双状態です」

川崎 「《戦隊の鷹/Squadron Hawk》を手札にそろえる→《精神を刻む者、ジェイス/Jace, the Mind Sculptor》の0能力を使用して《戦隊の鷹/Squadron Hawk》を2枚ライブラリーに戻す→《戦隊の鷹/Squadron Hawk》を出す」

浅原 「無双、ですね。あと、地味にシャッフルできるのもいいですね」

川崎 「ベタな動きに見えて、意外と無かったデッキテックですね」

浅原 「その、《精神を刻む者、ジェイス/Jace, the Mind Sculptor》と組み合わさった時の動きが第2位です」

川崎 「あ、もう第2位発表されていたんですね。栄えある第1位は?」

浅原 「殴り勝てる」

川崎 「え?」

浅原 「《前兆の壁/Wall of Omens》じゃ殴れないでしょう!」

川崎 「そんなに怒らないでください。結構1/1の飛行じゃ殴り勝つのには心細いように思えますけど」

浅原 「まぁ、意外とそうでもないです。ヴァラクート相手には《戦隊の鷹/Squadron Hawk》で殴って勝ったマッチが結構多いですね。マナ分割して出せる4/4飛行っていう見方もありますよ」

川崎 「なるほど。次は、NelsonやKiblerのデッキには入っていなかった《粗石の魔道士/Trinket Mage》ですね」

浅原 「《粗石の魔道士/Trinket Mage》は基本的には《不死の霊薬/Elixir of Immortality》を使って《戦隊の鷹/Squadron Hawk》を使い回すために入ってますね」

川崎 「序盤だけで使い捨てるのももったいないですしね。あまり多く入れたくないから、という感じで《粗石の魔道士/Trinket Mage》になっているんですか?」

浅原 「そうですね。それで《脆い彫像/Brittle Effigy》という除去のオプションもとれるようになっています」

川崎 「《戦隊の鷹/Squadron Hawk》で殴り勝つってコンセプトなら、《粗石の魔道士/Trinket Mage》用に装備品を入れてみるのもありなんじゃないですか?」

浅原 「《ダークスティールの斧/Darksteel Axe》はちょっと重すぎるので厳しいですね。《シルヴォクの生命杖/Sylvok Lifestaff》は3点ゲインとかもおいしいのでちょっと考えてみてもいいかもしれませんね」

川崎 「それじゃあ、そのほかのいわゆる通常の青白的なオプションについて聞きたいと思います。まずは《ギデオン・ジュラ/Gideon Jura》の採用についてですが......」

浅原 「それは紳士のたしなみですね」

川崎 「え?」

浅原 「紳士ですよ、紳士」

川崎 「えっと、もう少し詳しく説明していただいてよいですか?」

浅原 「ばんじゅん(板東 潤一郎)って知ってますよね?」

川崎 「はい。青白マニア、「人類の英知」こと板東さんですよね」

浅原 「今回、宿が同部屋で、ばんじゅんに『紳士のたしなみ』について教えてもらったんですよ」

川崎 「つまり、それは、青白を使う人が紳士ってことですか」

浅原 「そういうことらしいです。『紳士のたしなみ』としては《ギデオン・ジュラ/Gideon Jura》は入れろ、ということですね。あと、《糾弾/Condemn》はメインとサイドあわせて4枚っていうのも『紳士のたしなみ』です」

川崎 「でも、それって一昨日聞いたんですよね?」

浅原 「いや、まぁ、俺の思ってることと近かったんで、便利な言葉を使ってみることにしました」

川崎 「カウンターの枚数についてですが」

浅原 「これも『紳士のたしなみ』ですが、当然カウンターは入れられるだけ入れるのがいいです。その中でも《マナ漏出/Mana Leak》は4枚確定ですね。今あるカウンターは《マナ漏出/Mana Leak》以外はなにかしら弱いので、そこで取捨選択したかんじです」

川崎 「なるほど。1枚だけ入っているフェッチランドである《霧深い雨林/Misty Rainforest》はなんでですか?」

浅原 「一応、《太陽のタイタン/Sun Titan》で使い回す用ですね。ただあんまり入れても結局使い回す先のカードがなくなってしまうので、1枚が限界です」

川崎 「調整の形は違えども、Brad Nelsonも今回《戦隊の鷹/Squadron Hawk》青白で出ていましたね、MOCS」

浅原 「なんの罪もないBrad Nelsonは今日はボロボロで日曜日進出なりませんでしたけどね。日曜日はNelsonと戦う気がしてたんだけどなぁ」

 というわけで、日曜日に浅原と対戦するのはMO界の帝王『FFfreaK』こと、Brad Nelsonではなかった。もちろん、Oliver Oksでもない。

 日曜日に浅原が戦う相手は......Carlos Romao(ブラジル)。2002年に南米で初めて世界王者になった男である。そう、実はRomaoもMOCSに参加していたのだ。

MOCSd3_Romao_and_AA.jpg


 本戦の方では、PVによる世界王者とPoY逆転が同時発生するか?がトピックになっているが、これによって、世界選手権とMOCSをブラジルが2冠するかという問題となった。

 果たして、浅原は、ブラジルの進撃を食い止める事ができるのか。それより、朝の8時に集合することができるのか。


Magic Online

前の記事: 世界選手権2010写真館 DAY 2~3 | 次の記事: トップ8デッキリスト
イベントカバレージ/世界選手権10 一覧に戻る

イベントカバレージ