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ブロックで遊ぼう

ブロックで遊ぼう

By Mark Rosewater (Translated by YONEMURA "Pao" Kaoru) 原文(英文記事)へ




 毎週毎週コラムを書くためのコツには多くのものがある。内容を作ること、また読みたいと読ませること、それらにはそれぞれ異なった技術が必要なのだ。その種のコツの1つに、「ほのめかし」がある。何か将来書くことを思いついたら、数ヶ月、場合によっては数年前の段階で、「いつかこの件について語ることもあるだろう」と書いておくのだ。そして数ヶ月後、あるいは数年後にその「ほのめかした」ことを実際に書くことができるようになる。今日のコラムもそんな「ほのめかし」の1つだ。

 今年の夏、1年間のまとめ記事の中でこんなことを書いた。

 ゼンディカー・ブロックは、ブロック構成が普通と異なる史上2つ目のブロックになる(ローウィン=シャドウムーア・ブロックが1つ目だ)。アラーラ・ブロックその他多くのブロックで用いられてきた、大/小/小という組み合わせではなく、次のような特徴あるブロックとなる。
・ゼンディカーは、アラーラの断片と同じ枚数(229枚+全面絵の土地20枚)の通常の大型セットである
・ワールドウェイクは、コンフラックスと同じ枚数(145枚)の通常の小型セットであり、ゼンディカーのメカニズムを少しひねって拡張したものである
・ブロックの第3セット「プロスパー」は大型セット(228枚+土地20枚)で、ゼンディカーの次元を舞台にしている。強烈な出来事が起き(この出来事に関するヒントになってしまうので、カードセットの名前は公開できないのだ)、次元が根本から変化してしまうので、完全に新しいメカニズムを搭載した大型セットになるのだ。「プロスパー」は間違いなくゼンディカー・ブロックの一部であるが、疑いようもないほど独特のメカニズムを搭載し、そのセット1つでドラフトできるようにデザインされている。「プロスパー」のデザイン・リーダーはブライアン・ティンスマンで、慣例を破ることに定評のあるブライアンの真骨頂を見せてくれるだろう。ここで詳細について述べることはできないし、その理由を述べることもできないが、「プロスパー」の発売が近づいたらこの奇行の理由について語ることもあるだろう。

 「プロスパーの発売が近づいたら」――そう、まさに今やプロスパーの発売は近づいた。この奇行の理由について語るべき時が来たのだ。ゼンディカー・ブロックで何が起こっているのか、そしてどういう理由でその決定はなされたのか? その謎はこの後解き明かされる。

異常なブロック

 このブロックについて語る前に、マジックの歴史、ブロックの興りについて掘り返してみよう。我々のプレイしているこのゲームを理解するために、このゲームはどこから来たのかを解きほぐしていく必要がある。最初にちょっとした質問をしてみよう。「マジック史上最初にブロックとしてデザインされたブロックの最初のセットである大型セットとは何か?」


 ミラージュ? もし「現代型ブロック」という定義で言えば、それが正解となる。今日我々が考えるようなブロック、すなわち秋に発売される大型のセット-冬、春に発売される拡張セット、という3つのセットの組み合わせ、はミラージュから始まった。しかし、求める正解はそれではない。


 アイスエイジ? 拡張セットが発売された最初の大型セットであり、マジック史上最初のブロックの最初のセットであるのは確かだが、「マジック史上最初のブロックの最初のセット」を求めたわけではない。求めたのは、「マジック史上最初にブロックとしてデザインされたブロックの最初のセットである大型セット」であり、それはアイスエイジではない。


 レジェンド? 何を言っているのだ君は。「ある意味ではそうとも言える」というコメントのつけようもないことを言われても、その、なんだ、困る。
 さて。「マジック史上最初にブロックとしてデザインされたブロックの最初のセットである大型セットとは何か?」の答えだが、正式な名称で言えば「限定版」、族に言われている名前は「アルファ版(あるいはベータ版)」である。分かるかね? 分からない? それならもう一撃提示させて貰うことにしよう。「マジック史上最初にブロックとしてデザインされたブロックとは何か?」だ。それは「ザ・ギャザリング」――そう、我らがマジックが「マジック・ザ・ギャザリング」であるのは、リチャードが物語の始まりである最初のブロックを「ザ・ギャザリング」にするという構想を持っていたからなのだ。
 当時のアイデアでは、マジックは毎年更新され、その大型セット名は「マジック・なんとか」という名前になる予定だった。例えば「マジック・ザ・ギャザリング」に代わって用いられる2つ目の大型セットは「マジック・アイスエイジ」といった案配だ。カードの裏面にロゴが入っているが、そんなことは問題にはしていなかった。最初の予定ではエキスパンションごとに裏面が変わる予定だったのだ。以前開発部に所属していた、そしてマジックのブランド・マネージャーも務めた、スカッフ・エリアスが最後の最後に止めなかったなら、アラビアン・ナイトはアルファ版と違う裏面になるところだったのだ。


 「ザ・ギャザリング」はブロックなのか、というと......リチャードはマジックという名前を永遠に使い続けるのではなく、どこかの時点で新しい名前にしてリセットするという予定だった。後のブロックと違う形ではあるが、この発想が現在のブロックという構成に結びついたのは間違いない。歴史学的観点としては、これがブロックという概念の興りであったと言えるだろう。

アイス・フィッシュ(あるいはブロックを向いて歩こう)




 次にブロックという概念が進化したのは、アライアンスのときだ。アライアンスは史上初めて、他の拡張セットと同じ世界を舞台にしたセットであり、しかもアイスエイジの拡張セットとして市場に出された。アライアンスに関しては重要な情報がある(なんと言っても、私が開発部に所属して最初に働いたセットなのだ。デベロップ・チームは何と13人。当時の開発部全員が参加していたのだ)。アイスエイジの拡張セットとして売られたが、デザイン上はそうではなかったのだ。メカニズム上の関連性のほとんどはデベロップ段階で導入された。悪意には取らないで貰いたい、(スカッフ・エリアス、ジム・リン、デーブ・ペティ、クリス・ペイジによる)アライアンスのデザインはもっとも革新的だったと言っていい。しかし、アイスエイジとの連続性には焦点が当てられていなかったので、私は来るべき未来への道を造ったのだった。


 そして次に来たのがミラージュ・ブロックだ。ことあるごとに言ってきたとおり、アイスエイジとミラージュは、マジックの発売前からリチャードと一緒にやってきた2組の異なるプレイテスト・グループの手によってデザインされている。ミラージュ(デザインしたのはビル・ローズ、ジョエル・ミック、チャーリー・カティノ、ドン・フェリス、ハワード・ハーレンベルク、エリオット・シーガル)は「風変わりな動物園/Menagerie」と呼ばれ、それに続く小型セットとともにデザインされていた。それらのセットとは、もちろんミラージュとビジョンズだ。アイスエイジのポテンシャルを見て、1年間に発売されるセットを一連の物として作り、売るという方針が定まったのだった。「1年」は大型セットの発売される10月に始まることになり、「ブロック」と呼ばれるものは、常に大型セットから始まることになった。


 (ダン・チェルビリ、ジョエル・ミック、マイク・エリオットのデザインした)ウェザーライトは、ミラージュやビジョンズをデザインしたチームとは完全に独立してデザインされたが、同一のブロックに属するそれらの2つのセットの要素と関連づけて、そのブロックの一環だと感じられるようにすると決定されていた。今見返してみれば、それは完全ではなかったと思うかも知れない。そうだとしたら、それは、ウェザーライトのデザインにおいて、なにをすべきかということがまったく定まっていなかったからだ(テーマは墓地だった。ウェザーライトはメカニズム的な意味で墓地が注目された最初のセットだったのだ)。加えて、ウェザーライトはその後4ブロックに渡って繰り広げられるウェザーライト・サーガのプロローグとしても用いられていた。
 テンペスト・ブロックは、最初から3セットがブロックとしてデザインされた最初のブロックだった。ウェザーライト・サーガの物語に沿って、テンペスト・ブロックの物語はウェザーライト号の乗組員たちがラースの次元で繰り広げることに焦点が当てられた。

ブロックのかけら

 ここまで歴史をひもといてきた理由は1つ、我々がなじんでいるブロック構成というのは別に綿密に組み上げられたというものではなく、自然に定まったものだと示すためだ。新しいメカニズムを導入したいとする。しかしそれを1セットだけで使うのがピンと来ないなら、それなりの時間が必要になってくる。1年というのは自然だったから、毎年1つの大型セットを発売することにしたのだった。大-小-小という構成は、1年間に出すカードの量をなんとなく適当かな、という程度で決めたものだ。ご存じの通り、大-小-小という構成は非常に上手くいっている。しかし――そう、「しかし」だ――しかし、これだけがマジックの1年間のデザインにおける正解ではない。
 こんなことを言っていると、映画学校時代に教授から教わったことを思い出してしまう。あれは脚本書きの授業だった。脚本は私が、在籍していたコミュニケーション学部の放送・映画学科の中でも特に集中していたところだった(いいコミュニケーション学部を探しているなら、ボストン大学のコミュニケーション学部がお薦めだ)。授業の最初の日に、この学期に行なうことはただ一つ「脚本を書く」だけだと告げられた。私は手を挙げ、教授とこんな会話を交わすことになった。


: 脚本の長さはどれだけ必要ですか?
教授: そりゃ君、物語の長さによるよ。
: ですが、90分より短かったり2時間より長かったりする脚本は、処女作では売れないと思うのですが。
教授: そうだろうね。
: でしたら、脚本は90分から120分の間のものを作るべきなのではありませんか?
教授: 順が逆だよ。君が伝えたい物語の長さは、君の伝えたい物語によって決まる。それがいかに長かろうと、それがその長さだ。
: では、どうやって商業的に意味がある物語を書けばいいんでしょう?
教授: 必要な長さの物語を探すことを学ぶことだね。

 このやりとりは非常に重要なものだった。クリエイティブのアイデアがそのサイズにあたる。アイデアを無理に大きくしたり小さくしたりするのは、そのアイデアにとっていい結果をもたらさないものだ。もちろん、アイデアには多少の柔軟性はあるけれど、その柔軟性を超えてアイデアをいじくり回してもろくなことにはならない。さて、ブロックのデザインの話に戻ろう。大/小/小はいいテンプレートであり、多くのアイデアはこのテンプレートにぴたりとはまってきたが、すべてではない。実際、このテンプレートに当てはまらなかったために日の目を見ることがなかったアイデアも一つや二つではない(過去のブロックのデザインで使えたかも知れないものもあったのだ)し、中には大きすぎるアイデアもあった。


 ローウィン=シャドウムーアの巨大ブロックは、私にとって目から鱗だった。4セットのブロックという観点で、デザインの新境地が開けたのだ。結局は、4セットを1つのブロックにするのではなく、2セットのブロック2つで巨大ブロックにする、という形になった。ブロックのデザインの自由度は爆発的に上がったが、そこにはまた別の制約が発生した。それは、定型的な大/小/小の形式では決してできなかったことを生み出さなければならないというものだった。


 パンドラの神話(少女が、災厄が詰まっているから決して開けてはならないと言われた箱を好奇心に負けて開けてしまい、世界に災厄をまき散らしたというもの)の解釈の一つに、パンドラが世界に知識を広めたというものがある。何かを知ると、それは二度と未知には戻らない。そして、ローウィン=シャドウムーアのブロック構成は、デザインの世界に間違いなく新しい知識をもたらしたのだ。
 この発見によって、私は再びその教授との初日のやりとりに引き戻された。ブロックのデザインにはサイズがある、大/小/小 というものもあれば、大/小 だけ、あるいは 大 だけのデザインだってある。デザインが新しい可能性を追求するのなら、必要に応じてブロックの再定義をするのも一つの方法だ。――さて、ゼンディカーの話に入ろう。


イワずとしれたブロックの秘密




 このブロックについて話すなら、まずは何を置いても「土地セット」ということから始まる。初期から、クリエイティブ上の困難があることは分かっていた。このブロックは土地に注目している。それはこのブロックの世界で何を意味するのか? なぜ土地が重要なのか? 土地が呪文を唱え、あるいは効果を起こすのはなぜなのか? それらへの答えとして、クリエイティブが提示したのは、土地が貴重で、プレインズウォーカーが多元宇宙全体から探し求めているものだという設定だった。土地自体が独特なエネルギーに満ちあふれ、魔法のような効果をもたらしているのだと。そうなると次に出てくるのは「それはなぜか」という疑問である。


 ロシア人の脚本家、アントン・チェコフ曰く「最初の段落でピストルを壁に掛けたなら、その後の段落で発射されなければならない。そうでないなら、そもそも壁にかけるべきではないのだ」。
 これは「チェコフの銃」として知られているもので、要は物語にはタイミングというものがあるという話である。何らかの要素を導入したなら、それを物語の中で活かさなければならない。観客は、重要っぽい物を見たらそれに集中するものだからだ(脚本家とカード・デザイナーに求められるものはこの点で一致している)。銃を導入すれば、それは当然重要っぽく見える。発射する気がないのなら、脚本にそもそも入れるべきではないのだ。そうしなければ観客は違和感を覚えるだろう(違和感を覚えさせたら負けなのだ)。
 では、ゼンディカー・ブロックではどうか? もちろん、適用される。ゼンディカーの特殊なマナが言わば銃にあたる。そして、第3段落――つまり第3セットで発射されなければならないのだ(書き添えておくと、ブロックには3つのセットがあるのと同様に、物語は3つの段落に分けられる)


 エルドラージ覚醒の物語は、ゼンディカーの次元を根底から覆す。それを的確に表現するためには、それ自身のメカニズムによって立つセットを作らなければならなかった。世界が根底から覆されたことを示すためにどうしたらいいか? 根底から覆せばいい。このセットだけでドラフトができるようにするために、大型セットにする必要があったのだ。


 一方、町の反対側で、私は土地にはブロックのデザインにおける根幹にするだけのポテンシャルがあるということを開発部に理解させるための孤独な戦いを続けていた。ブロックの展望に基づき、土地から3つのセットを作ることができるのだと。やがて、私はそのブロックを3つのセットにするのは無理に引き延ばすことに他ならないと判断した。少し説明させて貰いたい。
 経験上、新しいアイデアが最高の働きを見せるのは小さな部分だ。例えば、混成マナというアイデアは、最初はシャドウムーアのように1セットまるまる投入する予定だったが、最終的にはラヴニカで、全体を通して少しだけ投入する形になった。最初に少しだけ導入したことで消費者の目を慣れさせることができ、後で大量に導入することができるようになるのだ。この手法を用いたことで、混成マナの価値は両方のセットにおいて高まったと考えている。
 「土地テーマ」も同じことが言える。できることはいくらでもあったが、その山のようなものでプレイヤーを圧殺するより、少しだけ投入してよりスマートにインパクトを与えたかったのだ。「土地テーマ」と銘打ちながらも、それまでのブロックよりもテーマ関連のカードが少なかったのはそれが理由である。土地テーマ関連のカードを作れなかったのではなく、新しい物を導入するときはまず少しだけ入れてみるほうがいいと判断したのだ。つまり、セット内の「土地テーマ」の比率を下げ、ブロック全体の計画においても土地にこだわりすぎるのを止めることにした。
 一言で言うと、「土地テーマ」を初めて導入するブロックなので、場所は多すぎても困るのだ。そしてその為に、大/小の2つのセットからなるブロックというアイデアは魅力的だった。このブロックがうまく行ったなら、将来のブロックではより土地に集中したブロックが戻ってくる、かもしれない。(そうしたいというヘッド・デザイナーは数人いる、かもしれない)
 さて、ここに、大/小を必要とするテーマ1つと、大1つを必要とする他のテーマ1つがある。どうする、どうする? これらを組み合わせて、大/小/大のブロックを単一の世界――ただし、3つ目の拡張セットで完全にリセットするほどの物語上の大事件が起こっている――にするというのはどうだろう?


 カードを減らしてセットを小さくすることはできなかったのかという疑問があるかもしれない。実際、我々も一度はそうした。ここで伝えていなかったことも試してみた。必要なサイズより少し小さくして、追加のデザインを入れる場所を作ったのだ。追加のカードを加えても、エルドラージ覚醒が導入された時点でのスタンダード環境は、時のらせん/ローウィン/シャドウムーア 時代に比べてあまりにも小さくなってしまった。どれだけ小さいかというと、エルドラージ覚醒が導入された時点でのスタンダード環境に存在するカードは1356種類(基本土地を含む)。時のらせん/ローウィン/シャドウムーアのスタンダード環境と比べると? 大型セット1つ、小型セット2つ、さらにもう一つ大型セット、3つ目の小型セットまで投入しても、なお少ないのだ(時のらせん/ローウィン/シャドウムーアのスタンダードには実に2263種類のカードが存在した)。エルドラージ覚醒を大型セットにしたところで、前のカードの量には遠く及びはしない。
 エルドラージ覚醒には、使命がある。今まで、単一の独立型大型拡張セットがデザインされたことはなく、またゼンディカーを塗り替える根本的な変化を見せつける必要がある。これはブライアン・ティンスマンと彼のチームを持ってしても難易度の高い話だが、エルドラージ覚醒のプレビューが始まったらそのすべてについてお話しよう。残念ながら、今日のコラムのテーマは「どう」ではなく「なぜ」なのだ。


 この話で、我々の考える方法論について、そして第3段落で何が起こるのかの予想を少しでも見て頂けたかと思う。それが実際に起こる前に、ワールドウェイクという第2段落が待ち受けている。そう、ワールドウェイクのプレビューは年末の休みが終わったらすぐにも始まるのだ。
 来週は、私が大好きなコラムの一つを作ったテーマについて初めて振り返ってみようと思う。
 その日まで、第1段落の銃のさび付くことがありませんように。

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